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床に穴を開けるのは難しい。ダンジョンという名を冠するだけあってしっかりとした地面だ、体力も消費する。
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何度目かの僕の番が来た時、疲れたと駄々をこねる。そもそも僕は現実世界で特別運動が得意というわけでもない、何故かこの世界では勇者に振り分けられスタミナも少しはついたが、さとジェルに比べるとまだまだだ。
体力ねー、と飽きられる中、なーくんは苦笑いしながら回復魔法をかけてくれる。こんなに頻繁に魔法を使って大丈夫なのか、と聞くと、回復魔法を一度登録しているから本当に体のすべての体力が無くなるまでは気がつかないし支障も無いという地味じゃなく恐ろしいことを言っていた。
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何か言いたそうな顔をしているジェルくんをなんだかんだで言いくるめてしまったなーくん。ジェルくん、その気持ちわかる。しかし共感できても世の中にはどうにもできない事があるんだ、例えばさとみくんの…。
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さとみくんの姿が見えない。ミミック騒動の時はいたからどこかへ行ったのだろうが、人一倍こういうゲームに詳しいさとみくんがまさかこんな悪手をとるとは思えない。
かといって何かトラブルに巻き込まれている可能性もあまり考えられない。実際少し前まで一緒に居たわけだ。
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疑問を呈したところで僕が他の選択肢を考えついている、なんて事もないのだが。
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心配そうな視線が僕の方に向けられ、この場でこういう状況にゲームといえど慣れているのは僕しかいないという事実を、体で感じた。
さとみくんがいない今、僕がこの二人を率いてダンジョンに入っていくしかない。
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僕も正直自分が頼りになるとは思ってないけれど、これは嫌でも僕が頼れる、って姿を見せないとより不安になるから、虚勢を張る。
人生において本当に珍しく、さとみくんがいない事を心細く思った。
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ミミック事件で宝箱にトラウマを植え付けられたジェルくんだが、苦手なものほど見つけるのが早いというか、程なくして天敵を発見してしまった。
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十中八九宝箱だが、生憎蓋が開いている。これまた十中八九中身は先に取られているだろう。
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宝箱の前に立つ。蓋を完全に開いて中を開いてみると、やはり空っぽだった。
ーーいや、しかし、内部に埃が溜まっていない。蓋は大分最近開けられた物だと考えると、僕の今の思考で思い当たる人物といえば一人しかなかった。
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逆にジェルくんがよく見ずに突っ込んだから喰われたんだよ。
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まだこれがさとみくんの仕業だと確定できる証拠は何もないのに、僕たちはそれに縋って楽観的に先へ進んだ。きっと、不安を取り除いてくれる様な出来事を無意識に探してたんだと思う。
でも、一向にさとみくんの気配はしなかった。
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気付いた時には、あれだけ楽観的だった僕たちが、不安を意識的に感じるくらいには、奥へ来てしまっていた。
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正直、そんな冗談も言っていられないほど奥へ来てしまった。
ここまで来ると、いつ何が襲って来てもおかしくない。今はなーくんの光によってある程度ここにいるコウモリ等は防げているが、もし魔物が来たとしてどうするのか。
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冗談は言っていられないのだが、緊張した雰囲気を和ませるために口先だけの応酬をする。
笑い声を上げていても、それはどこか上滑りしたものだったと思う。僕も自分がどんな状態なのかあまり分かっていなかった。
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いーじゃん、と。
後に続く言葉が出てくることはなかった。
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肩に、鋭い痛みを感じた。
振り返ると、いかにも魔物、といった出立ちのヤツのツメが僕の肩を貫通していた。叫ぶ暇もない。ツメが抜かれて、そこからは服を濡らす程の血が吹き出して来た。
もう一周回って痛みは消えていて。
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朦朧とする意識の中、二人の声がやけに鮮明に聞こえた。