若井の部屋の中
元貴が若井にスマホを渡してから、すでに数分が経っていた
若井は何度もスマホの画面を見つめ、通話ボタンを押しては、耳に当てる
——プルルルルル。 ——プルルルルル。
若井
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応答なし
呼び出し音は鳴るのに、誰も出ない
その沈黙が、部屋の時計の針の音をやけに大きく響かせていた
若井
若井の声は低く、焦りで少し震えていた
元貴がすぐに覗き込む
元貴
若井は首を横に振った
若井
若井
その“知ってる”という言葉に、元貴の表情が少しだけ曇る
若井は涼架のことを本当に隅々までわかっていた
だからこそ、その反応が“ただの寝落ち”じゃないことも、すぐに気づいていた
もう一度、若井は通話ボタンを押す
——プルルルル。
若井
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応答なし
今度は長く鳴ったまま、やっぱり応答はない
若井
元貴
その瞬間、窓の外が真っ白に光った
——ゴロゴロッ。 地響きのような雷鳴
若井の手が小さく震える
涼架がその音を聞いて、どんな顔をしてるか、容易に想像できてしまう
若井
若井の声は震えながらも、必死だった
元貴
元貴
若井
——部屋のドアが閉まる
若井は一人になった
手の中のスマホを見つめながら、何度も呼びかけるように小さく呟く
若井
けれどその頃
涼架の部屋では、雷鳴と雨音が途切れなく響いていた
呼吸が浅くなり、胸がきゅっと締めつけられるように苦しい
酸素が足りなくて、目の前が白く霞んでいく
涼架
震える指でスマホを掴むけど、 画面をタップする力が入らない。 耳を塞ぎたいのに、身体が動かない
涼架
かすれる声で、涼架は必死に呼ぶ。 でも返事はどこからも聞こえなかった。
——プルルルル。
若井
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不在着信
テーブルの上でスマホが震えている
画面には「滉斗」の名前
けれど、その着信に触れることもできず、 涼架の手はそのまま布団の上に滑り落ちた
冷や汗が頬を伝い、涙と一緒に静かに混ざって落ちていく
涼架
雷鳴が、まるでその言葉をかき消すように響いた
若井の呼びかけも、涼架には届かないまま
ただ、二人の距離はほんの少しだけ遠すぎた
土砂降りの雨が窓を叩く音の中、元貴はびしょ濡れになりながら涼架の家の前に立っていた。
ドアを何度もノックする
元貴
元貴
何度呼びかけても、返事はない
胸の奥がざわつく
若井からの“嫌な予感”という言葉が頭の中でリピートされる
元貴
思い切ってドアノブを回すと、鍵はかかっていなかった。
静まり返った部屋の中。 雨の音だけがやけに響く。
元貴
部屋の電気がついていない
カーテンの隙間から入る稲光が、一瞬だけ部屋を照らした
その光の中で、床にうずくまっている小さな影が見えた
元貴
元貴が駆け寄る
涼架は肩を小刻みに震わせながら、浅く速い呼吸を繰り返していた
唇は青白く、額には冷や汗
耳を塞いだまま、かすかに声を震わせている
涼架
元貴
肩に触れると、びくっと大きく身体が跳ねた。完全にパニックになっていた
元貴
元貴
元貴は自分の手を涼架の手の上に重ね、ゆっくりと胸に当てる
元貴
けれど涼架の呼吸はどんどん浅くなっていく
涼架
涙が止まらず、頬を伝っていく
元貴は焦りながらも、若井から借りてきた若井のパーカーを脱いで涼架の肩にかけた
そしてそっと抱き寄せる
元貴
涼架の耳を塞いでいた手を、ゆっくりと外してあげる
元貴の胸の中に顔を埋めた涼架の身体が、少しずつ力を失っていく
涼架
かすかな声でそう呼んだ直後—— 涼架の身体から、力が抜けた
元貴
呼吸は弱く、意識は完全に途切れていた
元貴は震える手でポケットからスマホを取り出し、すぐに救急車を呼ぶ
元貴
雨音がどんどん強くなっていく中、元貴は涼架の手をぎゅっと握りしめ、何度も呼びかけた。
元貴
その声は震えながらも、必死に優しく。 涼架の頬を伝う涙が落ちていった
コメント
1件
涼ちゃん頑張れ〜!目覚めたら目の前に多分若井がいるよ!