夜久衛輔
結木!
結木凛
夜久、おはよ
夜久衛輔
怪我したって!大丈夫なのかよ!
翌日。朝練は休んで 教室に行くと、
部活を終えた夜久が 駆け寄ってきた。
結木凛
うん、軽度の捻挫だって
結木凛
1週間から10日で治るみたい
夜久衛輔
そっか…ひとまず骨いってなくて良かったな
夜久衛輔
合宿までに完治するといいけど…
黒尾鉄朗
夜久、昨日結木が教室に来ないから女バレ部員に聞きに行ったんだよ
夜久衛輔
ばっ、言うなよ!
結木凛
そうだったの?
夜久衛輔
まあ…そりゃ心配だし…
照れくさそうに言う 夜久をからかう黒尾。
私は驚きつつも クスリと笑った。
結木凛
ふふ、ありがとう
結木凛
心配かけてごめんね
夜久衛輔
!
夜久衛輔
平気ならいいんだけどさ…
結木凛
( 夜久は相変わらず優しいなぁ )
変な勘違いをしてしまう程に。
結木凛
あれ、夜久
昼休み。
中庭で1人 購買のパンを食べていると、
おにぎりを手に持った 夜久が現れた。
夜久衛輔
隣いいか?
結木凛
いいよ
ベンチの隣に座る夜久。
3年間同じクラスだけど、
2人で昼休みを過ごすのは 初めてで、
緊張してしまう。
結木凛
黒尾と海は?
夜久衛輔
揃って進路相談
夜久衛輔
結木の友達も?
結木凛
ううん、生徒会の会議があるみたい
夜久衛輔
そっか〜
夜久の手元にある おにぎりを見て、
やっぱり気が合わないのかもと 少し落ち込む。
夜久衛輔
やっぱキツイ?
結木凛
え?
夜久衛輔
部活出れないの
落ち込んだのが 顔に出ていたのか、
夜久は眉を下げて顔を覗く。
こういう時は鋭いのに 変な所で鈍いから困る。
結木凛
うん…
結木凛
でも今日の放課後からはサポート的な仕事に行こうと思ってるし、
結木凛
長引いてもインハイ予選には間に合うだろうから
インハイ予選には間に合う。 それは確かだ。
だけど間に合うか どうかじゃない。
毎日の練習の積み重ねが 大事なのだ。
毎日の積み重ねが 本番の勝敗を左右する鍵となる。
主将として部員を 引っ張っていく立場の私が、
こんなんでどうするんだ。
夜久衛輔
違うだろ
結木凛
違う…?
夜久衛輔
俺は大人になってもバレー続けようと思ってるけど、結木は違うだろ
夜久衛輔
今年が、最後になるだろ
夜久は空を見ていた視線を こちらに向ける。
その真っ直ぐな瞳が 私の本音を引きずり出す。
気付けば生ぬるい雫が 頬を伝っていた。