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2086年 7月14日 5時31分
人
気怠い体を起こす。 目覚ましアラームが鳴る前に、今日もまた目覚めた。 本日の睡眠時間は3時間。上出来だ。
いつものように、体温を測る。
…ピピピピッ
随分と昔の、使い古した体温計。 脇に挟み数十秒が経った頃、小さな電子音が鳴った。
36.8
そこには数字だけが表示される。 正常だ。
今日も体温をメモ帳に書く。 この行為に意味があるのか、自分でも分からない。
カーテンの隙間から朝日の明かりが漏れ、暗い部屋の中に一筋の線を引いている。
手すりに掴まりながら、階段を降りる。
最後の1段の所まで来て、足を踏み外す。
人
これが、最後の1段で良かったと思う。
電気は付けず、リビングを通してキッチンへ向かう。
なんとなく冷蔵庫を開けると、溜まりに溜まった冷凍食品があった。
人
ほとんどが期限切れ。 いつ買ったのかすらも覚えていない。
水道水で手を洗い、口をゆすぐ。
人
服は着たまま、風呂に入る。 湯は冷たくも暖かくもなく、ぬるま湯だった。
深緑色のツタや苔(こけ)が壁に侵食し、天井からはピチョンと水滴が滴る。
人
目を閉じる。
人
蛍光灯がジジッ……と鳴る。
人
外から聞こえる、車の走行音と雨音。
…………。
浴槽に頭まで浸かる。
周りの音は曇った。
息を吐くと、ブクブクと音を立てて泡ができ、上へと登っていく。
水の中から見える景色は、この世の何よりも綺麗なものだった。
息が苦しい。
上に手を伸ばし、自分が吐いた泡を掴むように拳を弱々しく握る。
意味の無い行為だ。
このまま眠れたら、どれほど良かっただろう。
それが、この世界に住んでいる"人"の日常