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カタ…カタカタカタ
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静かな部屋にパソコンのクリック音が鳴り響く。
時刻は午前11時。
まだ昼下がりだというのに、 窓を雨戸から締め切っている俺の部屋に 明かりが漏れることはない。
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喉が乾く。 水を取ってこようかな。
そう思い、扉を開閉してキッチンに向かう。
扉を開けると、 目に明かりが飛び込む。
窓が開いているのだから明るいのは当然か。
暗がりに閉じこもり続ける俺には、 こんな少しの明かりですらも眩しく感じるくらいだった。
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冷蔵庫を開く。 500mLの天然水のペットボトルを持ち出し部屋に戻る。
戻ろうとした。
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見つけてしまった。
冷蔵庫の二段目に置いてある皿。
その皿にかかるラップの上には 付箋がある。
付箋の内容を後ろめたい気持ちを抱えながら目でなぞる。
「 お腹すいたら食べてね! 食欲が無かったら昨日買っておいたプリンも食べていいよ 」
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いつもの文章。 なのに毎日胸に刺さるものがある。
皿の中はオムライスだろうか。
小さい頃から母の作ったオムライスは大好きだった。
いつも1皿じゃ足りず、おかわりをしていた思い出がある。
この所昼食を取っていないのに気づいていたのだろうか。
少しでも口にするように 俺の好きなものを用意してくれたんだな。
嬉しいのに、なぜだろう。 素直に喜べない。
母の優しさと温かさを目の当たりにすると 自分が潰れて、壊れそうで、怖くなる。
お腹はすいていない。 朝ごはんも食べてないのに。
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ここに来た時よりも重たい足で 自室に戻る。
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暗い部屋。 やる気も起きない。
先程まではパソコンで動画をみていた。
だが、初めはいくら観ても足りない、 もっと観たいと思っていたものも 不思議なもので毎日繰り返すと楽しさを失う。
なんで自分こんなことしてるんだっけと 考えても答えの出ない問いを考え出す。 劣等感に浸る。
重い体をベッドに乗せる。 仰向けで天井を見上げる。
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俺はいつまでこうしているのだろう。 もう受験生なのにさ。
母さんごめん。 友達はまだ学校で待っててくれてるんかな。
学校は好きなのにな、楽しいのにな。 なんで行けないんだろうな、
なんで、
俺だったんだろうな。
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涙が溢れて滴が布団に落ちる。 布団が濡れる。
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壁時計に目をやる。 針はもうすぐ12時半を刺そうとしている。
そろそろ支度するか。
…また、視線向けられるんかな。 行きたくないな。
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そう思って腰を上げた時、 わざわざキッチンまで取りに行った水の存在を思い出す。
別のことで頭がいっぱいになり、 すっかり口にするのを忘れていた。
ペットボトルを手に取る。 感触はまだ冷たかった。
手のひらでペットボトルを掴んでいる。 ペットボトルは手のひらから伝わる俺の体温で少しずつ冷たさを失うのに、
俺の手のひらはその冷たさで体温を失っていく。
冷たい方へ与えることはできるのに、 温かい方に見返りはない。 与えるだけ。
……俺はこのペットボトルと同じだな、 なんて、被害妄想を繰り広げて。
パキッ
やるせない気持ちで水を口にする。
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水を飲むと少しやる気が出たような気がした。
…よし、動くか…。
憂鬱な気分で
「行きたくない」
「行かなくちゃいけない」
「行きたくない」
と心の中で葛藤しながらやっとの思いで支度を終える。
玄関先の置時計は もう15時を刺そうとしていた。
支度に2時間かかることはいつもの事だ。 こんなに考えても仕方の無いことを永遠と考え続けているのだから。
扉を開けることすら億劫だ。 でも今日は校内の定期テスト2週間前
休めば試験範囲表を貰えない。 勉強ができない。
授業に出ていないのだから、 せめてテスト期間くらいはしっかり勉強をしないと。 後々困るだろう。
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扉を開けた先は、
憎みたくなるくらい。 目を細めたくなるくらい。
眩しくて仕方なかった。
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数分空を見あげたまま立ち尽くす。
だが止まっていても仕方ない。 視線を進行方向に移し、 いつもの道を歩き出すことにした。