モブ達
ウォおお!彼女頑張れぇえ!
とある水泳大会だ
僕はそれを静かに見つめていた
優雅に泳ぐ彼女の姿は 海月のようで
ひらひらと踊るように ステージを舞ってゆく
彼女はその日から 海月姫 と呼ばれるようになった
彼女
僕!どうだった?
僕
相変わらずだね、きれいだったよ!
彼女
オー!ありがと!
僕
いいよな、僕もそんなふうに泳げたらな
彼女
w大袈裟だよ、でもサンキュ!
そんなふうに笑いあった日々
だけど
何故幸せは
途切れるのだろうか
彼女
イ”タイ‥痛いよ‥!
僕
彼女!あまり喋るな‥!
彼女
ウゥ‥私はどうなるの?
今にも消えそうなか細い声で 彼女は問いかけた
僕
大丈夫、大丈夫だよ‥
そして 彼女の片足は 動かなくなった
彼女
なんで?!なんで私がこんな目に合わないと行けないの?!
僕
彼女‥落ち着け‥!
彼女
落ち着けるわけ無いじゃん!
彼女
だって‥前みたいにはもう泳げないんだよ!
彼女は泣きながら 叫び続ける
僕
彼女‥‥
彼女
…もういや、こんな私いらない
彼女
泳ぐ事ができなくなった
彼女
なんの取り柄のない私なんていらない
彼女はゆらりと立ち上がる
僕
‥死ぬのは許さない
彼女
なんで?どうせあんただって
彼女
泳げない私は要らなくて、捨てるんでしょ?
僕
そんなわけ無いだろ!
彼女
じゃあ証明して見なさいよ‥!
僕
僕がお前の生きる意味になってやる!
そして、楽しい時を 彼女と過ごした
一つ一つが幸せで 楽しくて
儚く割れるバブルのように 短い時間に感じた
そして、ある日
僕
なあ,水族館行かね?
彼女
…いいよ!
一瞬言葉を止めたのは 一体なぜなのだろうか
僕
綺麗だな
海月の水槽には 光が当てられており その美しさをより増すものになっていた
その美しさは彼女 そのものだった
彼女
綺麗だね
彼女
私も、またこんなふうに泳げたらいいのに
彼女は水槽に手を添え 愛おしそうに呟いた
彼女
ねえ、僕!私トイレ行ってくるね
僕
了解!
僕
遅い‥大丈夫か?
彼女が中々戻ってこない
嫌な予感がした
客達
ねえ、あれ‥危ないわよね!?
海月の水槽を見て 人がざわつく
僕
…?!
彼女が水槽の上に立っていた
僕の方にちらりと 目を向け、小さく呟いた
彼女
ごめんね、やっぱり
彼女
私は最後まで泳ぎたい
僕
彼女!!!!
僕が叫んだ頃には遅かった
彼女は海月のいる水槽に 飛び込んだ
ゆっくりとワンピースをひらひらと させながら沈んでゆく姿は
美しく、儚く、切ない ものだった
そして
海月姫は
赤く染まる