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1 - good luck

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2018年10月08日

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つかさ

あれ?ここはどこだ?

ゆい

あの…貴方も迷ってるのですか?

つかさ

貴方もって…じゃあ君も?

ゆい

はい。気づいたらここにいて……

みさき

私も。川で溺れちゃって苦しくて……気づいたらここにいた。

かいと

川で溺れた?ははっ…だっさw

みさき

なっ…ダサいって何よ!

つかさ

まぁまぁ。とにかく俺らは気づいたらここにいた

ゆい

そうですね…

つかさ

不思議だなぁ…

かいと

不思議?お前バカか?さっきこいつが言っただろ?溺れて気づいたらここにいたって

みさき

だからなによ!

かいと

怒るなよ…

つかさ

なぁ…えっと…

かいと

かいとだよ

つかさ

あー、俺はつかさ。よろしく。…それでかいと。この人が川で溺れたことと俺らがここにいること。どんな関係があるんだ?

みさき

この人…じゃなくてみさき。さ、名乗ってないのは貴方だけよ

ゆい

あ…えっと…私はゆいです。よろしくお願いします…

みさき

よろしく。……で、かいと?ここはどこだって言いたいの?

かいと

俺が思うに…

つかさ

思うに?

かいと

ここは死後の世界だ

みさき

ちょっと待ってよ!死後の世界って私達はもう死んでるってこと!?

かいと

多分…

みさき

そんな…そんなはずは…

かいと

じゃあお前は今どこにいるってんだよ!川で溺れたなら次に目を覚ますのはその川の近くか病院のはずだろ?こんな駅のホームに転がされてたなんておかしい

みさき

それは…

つかさ

でも、なんで死後の世界なんて…

かいと

お前、目が覚める前のこと思い出してみろよ

つかさ

あ……俺、車に轢かれそうになったんだ…

かいと

おい、お前!

ゆい

えっ、私?

かいと

お前さっきからずっと黙ってるけどお前はどうなんだよ!

ゆい

私は…ずっと病気で入院してて、長くはないって言われてきたから…

かいと

死んだって言われても納得なわけか

みさき

ちょっとかいと!そんな言い方ないでしょ!?

かいと

とにかくここは死後の世界なんだよ!

案内人

おやおや。今日の方々は随分と勘が鋭いですね!

つかさ

誰だ!!!!!!

案内人

あっていきなり『誰だ!!!!!!』とは、失礼ですね…

ゆい

貴方も死んじゃった人なんですか?

案内人

貴方も…ときましたか…普通はもっと動揺するものなんですがね…まぁいいでしょう

案内人

私はこの世界の案内人。そしてここは死後の世界です!

つかさ

は?

案内人

残念ですが貴方達はもう死んでいます!

みさき

そんな……タチの悪い冗談やめてよ!

案内人

いいえ。これは決して冗談などではないのです!

みさき

そんな…

案内人

残念ながら悲しみに暮れている時間もございません

ゆい

え?

案内人

先程ここは死後の世界だと申しましたが、それは半分正しく、半分は間違いです

つかさ

間違いって?

案内人

死後の世界など、存在しないということです。

かいと

存在しない?

案内人

はい。ここはあくまでも中継地点。貴方達のような人達が次の選択を決めるまでの待合室ようなものです

ゆい

次の選択?

案内人

『消滅』と『転生』です

つかさ

消滅と、転生……

案内人

はい。あちら側へ向かう汽車に乗れば消滅。貴方達の魂はキレイさっぱり消えることとなり…

案内人

あちら側へ向かう汽車は転生です。転生を選べば他の誰かとしてまた、ゼロから人生を始めることになります。

かいと

どっちにしろ俺らの存在はもう終わりってわけか…

案内人

まぁ。そうですね

かいと

じゃあ俺は消滅を選ぶ

つかさ

え?どうして!?

かいと

だって生きるのめんどくせぇじゃん。消えちまった方が楽だろ?

ゆい

そんな……

みさき

もっと考えてよ!生きるのが面倒だなんて…そんな…

かいと

じゃあお前らはどうするんだよ!消滅が悪いことならお前らはどうするんだよ!

みさき

私は……

ゆい

……私は転生を選ぶ

つかさ、みさき、かいとがゆいを見る

ゆい

私、ずっと病気でやりたいことやれなかった。だから次の人生では元気に生まれて好きなことやりたい!

