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鳥籠の中、彼女の日々〜職員ジョージアのL社での日常〜　※キャラ崩壊等注意

第24話 - 《真っ直ぐ立てる意志》

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2025年07月13日

#LobotomyCorporation

#1.5次創作

H-CHOCO

ティム

クソ…審判鳥に抑圧作業？ふざけてるとしか思えない…。

息も絶え絶えのような様子で、彼は愚痴のように呟いた。

カリシン

…やはり、おかしいですよね。

虚ろな目をした女性が、唐突に彼に語りかける。

ティムは彼女を鬱陶しそうに見上げた。

ティム

なんだ、あんた…。

カリシン

私はカリシン、今日から教育部門に配属された事務員です。

カリシン

昨日、こっそり見ていたんですけど…マルクト様の様子、いつもよりも酷かったもので。

ティム

「いつもより」？まあ、僕も同意はするけど…大丈夫なのか？

そんなことを言って、彼女が処分されないか。

彼はそれを心配しているようだ。

カリシン

ええ、大丈夫です。どうせあの様子じゃ、私達役に立たない事務員なんて普通に処分されそうなものですし。

ティム

どうしてそんな…。

カリシン

運良く生き残ったものの、やはりマルクト様は私のことを気に入らないようですし。

ティム

まあ…そうだな。あの人はそういう人だけど…。

ティムはアンブルを浴びて再生していく身体を見つめて、何を言えばいいか分からないように黙る。

カリシン

……今日は、なんだか、いつもと全然様子が違うじゃないですか。

ティム

まあ、確かに…審判鳥に抑圧作業だなんて命令、おかしいとは思ったが。

カリシン

マルクト様は指揮を担当していましたよね。指揮系統に…

そのとき、アラートが鳴り響いた。

いつもとあまり変わらない様子だった。

ティム

…ちょっと！あんた、うしろ…

カリシン

え？

その瞬間、鋭い腕に…彼女は突き刺された。

カリシン

ぐ…っ

ティム

…！今、今助けるから。

ティム

クソ…ほかの職員はどこだ？全然メインルームに戻ってこない……。

カリシン

いいえ…いいん、です。

カリシン

私は…あなたに、あえ…て

彼女はそのまま息絶えた。

ティム

（事務員の死は何度も見てきたが……。）

ティム

（やはり、慣れないな。）

彼は憂鬱をぶつけるように、試練に攻撃をぶつけた。

そして、試練終了のアラートが鳴り響く。

ティム

指揮系統、か。

ティム

……駄目だ。あの頃を思い出す。

ティム

…ハナさん。

ハナ

もういい。

ハナ

もう、いいんだ。

ティム

気持ちは……わかりますけど。

ハナ

私は大切な部下すら守れなくて。

ハナ

親も……見殺しにしたようなものだ。

ハナ

きっと、高望みした罰だろうな？

諦めを含んだ表情。

彼女が限界に近いことは、自明であった。

ティム

なんで、なんでですか……。

ティム

こんなんじゃ、生きていけませんよ。

ティム

それとも、猫探しして掃除屋に怯える生活でもおくる気なんですか！

尊敬する上司への心配からか、自身の生活に対する不安からだろうか。

ティムは対照的に、強い感情を押し出す。

『貴女を見限ってはいない』と伝えるように、縋るように。

ティム

どうか……どうか、僕に、仕事をくださいよ。

ティム

ギラはひとりでも生きていけるだろうけど……、

ティム

僕は、僕は、どうしたらいいんですか……！

この都市で生きることは難しいことだ。

実力がなければ、1人で生きることすら許されないから。

ティム

ねえ、教えてくださいよ……。

ティム

どうして、何も指示してくれないんですか？

ハナ

……ごめん。

ハナ

でも、ジュリもアリスも離れて……私達だけじゃ、どうせ何もできないよ。

ティム

どうして信じてくれないんですか……。

ティム

なんで、ジョンを……マリンを失って、ハナさんまでそんな……。

彼等の間には、ひどく悲痛な雰囲気が漂っていた。

きっともう、どんな夢も叶わないと言うように。

ハナは、黙って、視線をそらした。

ティム

結局、行くあてもなく、ここに来てしまった。

ティム

（ハナさん……あの後は、いつもと変わらないように振る舞っていたけど。）

ティム

（でも、絶対に前には戻らなかったんだ。）

ティム

ここに来てなかったら……僕も、あっけなく殺られたんだろうな。

ティム

おえっ……

一度思い出したものは、無慈悲にも思い出したくないことまで引き連れて、何度もフラッシュバックする。

