テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
リリア💙🤍
94
食パン
48
8
#復讐
すっこ
2,432
コメント
2件
もう、めっちゃ切なかった……。 もかの「家族だから恋愛対象にはなれない」ってわかってるのに、心臓が痛いほど春のこと好きで、でもそれを押し♡♡♡てる感じがリアルで刺さったわ。 「好きだよ」って言い合ってても、もかの胸の中では全然違う意味で響いてるのが伝わってきて、読んでて苦しくなった。来年の桜までに決別する覚悟してるっていうラストも、もう泣ける。 優しくて温かいのに、胸がギューってなる第3話だった。
――――その日の夜。
お風呂上がりの髪を乾かしながら、壁に掛かった時計を見上げる。
もか
郁兄はまだ帰ってきていない。
今日は帰りが深夜か朝方になると聞いている。
もか
頃合いを見計らってベッドから下り、部屋を静かに抜け出した。
足音を立てないように廊下を進み、目的地である春の部屋へ向かう。
念の為に郁兄の部屋も覗いてみて、ちゃんと不在なのも確認した。
春が待つ部屋の前で深呼吸を繰り返し、髪をてぐしで整える。
もか
もか
ピンクのストライプ柄のキャミソールに、ショートパンツのルームウェア。
ちょっと露出しすぎたかな、とパンツの裾を軽く引っ張る。
気恥ずかしさを感じながら、控えめに二回ノックする。
部屋の奥から微かに物音が聞こえた。
もか
もか
呼びかけると、少し間を置いてドアが開いた。
私服に着替えた春が顔を覗かせる。
目が合って、ふわっと微笑んでくれた。
春樹
春の柔らかな笑顔は、いつも優しい。
けれど纏う空気は、昼間の彼からは感じられなかった色香を匂わせていた。
優しい手に引き寄せられて、室内へと誘われる。
後ろ背にパタン、とドアが閉められた。
春の腕が私の腰を引き寄せて、ぎゅっと抱き締めてくる。
その背中に、そっと両腕を回した。
もか
春の体温に包まれて安心感に満たされる。
同時に、くすぐったい気持ちにも駆られた。
しばらく抱きあっていると、不意に春の吐息が耳に触れる。
もか
思わず小さく息を洩らした。
春樹
春はゆっくりと身体を離した。
私を見つめる瞳が優しく細まっていてドキドキする。
春樹
もか
もか
お礼を言えば、またすぐに抱き締めてくる。
他愛ない触れ合いが嬉しくて、張り詰めていた緊張も解けていく。
少しだけ早く波打っている春の心音に、緊張していたのは自分だけじゃなかったんだと知って、小さな笑みが漏れた。
もか
春樹
春樹
もか
春樹
春樹
春樹
もか
もか
もか
春樹
春樹
春樹
もか
去年の夏、所属していた女子バスケ部の新キャプテンに任命されてから、今日までずっと、一心不乱に駆け抜けてきたような気がする。
私の高校3年間は、バスケに青春を費やしたようなもの。
部活動まっしぐらな日常から解き放たれてしまうと、やっぱり、少し寂しい気持ちはあった。
勉強、部活、学生生活。
これからは、色々なものが終わっていく。
高校卒業まで、残り半年と迫っていた。
春樹
もか
春樹
熱っぽい囁きと共に、春の手が私の髪に触れた。
まるで壊れ物を扱う時のような、繊細な手つき。
春の両腕が少しだけ緩んだお陰で、私はやっと、彼の顔を見上げることが出来た。
色素の薄い茶の瞳は、どこか儚げな雰囲気で。
引き寄せられるように、私は彼の薄い唇に、自らの唇を重ねた。
春樹
それは一瞬の出来事。
悪戯っぽく笑いかければ、頬をほんのりと染めた春に引き寄せられる。
春樹
春樹
嬉しそうに笑いながら囁く。
余裕なくなる、なんて言いながら、全然余裕そうに見える。
少しだけ楽しそうな春の雰囲気に、私は内心ほっと胸を撫でおろした。
・ ・ ・
――――春と一緒にいる時間が好きだった。
眠りに落ちる前の、心地のいいまどろみが私を包み込んで、安心感を覚える。
私の心をゆっくりと解きほぐして、優しい感情で満たしてくれる。
私にとって春樹という人は、そんな不思議な魅力を持つ男の子だった。
……この温かさが好き。
春に触れてもらえることが一番嬉しい。
この先、どれだけ離れ離れになったとしても、春と過ごしたこの時間だけは、絶対に忘れない。
それくらい、私にとってはかけがえのない、大切なひと時だ。
もか
もか
そっと身体を離した春は、指先で私の首筋に触れた。
肌の上をなぞる人差し指が、ある部分で止まる。
春樹
もか
何が、と言おうとした時―――― 春が身を屈めて、私の首筋に顔を埋めてきた。
鎖骨あたりに、ちくっとした微かな痛みが走る。
もか
驚いて、反射的に身を竦ませた。
もか
もか
春樹
春樹
そう微笑んでくれるけど、不思議だった。
春は私の身体に、自ら所有の印は絶対につけないのに。
理由はわかってる。
バレたら駄目だから。
私達の関係は、私達以外の誰も知らない。
人の目につくような跡を、身体に残しておくわけにはいかないから。
なのに、今日初めて、跡をつけられた。
もか
もか
……本当はもっと、春に触れたい。
もっと強く求めたい。
触れ合う度に抱く欲求を、私はいつも心の奥底に隠してる。
だって、春も同じように考えているとは思えないから。
私達は、恋愛感情で繋がってるわけじゃないから。
――――春の望むことは何でもしてあげたいと、いつも思ってる。
両親が亡くなった日。
初めて失恋した日。
私が寂しさで押し潰されそうだった時、春はいつも傍にいてくれた。隣にいてくれた。
だから私も、春が寂しいと感じていたら隣で寄り添ってあげたい。
肌恋しいなら、私が満たしてあげたい。
望んでくれるなら、いつも一緒にいてあげたい。
私の中の春の存在は、それくらい大きいのに。
そこまで思えるほどに、大切な人なのに。
どうしたって私は、春にとって恋愛対象にはならない。
私と春はイトコ同士で。 家族で。
それ以上でもそれ以下でもない。
春との間に恋愛感情は存在しない。 しちゃいけない。
私は春の家族以上の存在には、絶対になれない。
その事に、ある日突然気づいてしまった。
……悲しかった。
胸が締め付けられそうなくらいに痛くて、その痛みは、初恋が実らなかった時に味わった痛みとよく似ていた。
もか
もか
もか
春のことが、男の子として好きになっていた。
春樹
春樹
春樹
もか
春樹
もか
私が受け入れてくれるまで、ちゃんと待ってくれる春はどこまでも優しい。
春の彼女になれる女の子は、きっと幸せになれるだろうなあ。
そんな事をふと考えて、そんな日が来ればいいと望む自分がいる。
春には幸せになってほしい。 私じゃなくていいから、他の誰かと。ずっと。
……でも、今は。
そんな日が来るまで、もう少しだけ、ここに留まっていたい。甘えていたい。
来年の、桜の舞う頃。 このぬるま湯みたいな関係を、私は断ち切らなければならないから。
もか
春樹
春樹
もか
もか
触れ合いながら交わされる告白は、まるで恋人同士のようで。
でも私達の『好き』に、特別な意味なんてない。
その場を盛り上がらせる為だけに、口から零れ落ちる言葉。雰囲気作り。 でも、それでも良かった。
恋愛とは違うけれど、もっと別の、深いところで私達は繋がっている。
……そう思うから。