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rara🎼
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その花が咲くのは、君の前だけ
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らん
こさめ
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その花が咲くのは、君の前だけ
喉の奥に、ざらつく違和感がひそんでいる。
息を吸うだけで、胸の奥がずきりと痛んだ。
けれど、それでも、らんは微かに笑ってしまう。
――隣に、こさめがいるから。
らん
らんは背を丸め、唇をそっと押さえながら、咳をこらえきれずに漏らした。
吐き出されたのは、白くて軽やかな小さな花びら。
カスミソウ。
花言葉は感謝。
清らかな心。
そして、切なる想い。
らん
声にならない呻きが、静かな部屋にじんわりと広がった。
喉がひりつき、声がかすれて、視界の端がぼんやりと揺れる。
布団の上に落ちた花びらは、ほんのり赤みを帯びているようにも見えた。
『このままだと、肺に影響が出るかもしれない』
『すぐに想いを伝えて、恋を成就させることが必要です』
診療所でそう言われた時、らんは笑って首を振った。
――告白なんて、できるわけがない。
こさめが困った顔をする姿を思い浮かべただけで、胸の奥がきゅうっと苦しくなる。
引かれたらどうしよう?拒絶されたら?
兄のように慕われている、それさえ壊してしまうのではないかと怖かった。
だから、耐えていた。
喉を焼くような痛み、声がかすれて消えるまで、必死に黙っていた。
けれど、それでも――
らん
咳は止まらない。
息が苦しくて、喉が焼けるように熱い。
意識が遠のき、頭がぼんやりと霞んでいく。
らん
そう呟いた瞬間、背中にそっと手が触れた。
こさめ
振り返ると、こさめが起きていた。
瞳が大きく見開かれていて、今にも涙があふれそうな顔をしている。
こさめ
らんはこさめの視線を避けて、肩で荒く息をしながら、かすかに笑った。
らん
らん
言葉にならなかった。
声が掠れて、喉が痛くて裂けそうだ。
それでも、言わなきゃ。
らん
喉から絞り出した言葉は、かすかな震えを帯びていた。
その瞬間、息が詰まって、また咳がこみ上げる。
らん
崩れ落ちそうな身体を、こさめが必死に抱きしめた。
こさめ
らん
こさめ
こさめ
らんの目の前で、こさめの瞳から涙がひとすじこぼれた。
こさめ
らん
こさめ
らん
こさめ
らん
らん
らん
続きを言うことは、許されなかった。
また、咳が込み上げてくる。
らん
こさめ
こさめ
こさめ
言葉よりも温度が、らんの胸の中にじんわりと沁みこんでいった。
ああ、届いたんだ。
それだけで、世界がやっと整った気がした。
こさめの手が、あたたかい。
――もう、大丈夫。
それが、らんの最後の想いだった。
次の日の朝、こさめは、らんの部屋にひとりでいた。
机の上には、昨日の夜にこぼれた白い花びらが、静かに散っていた。
彼のぬくもりは、もうどこにもなかった。
だけど、あの夜、手を握ってくれたその記憶だけは、胸に刻まれている。
カスミソウの花言葉を、こさめはずっと忘れない。
そして、最後に交わした言葉も。
こさめ
こさめ
rara🎼
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rara🎼
rara🎼
rara🎼
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