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6年前

黒崎蓮斗 中学一年生の春

俺だって仕事やってんのに文句ばっか言ってくんなよ!

仕事?家のことは全部私に任せきりなくせに!

俺が仕事してくらから生活できてるんだろ!

リビングから聞こえてくる言い合いの声

黒崎 蓮斗(12)

…はぁ

ずっと気づかないふりしてたけど

─うちの家はもう、壊れてる

黒崎 蓮斗(12)

(顔を合わせれば喧嘩、食卓では無言)

黒崎 蓮斗(12)

(笑い声なんていつから聞かなくなったんだろう)

黒崎 蓮斗(12)

(俺が、1番しんどいってこと、親は分かってない)

黒崎 蓮斗(12)

("家族"って、こんなにもろいんだ)

黒崎 蓮斗(12)

(俺はまだ子供で、2人の言い合いを黙って聞いてることしかできない)

黒崎 蓮斗(12)

(本音なんて言っても、聞いてもらえるはずがない)

だから心の中で、閉じ込めてた

別の日

黒崎 蓮斗(12)

…ただいま

蓮斗、おかえりなさい

父と母が向き合って座っている

蓮斗、少しこっちに来なさい

黒崎 蓮斗(12)

中学生の俺にでも分かった

この状況で、何を伝えられるか

蓮斗、父さんと母さん、別々に暮らすことにしたから

黒崎 蓮斗(12)

いつか、この日が来ると分かっていた

だから、悲しい感情なんてなかった

蓮斗にも迷惑かけるって分かってたわ

でも、こうするしかなかったの

本当にごめんね

黒崎 蓮斗(12)

(ごめん、そんな言葉で済まされると思ってるのか)

黒崎 蓮斗(12)

(人と人との関係ってこんなに簡単に壊れていく)

黒崎 蓮斗(12)

(どれだけ仲良くしようともいつか壊れていく)

黒崎 蓮斗(12)

(父さんや母さんみたいに)

蓮斗、お前はどうしたい

黒崎 蓮斗(12)

どっちと暮らしていきたい?

黒崎 蓮斗(12)

声が出なかった

その時から何も信じられなくなった

その後どんな話になったのかも、思い出せない

それから数日後

クラスの男子たち

今日お前んち行ってもいー?

クラスの男子たち

あれしようぜ、新作のスーパードラゴン!

クラスの男子たち

俺カセット持ってくわー!

クラスの男子たち

え、俺もいくー!

複数の男子たちが群がっている

黒崎 蓮斗(12)

(今仲良くしてても─そのうち口もきかなくなる)

黒崎 蓮斗(12)

(俺は知ってる、人との関わりなんて無意味だ)

黒崎 蓮斗(12)

(だから俺は、誰にも近づきたくない)

黒崎 蓮斗(12)

(もう、あんな思いはしたくないから)

昼休み

教室の隅に1人で弁当箱を広げる

クラスの男子たち

黒崎さん、また1人で弁当食ってるぞ

クラスの男子たち

てか、話してるとこ見たことねぇ

クラスの男子たち

なんか雰囲気こえぇじゃん?いっつも真顔だし

クラスの男子たち

目合ってもすぐ逸らされるもんなー

クラスの男子たち

1人で寂しくねぇのかなー

クラスの男子がチラチラとこっちを見ている

黒崎 蓮斗(12)

(…聞こえてるっつーの)

黒崎 蓮斗(12)

(1人で寂しい?バカみたい)

黒崎 蓮斗(12)

(1人の方が絶対気が楽だ)

黒崎 蓮斗(12)

("冷たいやつ"そう思われる方がよっぽどまし)

黒崎 蓮斗(12)

(だから俺はこのままで良いんだ)

寺本 詩

…っ

黒崎 蓮斗

…壊れるくらいなら、最初から持たない方がいい

黒崎 蓮斗

そんな風に考えてた

黒崎 蓮斗

いや、今でもちょっと思ってるかもな

黒崎 蓮斗

誰を信じても意味ないし、期待しても裏切られるし、適当に距離取ってた

黒崎 蓮斗

"失うこと"が嫌だったから

寺本 詩

黒崎先輩…

黒崎先輩の言葉が胸を揺らす

優しいけど、どこか頼りない

こんな黒崎先輩、はじめて

黒崎 蓮斗

こんなだから周りから冷たいって思われたし、自分から話しかけてくるやつもいなかった

黒崎 蓮斗

なんでこんなんでサッカー部入った?って思うかもしれない

黒崎 蓮斗

サッカーだけは、あの頃からずっと好きだった

黒崎 蓮斗

チームプレーだけど、人の感情とかじゃなくて動きで分かり合える

黒崎 蓮斗

心地よかったんだ。だから諦めたくなかった

黒崎 蓮斗

─諦めなかったから、お前に会えた

寺本 詩

…え?

