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泥の中から泡の様に浮き上がる、そんな感覚。

こんな目覚め方は久し振りだ。

気持ちの悪い、複雑な気持ち。

中原 中也

___っ!!

中也が辺りを見回す。 紛れも無い保健室のベッド、其れも中也のお気に入りの窓側だ。

先刻迄の事も、夢、なのだろうか。

否、夢であって欲しかった。

太宰 治

…お早う

中原 中也

…っ俺、は…っ!

太宰 治

太宰 治

やってないだろう?

太宰 治

君は、刺してない、よね

途切れ途切れに、確認を取る太宰。

中原 中也

っ、当たり前だ…

中也が硬く拳を握り締める。

中原 中也

違うんだ…信じて、くれ…

瞳孔を開き、背を震わせて云う中也。

太宰は腕を組み、背凭れに身体を預けている。

中原 中也

太宰…っ!

太宰 治

太宰 治

信じるよ

太宰 治

信じる

中原 中也

中也が息を呑む。

力が抜けた様に、握って居た手を開いた。

中原 中也

…彼奴、は

太宰 治

さっさと手当てして、追い出した

太宰 治

傷は案外浅かったし

太宰 治

今度面談は入ったけどね

中原 中也

…面談

太宰と希望者、二人きりで話すのだ。亜矢はきっと同じ事を云うのだろう。

口元に人差し指を充てる太宰。

太宰 治

…来た

きっちり三度、ノックの音。

国木田 独歩

…入るぞ

中原 中也

…国木田、講師…

太宰 治

国木田君、彼…

国木田 独歩

…太宰、悪いが少しだけ席を外してくれ

太宰が中也を見る。 中也は腹を決め、頷いた。 太宰が唇を噛む。

太宰 治

分かった、十分後に戻る

国木田 独歩

中原、済まんな…倒れた直後に

中原 中也

…疑ってますか

答えにはならない応え。

中也の瞳に国木田が映る。

国木田 独歩

…正直に云うとな

国木田 独歩

先生方の判断は未だついて居ない

国木田 独歩

間中の事も、中原の事も、皆分かり切って居ないんだ

中原 中也

心当たりが多過ぎる。

授業に出て居ない事。 ずっと保健室に居る事。 きちんと面識のある先生なんて、数人しか居ない。

恐らく、一番中也の事を分かって居る太宰が必死に彼を庇ったのだろう。 だから教師達は判断が難しい。

国木田 独歩

黙って居る国木田の気持ちは中也にも痛い程分かった。

亜矢が自作自演したのでは、と思いつつも中也の事を信じ切れない。

中原 中也

…っ、違う…

何が違うのか。否…多過ぎるのだ。何もかもが違う。

答えとして、相応しくない。

国木田が中也を見る。

国木田 独歩

…済まん

何に対しての謝罪なのか。これもまた、何もかもに対して居るのだろう。

国木田 独歩

…俺は戻る、如何せ未だ其処に居るんだろう、太宰

太宰 治

…バレた

国木田 独歩

…生徒を蔑ろにしろとは決して云わん、だが…過保護になり過ぎるのは良くない

出て行く際、太宰に云った国木田。太宰が目線を落とした。

太宰 治

…分かってる

再び太宰と中也の二人が部屋に残る。

中原 中也

…太宰、その…

太宰 治

…起きて仕舞った事は変えられない

太宰 治

少しきつい事を云うから…落ち着いて聞いてくれ給え

太宰 治

此れから恐らく、君に対する級の人達…酷ければ先生方も、態度が変わるだろう

太宰 治

でも、私は君の味方

太宰 治

其れだけは覚えておいて

中原 中也

太宰が自分を安心させようとして居るのはわかる。 でも、中也の頭を埋め尽くすのは三文字だけ。

〝なんで〟

何故、自分が?

中原 中也

なんで!

中原 中也

如何して俺なんだよ!

太宰 治

中也、君は

中原 中也

俺が悪いのか?

中原 中也

俺が、何をしたんだ?

太宰 治

君は悪くない

太宰 治

だから一旦落ち着くんだ

中原 中也

気休めなんて要らないんだよ…っ!

熱い息を吐き出す中也。 ぐっと瞳を揺らし、俯いた。

中原 中也

…御免、なさ…

太宰 治

…良いんだ

太宰 治

困った事が有ったら、云って

中原 中也

っ…

何処かの教室からの笑い声が、妙に大きく聞こえた。

中学生殺し屋は養護教諭に恋をした。  太中※学スト改変

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コメント

10

ユーザー

初コメ失礼します!もう本当に好きです✨あフォロー失礼します

ユーザー

不穏ダァァァァでも好きィィィ 読者さん全員で亜美を処そう

ユーザー

二人の間の壁なんて!日本からブラジルまでの分厚い壁だろうと、無かったことになるほど消しとばしてやるぜ!!!今回も最高でした!ありがとうございます!!!

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