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すみれ
あかり(you)
すみれ
あかり(you)
かえでの病室を出てすぐ、 廊下の壁に凭れながら腕を組んで待っていたすみれさん
いつだって背筋をピンと伸ばして堂々としている彼女の姿は、 余計に私の負の部分を煽る
すみれ
あかり(you)
すみれ
あかり(you)
すみれ
一直線に伸びたこの廊下の蛍光灯が、 眩しく感じる
すみれさんは都内にある大手企業の事務職として働いているらしく、 品のあるスーツにコートを羽織っている姿とは対照的に、 仕事終わりの格好のまま飛び出してきた私は恥ずかしいくらいにみすぼらしく思えた
けれどいくら姿かたちが地味だろうと、 大人しそうな顔と言われようと、 かえでを簡単に手放すわけにはいかない
彼のことを一度手放した人に、 二度目はない
すみれ
なんて言って、 かえでをステータスの一部にしようとしている人には……絶対に負けない
すみれ
すみれ
すみれ
あかり(you)
こんな人に、かえでを取られたくない
すみれ
あかり(you)
婚約していることをこんな場面で使いたくはなかったけれど、 抑えられない
これが独占欲というものなのかもしれない
今まで、 かえでは私を甘やかし過ぎた
独占欲や嫉妬心が芽生える暇もないくらい彼はいつも隣にいてくれたから、 こんなことになるまで忘れかけていた感情だった
隣で寄り添えなくなって、 初めて気付いた
かえでを誰にも取られたくない
隣にいていいのは私だけ、 だと
すみれ
あかり(you)
すみれ
あかり(you)
すみれ
すみれさんの言葉が鋭い棘になって容赦なく私へ突き立てる
3年分撮りためた2人が写っているアルバムも、 星型のネックレスも、 この婚約指輪さえ《記憶》という2文字には敵わない
血の気が引くように、 だんだんと目の前が真っ暗になっていく感覚が分かった
どうにかかえでを繋ぎ止めようと必死に手を伸ばしても、 どうしてか、 どんどん引き離されていくばかりで未来が見えなくなってしまった
すみれ
あかり(you)
そこで"勝ち"を確信したすみれさんは、 コツコツとヒールの音を鳴らしながら去って行く
呼び止めることも、 何か反論する言葉さえ見つからなくて、 彼女の姿が見えなくなったと同時にその場に座り込んで自分を哀れんだ
あかり(you)
本当に、今の私は哀れだ