黒崎 蓮斗

俺を変えてくれた人

黒崎 蓮斗

お前俺のこと最初苦手だったろ?

寺本 詩

へっ?!あ、いやその…

黒崎 蓮斗

良いよ、慣れてたし

寺本 詩

え…と

黒崎 蓮斗

俺も最初はお前のことほんとにただの鈍臭いバカなやつだと思ってた

黒崎 蓮斗

だからあんまり関わりたくなかった

黒崎 蓮斗

他の奴らとおんなじで、この子にも距離取られるんだろうなって思ってた

黒崎 蓮斗

でも、お前は俺に普通に接してくれた

黒崎 蓮斗

他の奴らと違った

黒崎 蓮斗

俺、覚えてるよ

黒崎 蓮斗

お前が俺に「迷惑かけないように頑張るんで見捨てないでください」って言ってきたこと

黒崎 蓮斗

俺あの時、自分が本当に思ってた気持ちに気づいた

黒崎 蓮斗

人と関わりたくなかったんじゃない、人に見捨てられることを避けてたんだって

黒崎 蓮斗

寺本はその気持ちをまっすぐ怖がらずに俺にぶつけてくれた

黒崎 蓮斗

お前が最初だったよ

黒崎 蓮斗

俺を、変えてくれた

寺本 詩

(私が、先輩を…?)

黒崎 蓮斗

…この話も、誰にもしないと思ってた

黒崎 蓮斗

なんか、お前になら、安心して話せた

寺本 詩

…嬉しいです

寺本 詩

黒崎先輩のこと、知れて

黒崎 蓮斗

これからまた誰かに裏切られたり、突き放されたりするかもしれない

黒崎 蓮斗

でも

黒崎 蓮斗

あの時はっきり伝えてくれた寺本だけは、俺が、唯一信じてみたいって思えたやつだよ

寺本 詩

っ…!

夜風がサラサラと髪を靡かせる

寺本 詩

(先輩の言葉、いちいち胸を締め付ける)

寺本 詩

(深い意味はないって分かってる、なのに)

好き、先輩が

力強い黒崎先輩の眼差しを感じる

黒崎 蓮斗

あの時、俺を突き放さないでくれてありがとう

寺本 詩

…!

寺本 詩

(先輩の、全て)

寺本 詩

(初めて知った先輩の内側に秘められていた思い)

寺本 詩

(だめだ、先輩の隣にいたい)

強く想った、夏空の下

次の日の朝

寺本 詩

(昨日の夜、黒崎先輩と2人きりのあの空間)

寺本 詩

(全部が夢見たいだったけど、全部覚えてる)

"寺本だけは、俺が唯一信じてみたいって思えたやつ"

寺本 詩

(あの言葉がずっと胸に残っている)

寺本 詩

(優しくて、真剣で、どこか寂しそうで…)

寺本 詩

(あの瞬間は何も言えなかったけど、胸が締め付けられた)

寺本 詩

(私、先輩にとってそんな存在だったんだ)

寺本 詩

(…嬉しい)

放課後 部活終わり

寺本 詩

(今日は特に話せなかったなぁ)

寺本 詩

(私は先輩のことが好き)

寺本 詩

(先輩にとって私は"信じたい存在")

寺本 詩

(信じたいって、どういう…)

黒崎 蓮斗

寺本

寺本 詩

え、黒崎先輩?

寺本 詩

まだ帰ってなかったんですか?

黒崎 蓮斗

うん、待ってた

黒崎 蓮斗

一緒に帰ろ

寺本 詩

…は、はい!

寺本 詩

急いで鍵返してきます!

黒崎 蓮斗

待ってる

寺本 詩

(先輩と、話せる…!)

寺本 詩

(ちゃんと、言おう)

君との距離、0センチ

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