芥川
敦を寝かしつけていた筈がいつの間にか僕も寝ていたようだ。否、今は其の事は如何でもいい。先程まで寝ていた敦が居ない。
バチン
遠くから誰かが打たれた音がした。嫌な予感はしていたが、そうでない事を願いながら音の方へ行く。
敦
案の定、龍に無花果を差し入れた事が主人にばれ、うたた寝をしていた所、無理矢理叩き起こされ当然の様に殴られている。
主人
敦
主人
ドカッ
此の儘、殴り殺される__そう思って目を閉じた瞬間、確かに殴られた音はしたのに、全く痛くなかった。恐る恐る顔を上げると、そこに龍が立っていた。
芥川
敦
芥川
敦
芥川
口ではそう言っているが、龍の顔は殴られた所が腫れている。これじゃ……
主人
突然妙に納得し始めた主人。当たらないで欲しいと願ったがその願いも虚しく、主人の口から出てきた言葉は僕が恐れていた言葉だった。
主人
敦
芥川
敦
芥川
その後も嗚咽を繰り返しながら泣いている僕を龍が優しく抱いてくれて、部屋まで戻る事ができた。然し、事態は何も変わらない。龍は明日出ていってしまう。そして、今日も夜を迎えた。
芥川
敦の手前強がってしまったが、抑伝手が無い僕にとって外に出るという事は、ほぼ死を意味する。
芥川
不思議なものだ。前はそれなりに客を取れていたものの、此処に来てからは躰が持たず、悪い噂が広まり中々客を取れなくなった。数ヶ月は一人で夜を明かした。然し、其れも終わりだ。外に出て、何をしようか__
敦
芥川
敦
芥川
敦
芥川
敦
芥川
敦
敦
芥川
敦
芥川
思わず口を噤んでしまった。言っても聞かないと思ったのでは無い、肺が痛んだ訳でもない。では、何故……
敦
そんな訳は無い、そう思いつつも確かに泣いているようだ。頬が微かに濡れている。そして、軽く嗚咽を繰り返しながら泣いている誰かの声を聞いた。其れが自分だったと気付いたのは敦に抱き寄せられてから。酸欠になり、惘乎とした意識の片隅に見知らぬ男が映った、気がした。
??
太宰
遊廓の客引きはいつまで経っても慣れない。こんな事をしている暇があるなら、あの蛞蝓と居る方がマシかもしれない。__私は太宰治。或る組織の長をしている。数年前に組織の金を持ち去った不届き者を泳がせていたが、芥川くんや敦くんが酷い目にあっていると報告が上がったので動いている次第だ。にしても……何故こんな悪趣味なのだろう。これじゃあ客なんて入りっこない。
中也
太宰
中也
太宰
中也
太宰
中也
暖簾の下を中也が潜り、軽く払いながら続けて私も入る。矢張り彼等の名前はそこに有り微かな怒りを覚えたのか、中也は主人の話に耳を傾けていなかった。
珍しく僕に客が入らない、静かな夜だ。いつもならそろそろ三切れ程の客が入る。こんなに静かな夜は、嵐の前の静けさの様で少しむず痒い。
芥川
敦
芥川
敦
芥川
敦
芥川
敦
僕が困っていると、大抵龍が全て解決してれた。兄分としての威厳を守りたかったのか、恋人として守ってくれたのかは判らない。何れにせよ、僕はいつも甘えていた。だから、龍が困っている時に助けられない。僕は…生きていても……。
芥川
敦
芥川
戸惑いながら、言葉を選びながら龍は話す。否、ちょっと待て愛いってなんだ。長いこと一緒に居るけど初めて聞いたんだけど!?
そんな僕の混乱は他所に龍は続ける。
芥川
芥川
敦
芥川
窓の外をもの惜しげに見つめる龍の姿が今まで見てきたどんな月よりも綺麗で、思わず抱き寄せてしまう。
芥川
敦
芥川
主人
主人の声にはっとされ、慌ただしい手つきで身支度をする。久しぶりだからか不器用な手つきをしている龍の手を引き、僕等は客が待つ部屋へと向かった。
太宰
中也
太宰
中也
太宰
この可能性世界と現実世界の事を知っているのは私と中也の2人だけだ。魔人の方も確認してみたけれど、あの様子じゃ知らない様だ。中也が急に『この世界じゃ、手前は死なねぇな?』なんて言ってきた時はびっくりしたよ。まぁ、知ってたけど。
中也
太宰
中也
太宰
中也
太宰
勝手に彼氏みたいな顔しちゃってさ。本当にこの蛞蝓には腹が立つ。然し、今は其れよりも敦くん達を優先しなくては……。指名入れてみたけど果たして来るのか……。
芥川
敦
見窄らしい着物を着た芥川君と敦君。見るからに現実世界よりも痩せ細っている。特に芥川君は時折咳が隠せていない。此処であの病状じゃいつ命を落としてもおかしくない。全く……。
太宰
迎えに来た、という言葉に困惑した表情を浮かべる敦と芥川。無理も無い。俺だって、貧民街で此奴と出会った時は驚いた。真逆、この世界じゃ俺等は同じ生まれなんて現実世界の俺が知ったら発狂してしまいそうな現実だ。むかつく青鯖野郎は全てを知っていた様だが。
中也
芥川
太宰
敦
太宰
中也
太宰
芥川
中也
敦
今度こそ説明をするかと太宰の方を見てみるが、芥川を揶揄って遊んでいる。絶対後で死なす。
中也
敦
中也
太宰
芥川
中也
太宰
敦
中也
芥川
太宰
戸惑う二人を他所に俺等は部屋を出る。矢張り此奴の荒々しいやり方は気に食わねぇが合理的なのは事実だ。
太宰
中也
コメント
1件
続き楽しみにしてます!!主さん最高🫶