親友の死に様、強い意志を宿していた恩師の瞳、別れを告げる仲間。

ティム

はあ……うぅ……どうして、どうして……！！！

呼吸がままならない。

そうだ、強引に引っ張ってくれる彼女の姿が好きだったのだと気づいて……

ティム

（本当は、本当は）

ティム

（少しでも強引でいてくれたのが嬉しかった。）

ティム

（ハナさんだけじゃない、他の先輩とか、同期とか……マルクト様だって、そうだった。）

ティム

（自分ひとりで生きていくのが、辛かったんだ……。）

白昼試練のアラートが鳴る。

ティム

でも……このままじゃ、きっと、こんな自分から逃れられないから。

ティム

立ち向かって……いくしかないんだ。

同時に、鎮圧命令が出た。

場所は中央本部……から、『それ』はどんどん移動し。

準備する間に、情報部門へと移っていった。

ティム

クソ……早く行かないと。

ティム

はあっ……はあっ……

先程のフラッシュバックで呼吸困難に陥り、嗚咽を漏らしながらも、なんとか白昼試練に辿り着く。

息も絶え絶えで、それでも試練に立ち向かうことにした。

その先には……。

ティム

（手にしていた武器を振るう）

ティム

あれ……もう倒れ……？

アシュリー

ようティム！お疲れ様。

ハナ

お前……何でそんなに呼吸が荒いんだ？

ティム

あぁ……走ってきた、ので……。

ハナ

嘘だ……お前、泣いてたのか？

ティム

隠せないですか。

ティム

流石……僕の尊敬するハナさんだ。

アシュリー

やっぱり、思い出すよな。

ティム

……はい。

ティム

だって……僕！どうすればいいのか……わからなかった。

ティム

今みたいに、何を信じればいいのかわかんなくて……。

ティム

思い出したんです。こんな惨めで、寂しくて、怖くて……。

ハナ

だって……私は、守れなかっただろ。

ハナ

こんな私が指揮官なんか、向いてなかったんだ。

アシュリー

ちっ……

ティム

そんなこと、ないです！

ティム

僕は、僕には才能がなかったから、導いてほしかったんです。

ティム

でも、でも、戻ってこなさそうだったから。

ハナ

本当に、私でいいのか……？

ティム

はい……。

ティム

僕は……昔のハナさんみたいな、マルクト様だとか。アシュリーさんだとかを、代替品にしていこうと思ってたんです。

彼の嗚咽は収まっていたが、その表情は苦しみに満ちていた。

代替品なんかとしてしか人を見られなかった罪悪感と。

何も助けることさえできなかった後悔。

アシュリー

ああ、わかる。嫌だよな、ハナのこういうところ。

ハナ

アシュリーまで……。

アシュリー

アタシだって、守れなかったよ。

アシュリー

ハナはさ、自分が変わったことに気付かれてないと思ってたろ。

ハナ

部下達には……隠してるつもりだった。

ハナ

私の弱さを見られたくなかったから。

ティム

みんな気付いてましたよ。

ティム

だから、ジュリエッタも、アリシアも、離れたんです。

ハナ

そう……か。

ティム

結局、誰もを代替品としてしか見ることはできなかったけれど……。

ティム

本当は、もっと、ちゃんと、人として見たかったんです。

ティム

パメラは変なところばっかだけどなんだかんだいいやつだし。

ティム

ハリーもルネスも、誰よりも生きることに前向きで、真剣で。

ティム

ヒガンもアモンさんも……アシュリーさんも、まだちょっと怖いけど……

アシュリー

（ちら）

ティム

でも、本当に頼りになりました。尊敬してます。

ティム

マルクト様だって、強引だけど、僕を引っ張ってくれた。

ティム

でも……誰も、ハナさんには及びませんでした。

ハナ

そんな……そんな、わけ、ないだろ。

ハナ

私には指揮官としての才能なんてないし……

ハナ

お前の親友も、自身の親も、見殺しにしたのに……。

ティム

いいえ。

ティム

その、人間らしさが好きなんです。

ティム

決して完璧じゃないけど、夢に一生懸命で、時に不思議で、いつも振り回してくれて、頼りになる。

ティム

そんなハナさんが、大好きなんです。

ハナ

……ありがとう。

「そうか、私には才能がなかったんだ……。」

業務終了の知らせが端末に告げられる。

アシュリー

今日は……その、疲れたな。

ハナ

……ありがとう、アシュリーも。

アシュリー

は、なんだよ？急に。気色悪いな。

ハナ

でもさ、私も、頑張ってみるよ。

ハナ

私の意志で、この先を照らせるように。

そう言って、彼女はこれまでにない、とても穏やかな微笑みを見せたのだった。

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