テラーノベル
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「まあ、コメント欄の皆様、お話しに夢中で『ログアウト』のことなど、すっかり頭から抜けておりましたわ!」
画面の端で『お嬢様、そろそろログアウトしないと夜になっちゃうよ!』『晩ご飯の時間じゃない?』『ログアウト方法覚えてる!?』と、親切なコメントが滝のように流れております。皆様、わたくしの生活リズムまでご心配くださるなんて、本当にお優しい指南役様方ですこと。
「ログアウト……? ああ、現実の世界にお戻りになる手順のことですな!」
それまでkagerou様と口喧嘩をされていたNatuki様が、ハッと胸を張って前に出られました。
「ご安心召されよkana様! このNatukiが、ログアウトの手順を完璧にお教えいたします! まずはメニュー画面を開き、左下の――」
「待てNatuki、お前が教えると説明が武士っぽすぎてややこしくなる。俺が教えるわ」
kagerou様がNatuki様を肘でぐいっと押しのけ、わたくしの目の前に優しく画面を提示してくださいました。
「kanaちゃん、画面のメニュー開いてな、一番下の赤いボタンを押すんや。『ログアウト』って書いてあるやろ? それを押せば一瞬でお屋敷(現実)に戻れるで」
「まあ、そんなに簡単なのですのね! kagerou様、Natuki様、ありがとうございます」
わたくしは教えられた通りにメニューを開き、赤いボタンを見つけました。
「ではコメント欄の皆様、本日はたくさんのお庭(ゲーム)の歩き方を教えてくださり、本当にありがとうございました。またお散歩にまいりますので、どうぞよろしくお願いいたしますね」
『お疲れ様でしたお嬢様!』
『マーブルちゃんもお疲れ様〜!』
『最高の癒やし配信だった』
『チャンネル登録した!! また絶対配信してね!!』
流れる温かいお言葉にほっこりしながら、抱っこしているマーブルちゃんの手を「バイバイ」と小さく振って見せます。
「さあマーブルちゃん、わたくしたちも一度お屋敷に戻りましょうね。……ポチッとな、ですわ」
**【System:ログアウト処理を実行中……】**
光の粒子がわたくしの視界を包み込み、街の賑やかな喧騒がすうっと遠のいていきます。
「kana様ぁぁぁ! 明日も同じ時間にお待ちしておりますぞーーーっ!!」というNatuki様の情熱的なお声と、「自分、明日も配信つけろよー!」というkagerou様の叫び声が最後に聞こえ、わたくしの視界は優しく静かな暗闇に包まれました。
ふっと目を開けると、そこはいつものわたくしの部屋、ふかふかのベッドの上でした。
頭からそっと銀の冠(VRヘッドセット)を外すと、部屋の窓からは美しい夕焼けの光が差し込んでおります。
「ふふ……『別荘体験キット』、とっても素敵な『娯楽』でしたわ……」
ベッドから起き上がり、両手を胸の前でギュッと組む。
ゲームの中の感触、緑の香り、そして何より、あのプルプルと可愛らしく震えていたマーブルちゃんの温もりが、今でも手に残っているような気がいたしました。
「明日のお散歩も、とっても楽しみですわね、マーブルちゃん」
東雲家の令嬢・奏の、初めてのゲーム体験。
それは、たくさんの愉快な仲間たちと親切なコメント欄の皆様に見守られた、最高の1日となったのでした。
コメント
1件
お嬢様、無事にログアウトできてよかったですね! コメント欄の皆さんの「晩ご飯の時間だよ」って心配がほっこりしました。kagerou様とNatuki様のログアウト説明の掛け合いも面白くて、特にNatuki様の「武士っぽすぎる説明」に笑っちゃいました。最後にマーブルちゃんの手を「バイバイ」って振るシーン、すごく可愛くて、お嬢様の優しさが伝わってきました。明日のお散歩も楽しみです!