ゆうこが住んでいる町は近くに温泉が湧き紅葉の美しい山があるので春や秋には観光客が多い
裕子の家はそんな観光客が泊まる旅館だ小さいけれどおばあちゃんが生まれる前から続いている
ある秋も終わりの夜予約していた一組のお客さんがやってきた5歳くらいの女の子を連れた女の人だった
お客さん
遅くなってごめんなさいね道路が混んでいたの
お母さん
いえいえでも心配していたんですよ
着いたばかりのお客さんとゆう子のお母さんの会話が聞こえてきた お客さんに出す夕食の支度をしながらお母さんとおばあちゃんが話していた
お母さん
あのお客様たち道路が混んでいたって言ってたけど紅葉も終わったし渋滞なんてないはずですよね
おばあちゃん
それより家の親子どこかで会ったねどこでだったかしら
お母さん
あらおばあちゃんはどんな人でも一度会ったら決して忘れないじゃありませんか
おばあちゃん
思い出した私が裕子ぐらいの子供だった頃にここに来て
お母さん
おばあちゃんが子供の頃って50年以上も前でしょその頃来た人があんなに若いはずないですよ
お母さんはククッと笑った おばあちゃんは魂がどこかに行っちゃったような顔をしていた普段はお客さんの噂話なんかしないのに珍しいことだという子はそのお客さんに興味を持ったどんな人達なんだろう様子を見に行こう
ゆうこ
お母さん配膳手伝ってあげる
お母さん
あらゆうこが手伝いたいなんてどうしちゃったんでしょうそれじゃおひつも持ってってもらおうかしら
お母さんはゆうこに炊きたてのご飯が入ったおひつを渡した ゆうこたちが食事の用意をして客室前まで行くと女の子とその母親は廊下に出てきた側の窓から外を覗いていた