かいと

ふーん…で?お前らは?

つかさとみさきを見る

みさき

そんなすぐには決められないよ……

案内人

まぁ消滅行きの汽車が来るまであと、1時間。転生行きはその五分後です。それまでに決めてください

案内人

それから両方の汽車を逃すとその人の魂は永遠に真っ暗な世界を漂うこととなります。ですから是非消滅と転生どちらかをお選びいただくようお願いします…では

案内人が立ち去る

みさき

死んじゃったなんて…そんな

つかさ

1時間か……

かいと

まぁさっさと決めろよ〜俺は向こうで休んでくるから

ゆい

あっ!ちょっと!

残された二人、近くに置いてあるベンチに座る

みさき

私達、死んじゃったんだね…

つかさ

らしいな

しばらくの沈黙

みさき

つかさ?はさ、どんな人だったの?

つかさ

うーん…毎日サッカーして、学校も楽しかった。きっと幸せ…幸せだったんだろうな…みさきは?

みさき

私も。思ったら口にしちゃうから家族や、友達としょっちゅう喧嘩してたけど、楽しかったよ。

つかさ

そうだよな、楽しかったよな。……でも、もう戻れないんだよな…

みさき

そうだね……

つかさ

それって悲しいよな…

みさき

うん……

右側から早歩きで、かいとがその後ろをゆいが追う

かいと

ついてくんなよ!

ゆい

だって……

かいと

だってなんだよ

ゆい

だって、かいと君あんなあっさり消滅って決めちゃうから…

かいと

悪いかよ

ゆい

悪いってわけじゃないけど…でも、生きるのが面倒くさいっていうのが気になって…

かいと

あぁ?だって面倒くさいだろ?

ゆい

どうして?

かいと

お前はそうは思わなかったのかよ毎日病院のベットで同じ景色を見てるだけ…退屈だろ?

ゆい

それはそうだけど…

かいと

そのうち死ぬって分かってるのにその時が来るまで同じ毎日なんてつまんねえ

ゆい

でも……

かいと

でもなんだよ

ゆい

……でも、だから転生して思いっきり遊んでみたい

かいと

元気な奴に生まれ変わるとは限んねぇだろ!?

ゆい

それは…

かいと

だから俺は転生しない。生きるのなんてもうごめんだね

かいと、面倒くさそうに近くのベンチに座る

ゆい

ねぇ

かいと

なんだよ

ゆい

かいと君は、どんな人生を送ってきたの?

かいと、動きを止める

ゆい

何か嫌なことがあったの?嫌な人生だったから、もう生きるのが嫌だって思うの?ねぇ、

勢いよく立ち上がりながら

かいと

うるさい!!!!!!

かいと

お前には関係ないだろ!?

ゆい

関係あるよ

かいと

ねぇよ!

ゆい

あるよ!!!!!!

ゆい

あるよ。だって、同じ日にこうしてここで出会ったんだもん。関係あるよ

かいと

そんなの……

ゆい

関係あるよ。私はかいと君のことが知りたい

かいと

……うるせぇよ

ゆい

ねぇ、聞かせて?

かいと

………………

ゆい

かいと君

かいと

……お前が転生したくないって思っても、俺は責任取らねぇからな

ゆい

大丈夫だよ

かいと

……わかった

かいと

俺の父親は酷い人だった

かいと父

おい…酒…酒!!!!!!

かいと母

すいません、もう無いんです

かいと父

あぁ?無いだと?なら買ってこいよ!今すぐに!

かいと母

でも、貴方、今日それで何本目ですか!?飲みすぎですよ…

かいと父

お前、俺に口答えするってのか!

かいと母

いえ…そんな

かいと父

いいから行ってこいよ!

かいと父、かいと母を蹴り飛ばす

かいと母

きゃ!!!!!!

かいと

父さんは朝から晩までずっと家で酒を飲んでいた。母さんは父さんに逆らえなかった。家の家計を支える為に母さんは毎日仕事に明け暮れた。でも、そうやって母さんが働いて貯めた金はすぐに父さんの酒に変わっていった。……俺はそれが許せなかったんだ。だから…

かいと

父さん…

かいと父

あぁ?なんだ?

かいと

もうやめろよ

かいと父

あ?

かいと

もううんざりなんだよ!昼間から酒ばかり。家の為には何もしない

かいと父

だからなんだ

かいと

……出てけよ

かいと父

は?

