哀歌
...っ、
サッチ
わりぃ、痛かったか?
優しく手当された。
いらないって断ったのに。
哀歌
...なんで、助けたんですか、
サッチ
助けるのに、理由っていらないだろ
静かな空気が、余計に辛さを増す
やっぱり、私っていらないんだ。
サッチ
...昔の俺に似てた。
サッチ
今すぐ、ぶっ倒れそうな顔してる
そうやって告げられた事実に、
驚きを隠せなかった
哀歌
...似てない、です。
サッチ
それは昔の俺を知らないからだろ?
それはそうだ、私は何も知らない
哀歌
そういえば、名前...
サッチ
あれ、名乗ってなかったか。
サッチ
俺はサッチってんだ。
サッチ
知っての通り、この船の料理人。
初めて、名前を聞いた。
少しだけ、胸がドキリと跳ねた。
サッチ
ハハ、そんな顔するなよ。
哀歌
...っ、優しくしないでください、
伸ばされた手を振り払った
サッチ
優しくされるのを拒むなんてな。
呆気に取られている様子だ
サッチ
俺は、ずっとそばにいる。
サッチ
哀歌が、俺を拒み続けても。
優しい言葉に惑わされて、
何度も何度も裏切られてきた
でも、信じたいと思った。
優しさが、胸の中にしみ渡る
すると、涙がこぼれ落ちた
哀歌
私、ずっと、助けられてばっかり
哀歌
それでっ、申し訳なくて、泣
悔しさで、苦しくて。
でも、そんな時に抱きしめられた
サッチ
気が済むまで、泣けばいい
サッチ
俺は、おまえから逃げないから、
声が枯れることも気にせず泣いた。