主
部屋の窓の外では、遠くでごろごろと雷鳴が響いていた。
涼架はスマホの通知音に肩をびくりと震わせながら、画面を見つめる。
——元貴からだった
その一文を見た瞬間、胸の奥がぎゅっと痛んだ
……行かなきゃ
反射的にそう思って、涼架は上着を掴み、傘を持とうとした——けれど
次の瞬間、「ドンッ!!」 と窓の外が光り、耳を裂くような雷鳴が落ちた
涼架
反射的に耳を塞いで、床にしゃがみ込む
鼓動が速くなって、頭の中で雷の音だけがぐるぐる回っていた
行きたいのに……行かなきゃ、なのに……!
足が動かない
濡れてもいい、転んでもいい。 そう思うのに、雷の音がまた鳴るたびに、体がびくびくと勝手に縮こまってしまう
そんな時、スマホが再び震えた
若井からだった。
その文字を見た瞬間、涙がこぼれそうになった。震える指でメッセージを打つ。
涼架
返信はすぐに届いた
…ダメ、無理しないで……
そう返そうとした時、またドンッと雷鳴が落ちた
両手で耳を押さえて小さくうずくまる
その手の中で、若井の声がするような気がした
先輩、俺、ちゃんと行くから——泣かないで。
雷の音が響く中、涼架の頬を伝った涙は、冷たいのにどこか温かかった。
空気は、いつもより少し重たかった。
窓の外では、低く鳴る雷の音が途切れ途切れに響いている。
若井はベッドの縁に片手をついて、なんとか体を起こしていた
額にはうっすらと汗。 けれど、瞳の奥には決意があった。
若井
その一言に、付き添っていた元貴がすぐ反応した
元貴
元貴
若井は小さく息を吐き
若井
若井
元貴は一瞬、言葉を失った
若井の声には焦りが滲んでいた
それでも、彼の体の震えや、青ざめた顔色を見てしまうと—— 簡単に“行け”なんて言えるわけがなかった
元貴
若井
元貴
元貴
若井は唇を噛んだ
骨折している部分が痛む
それでも、先輩が雷の中で一人震えている姿を思うと、どうしてもじっとしていられなかった。
若井
その言葉には、無理も虚勢もなかった
ただの“本音”だった
元貴は、ため息をついて後頭部を掻く
元貴
元貴
若井はベッドのシーツをぐっと握りしめた
若井
元貴
元貴
その一言に、若井の肩がわずかに揺れた
そして、ゆっくりと目を伏せる
雷の音がまた遠くで響いた
そのたびに若井の心も、涼架の顔を浮かべてざわつく
若井
元貴
元貴はスマホを手に取り、少しだけ優しい声で言った
元貴
若井は小さく笑って、呟いた
若井
でもその笑みは、誰よりも切なく、温かかった
コメント
1件
めっちゃ涼ちゃんの事好きじゃん!でも松葉杖で雨の中家に行くのは危ないw