陸
傍観者だったソドルも、この津波に飲まれてしまう。
この物語を、語る者は誰もいなくなった。
それから長い年月が流れたある日の事。一人の少女が島に漂着する。少女はバルド島の言い伝えを知っていた。
この物語は、ここから再び動き出す。
「ここどこ? 私の名前は、アメリア。でも本当の名前は……違う。
私は一体誰なんだろう? どうしてここにいるんだろう? ここはどこなの?」
「この子は記憶喪失なのかしら。とにかく、このまま放っておくわけにもいかないわね。
この子の面倒は私が見るしかないみたい」
「えっと……。すみません、あなたは……」
「私はソドル。見ての通り、ただのお婆ちゃんよ」
「ソドルさん?……あの、ここはいったい」
「ここはバルド島という場所よ。あなたはこの島に流れ着いたの」
「そう、ですか……。私はアメリアといいます」
「アメリアね。よろしくね」
「はい、ソドルさん」
「ねぇ、アメリア。あなたはどうしてこの島に?」
「それが、私にも分からないんです。気が付いたら、ここにいて……」
「ふむ、記憶喪失……かしら」
「はい……」
「アメリア。あなたはこれからどうするの?」
「……。分かりません。自分が何者なのか、どこから来たのか、全く思い出せない。私には帰る場所もないですし……」
「それなら、私と一緒に来ない?」
「え
