橙
桃〜!!
桃
...なんだよ
橙
何でそんなに冷たくするん!?
橙
もっと優しくしてくれてもいいやん!
幼なじみの橙に いつものごとく話しかけられる。
桃
はいはい...
橙
......
橙
桃ちゃん、なんかあったん?
桃
なんもねえよ...
橙
...今日の桃ちゃん、ほんまにおかしいで?
桃
...なにがだよ
橙
なんか、何やってても上の空って感じで
桃
......
勘のいいやつめ。
一日中赤先輩のことが頭から離れず、 ぼーっとしてることに気づいてやがる
桃
なんでもねえって...
橙
いいや!なんかある!絶対!
桃
はあ......
桃
...先輩のこと、好きになった
橙
...は?
橙
それ、ガチ...?
桃
俺が嘘つくかよ...
橙
確かに...
橙
ちなみにどんな人なん?
ワクワクした様子で聞いてくる橙。
俺は仕方なく赤先輩のことを話した。
綺麗な赤髪をしていること。
目はオッドアイですごく綺麗なこと。
いつも夕日を眺めていること。
その後ろ姿に一目惚れしたこと。
そんな話を、一通りした。
橙
それで告白したいと...
桃
まだそこまでは言ってないだろ
橙
...でも
橙
もし、本気で好きなら早めに伝えるべきやと思う
橙
いついなくなるかなんて...わからないんやから
桃
......
橙がここまで言う理由。
昔、橙には好きな人がいた。
紫ーくんっていうすごく優しくて、 包み込むような温かさを持つ男の子。
彼のことが好きだとわかっていた。
だけど、ずっと気持ちを 伝えることができていなかった。
気持ちに気づいてから一年経って、 橙はようやく気持ちを固めた。
「明日絶対に告白する」と。
でも、その明日は来なかった。
紫ーくんは事故に遭って亡くなった。
橙が気持ちを伝える前に、 紫ーくんはいなくなってしまった。
橙は後悔した。
あの時伝えておけば。
昨日のうちに伝えておけば。
伝えるチャンスなんて いくらでもあったのに、その時 伝えなかった自分を悔やんだ。
きっと俺に同じ後悔をさせたくないと 思っているからこそ、 「早めに伝えた方がいいと思う」と 言ってくれているのだろう。
桃
...考えておく
橙
うん...
橙
応援しとるで
桃
屋上...行ってくる
俺は立ち上がり、屋上に向かった。