かいと

出て行け!この家から出て行けよ!お前なんか父親でもなんでもねぇんだよ!

かいと父

お前…父親に向かって…なんて口利きやがる……!!!!!!

かいとを突き飛ばすかいと父。そこにかいと母が入ってきて、様子に気づきかいとに駆け寄る

かいと母

かいと!!!!!!

かいと父

どけよっ!!!!!!

かいと父、かいと母を突き飛ばす

かいと母

いやぁ!!!!!!

かいと

母さん!!!!!!

かいと、母親の前に出る。 ビール瓶片手に振りかぶる父。

かいと

!!!!!!!!!!!!

かいと母

なっ……!!!!!!

💥💥💥 パリーン!

かいと

……俺は父親に殺されたんだ

ゆい

…………

かいと

な?嫌な話だったろ?

ゆい

それは…私が聞いたんだし…ごめん

かいと

謝るなよ…

ゆい

だって、思い出したくないことだったでしょ?

かいと

話さなくたって覚えてるよ。今ここにいる限り忘れられるわけがない

ゆい

そう…だね

かいと

これでお前も転生なんてしたくなくなっただろ?

ゆい

ううん

ゆい

私の考えは変わらない

かいと

お前なぁ!転生したってまた病気になるかもしれない。俺みたいな家に生まれるかも…そうは思わないのかよ!

ゆい

思うよ。でも、怖くない

かいと

え?

ゆい

全然怖くないよ。そんな人生送ることよりこのまま消えちゃう方がずっと怖い

かいと

どうして…

ゆい

だって全部無くなってちゃうんだよ?

かいと

生まれ変わったって今の俺らの記憶は消えるんだぜ!?一緒だろ?

ゆい

それはそうだけど…なんていうかなぁ…このまま消えちゃうのと、違う人になって違う景色を見るのって全然違うと思うんだ

かいと

………………

ゆい

それに、前の人生よりきっと楽しいと思うの

かいと

楽しい?

ゆい

うん。私ずっと病院のベットの上で、学校行けなかったし、友達もいなかった…不幸ではなかったけど退屈だったの。だからきっと次の人生では今の私の人生より楽しいだろうって思うんだ!

かいと

…………

ゆい

だから、ね?かいと君。一緒に行こう?

かいと

……ちょっと考えとく

かいと、立ち上がり左側に歩く

ベンチに座るみさきと、立ってボールを蹴る仕草をするつかさ

みさき

サッカー、やってたの?

つかさ

うん?

みさき

さっきからボールが恋しそうだから

つかさ

ああ、そうだよ。サッカー部だった

みさき

上手かった?

つかさ

さぁ?

少しの間

つかさ

俺……事故にあったんだ

みさき

え?

つかさ

死ぬ時

みさき

あぁ…………

つかさ

サッカー部の皆と歩いてる時に事故に遭った。……そう言えば、皆は大丈夫かなぁ?ここにはいないみたいだけど…

みさき

次の人生でもサッカーしたい?

つかさ

え?あぁ、まぁ、生まれ変わるなら、きっとサッカーしてるんだろうな

みさき

まだ迷ってる?

つかさ

まぁ…みさきは?

みさき

私も

案内人

まだ迷っておられるようですね

つかさ

え?あぁ、案内人…さん

みさき

即決なんて出来なくて……

案内人

……サービスですよ

みさき

え?

案内人

特別に、あちらの世界をお見せしましょう!!!!!!

つかさ

あちらの世界って?

案内人

まぁまぁ、見ていってください!

つかさの友人が立っていた

つかさ

!!!!!!!!!!!!

友人

つかさ…どうしてつかさが

友人

つかさ……良い奴だったのに……

友人

つかさがいないなんて……

友人

…………つかさ幸せにやってるかな?大丈夫だよね…

友人

つかさ!幸せになれよ!

つかさ

……

案内人

どうです?貴方の友人は幸せを願っていますよ

つかさ

うん。俺、決めたよ。俺は転生行きに乗る

案内人

それは良かったです

案内人

さて、次は貴方の番です

みさき

え?

案内人

貴方は女の子を助けて川で溺れてしまったんですね

みさき

……うん

案内人

自分は助けられて、助けてくれた人が死んでしまう…それがどんなに辛いことか分かりますか?

みさき

……うん

案内人

貴方が亡くなって悲しい思いをしている人は沢山います

みさき

え……?

