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ゆう
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今回は
余命一年の僕が、余命半年の君と出会った話。 です
知ってる人は知ってる小説だと思います
ちなみに主人公はぷりちゃんです
なのでほとんどぷりちゃん視線が多いです
ちょっと省略&アレンジ入れてます
―期限付きの恋―
ふと顔をあげると、
窓に雨粒が張り付いているのが見えた。
静かな病室で絵を描いていただけなのに、
まるで雨の音に気づかなかった。
せめて退院の日くらいは清々しい青空であってほしかったな、と軽くため息をついて、再び視線を落とした。
右手に持った鉛筆を握り直し、
ベットテーブルに広げたスケッチブックに、
軽快なタッチで細い線を引いていく。
俺はこの小さな病室でひとり寂しく描いていた。
一週間の検査入院も、ようやく終わりだ。
同時に春休みも今日で終わる。
明日から俺は、高校二年生になる。
というよりも、とりあえずなれた、と言うべきかもしれない。
三年生になれる保証は俺にはない。
ぷりっつ.
もう一度ため息をついて、
サイドテーブルの上にある置き時計に目を向ける。
母さんと弟が迎えに来ると言っていた時間まで、
あと十分しかない。
俺は急いで鉛筆を走らせた。
そして十分後、ようやく絵が完成した。
ぷりっつ.
と甘めの点数をつけた。
自分の書いた絵に点数をつけるのがここ最近のマイブームだ。
入院中に何枚も絵を描いた絵を満足げに眺めていると、
扉がノックされた。
僕が応答する前に扉が勢いよく開く。
ちぐさ.
顔を覗かせたのは弟のちぐさだ。
母さん
ちぐに続いて病室に入ってきた母さんが心配そうに言った。
ぷりっつ.
着替えが入った紙袋と、スケッチブックと漫画本がぎっしり詰まった紙袋を両手に持って病室を出る。
右手に持った紙袋がずっしりと重い。
もつどころが千切れてしまわないか不安だ。
母さん
ぷりっつ.
俺はむすっと答えた。
ちぐさ.
ちぐが嬉しそうに連呼をする。
まったく恥ずかしい弟だな、と苦笑した。
そのときだった。
エレベーターに向かう途中の通路で、
ひとりの少年が前方から現れた。
パジャマを着ているのでおそらく入院患者なのだろう。
艶やかな金髪で姿勢よく歩いている。
色白の肌に透きとおるような瞳が印象的で、
俺は思わず目を奪われた。
彼の潤んだ瞳は、
どこかを遠くを見据えているようでもあった。
すれ違う瞬間、彼と目が合った。
あっきぃ.
ぷりっつ.
一瞬の出来事だったのだか、
ゆっくりと時間が進んでるような感覚に陥った。
目が合ったのはほんの数秒だった。
それなのに何秒も、何分間も見つめ合っているような経験したことのない不思議な感覚に襲われた。
瞬きをすると、再び時が動き出したかのように彼は歩き去っていった。
なんとも言えない奇妙な出来事だった。
彼はスケッチブックを小脇に抱えて歩いていく。
僕は振り返り、目で追う。
すると、談話室の窓際の席に彼は腰を下ろした。
そしてスケッチブックを広げ、なにやら絵を描き始めた。
ちぐさ.
通路の先でちぐが手招きする。
ぷりっつ.
そう言って俺は、ちぐのもとへ向かう。
曲がり角でもう一度振り返ると、彼は眠たそうに小さく欠伸していた。
入院患者は年配の人たちばかりで、俺と同じくらいの歳の子がいるなんて知らなかった。
なんの絵を描いているのだろう。
帰りの車の中で、俺は名前を知らない、あの少年のことを考えていた。
どうしてかは自分でもわからない。
衝撃的な出会いだったわけでもない。
その日からは、絵を描くたびに彼のことを思い出すようになった。
一旦END