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蘭side
威榴真が一通りの説明を終える頃 人数分のペットボトルを抱えた 澄絺と夏都が帰ってきた。
私は冗談のつもりで言ったのだが 本当に奢ってくれるらしい。
気持ちごとありがたく受け取り 改めて今作の監督である 澄絺から絵のイメージを 聞くことになった。
春緑すち
春緑すち
春緑すち
澄絺には確固たるビジョンが あるようで迷いなく言い切る。
その姿に圧倒されると同時に 私は思わず親友2人と 顔を見合わせた。
自分の絵で狙った効果を出す。
それがどんなに大変なことかは 想像にかたくない。
少なくとも私が1枚の絵を 描く時見る人にこんな感情を 持って欲しいと決め切ることは稀だ。
あったとしても筆1本で 実現するのは相当な力が求められる。
美琴と恋醒も難しい顔になり 何事か考えている。
澄絺は順々に視線を送り、 やがて今日の天気を聞くような 口調で言った。
春緑すち
桃瀬らん
いきなり言われても困るし 意味が分からない。
私は澄絺の真意を確かめようとしたが 真っ直ぐな視線に射貫かれ 問いかけにならずに空気にとけた。
桃瀬らん
とっさに思い浮かんだ言葉を 告げると澄絺は大きく頷く。
美琴もその反応に背中を 押されるようにして 閉ざしたきりだった唇を開いた。
桜黄みこと
澄絺は興味深げに頷き 残る恋醒を見やる。
春緑すち
雨乃こさめ
恋醒の独特な感性に 威榴真と夏都が目を 見開くのが視界の端に映った。
美琴も「えっ、」と小さく息を呑む。
澄絺だけは真剣な表情になり 机に手をつき身を乗り出してきた。
春緑すち
雨乃こさめ
雨乃こさめ
分かるような分からないような感じ。
それが私の率直な感想だった。
他のメンバーも似たり寄ったり だったらしく相槌も打てないでいる。
唯一、澄絺を除いては。
春緑すち
呆然と呟いてから澄絺が はにかんだように笑う。
仲間を見つけた、という 心の声が聞こえてきそうな 満足気な顔だ。
桃瀬らん
ちらりと威榴真に視線を送ると はっとしたように場を 仕切り直し始めた。
紫龍いるま
桃瀬らん
耳ざとく気づいてしまったものの下手にまぜっ返しても空気が 悪くなるだけだろう。
私は聞こえなかったふりを 決め込み平べったい笑顔を 貼り付けて見せる。
桃瀬らん
威榴真の言葉ではないが 実際に作品を見ることで 印象も違ってくるかもしれない。
余計なお世話だと知りつつ どうしても澄絺に美琴の良さに 気付いてもらいたかった。