案内人

では、見てみましょうか

そこにはみさきが助けたあいながいた

あいな

私のせいで……私のせいでお姉さんは…

あいな

私のせいでお姉さんは死んじゃった……!!!!!!

あいな

私があんな所で遊んでたから……

あいな

お姉さんは死んじゃった……じゃあ私も!!!!!!

みさき

あの子…あいなって名前だったんだ…

案内人

恨んでいますか?

みさき

え?

案内人

あの子のことを

みさき

…………。ううん、恨んでなんてないよ

案内人

そうですか……なら声をかけてあげてください

みさき

え?

案内人

あの子は悩んでいます。きっとあの子は一生悩み続けるでしょう。それは人がどんなに慰めたって変わらない。でも、せめて声をかけてあげるくらいはできるでしょう?

みさき

でも、私の声は向こうに聞こえないんでしょ?

微笑んで

案内人

どこにいたって、届かない声なんて無いんですよ

みさき

……………………

みさき

あいなちゃーーん!!!!!!私はここにいるよ!!!!!!だから、あいなちゃんは…あいなちゃんは、生きて!!!!!!

あいな

お姉さん……?

あいな

どこから聞こえたんだろう…気のせいかな?

あいな

お姉さんが生きてって言ってたから私……私頑張って生きるよ!!!!!!お姉さんの分も!!!!!!

みさき

届いた……

案内人

だから言ったでしょう?届かない声なんて無いって

みさき

うん!

少しの沈黙

みさき

ねぇ、私も転生行きに乗る!あいなちゃんに『生きて』って言ったのに自分は消えるなんて出来ないからね!

案内人

そうですか…それは良かったです

辺りを見回して

案内人

さて、これで全員決まった……

案内人

……わけではないようですね

かいと

あ?

案内人

決まりましたか?自分がどうするか

かいと

俺は……

案内人

……貴方だって誰からも思われていないわけではないのですよ…

かいと

はぁ?

案内人

貴方にもお見せしましょう!!!!!!

そこにかいと母がいた

かいと母

かいと……

かいと

母さん!!!!!!

かいと母

かいと…ごめんなさい。ごめんなさい!

静かに声をかけるのは…

ゆい母

あの……

ゆい母

失礼かもしれませんが…どうされたんですか?

かいと母

……息子を死なせてしまったんです

ゆい母

死なせてしまった?

かいと母

息子は、私を庇って……

ゆい母

……そうですか

ゆい母、かいと母の隣に座る

ゆい母

私も、今日娘を亡くしました

かいと母

え?

ゆい母

ずっと入院してたんです。小学生の頃から、ろくに学校にも行かせてやれなくて…

かいと母

そう…ですか…お名前は?

ゆい母

ゆいです。人と強い絆が生まれますようにって。息子さんは?

かいと母

かいとです。あの子が生まれた日はそれはもう清々しい快晴で……だから明るい名前にしようと思ったんです。明るい未来が待ってますようにって……それなのに……

ゆい母

そんなに落ち込まないでください……

ゆい母

私だって悲しいです。悲しいし、悔しい。でも、きっとあの子には明るくて楽しい次の人生が待ってるって思うんです。

かいと母

次の人生……

ゆい母

だから祈るんです

ゆい母

どうか次の人生では元気で幸せな毎日を送ってくれますようにって

かいと母

幸せな…毎日、私も祈ります

かいと母

どうか次の人生では幸せになってくれますように……かいと

かいと

母さん……

ゆい

私、病気でも、幸せだったのに…幸せだったのに祈られちゃった

かいと

うん。俺も幸せになってくれって。祈られたっていうより頼まれたって感じだな

ゆい

かいと君

かいと

うん?

ゆい

行こう?一緒に

つかさ

行こう

みさき

行こうよ

かいと

……転生、か

ゆい

かいと君

かいと

おう。行こう!4人で!

案内人

全員、決まりましたね!

案内人

あれは消滅行きの汽車です。見送っていいんですね?

かいと

はい。

案内人

では、消滅行き、発車します!

汽車が走る

みさき

じゃあ

つかさ

行こうか。4人で

かいと

おう

案内人

お気を付けて

ゆい

ありがとう!案内人さん

案内人

いえいえ、私は何も

つかさ

じゃあもう行くよ!

案内人

はい。

ゆい

さようなら!

案内人が見送り…

案内人

さようなら。グットラック

❦ℯꫛᎴ❧

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