可愛いあの子はずっと窓の中 ー3.花の名ー
Eto
Yuan
準備…? まだ朝の7時じゃないか、何か予定が入っていただろうか。 寝起きゆえ、体が重い。 もう少し寝ていたかった、などとは言えまい。
Tattsun
Eto
Yuan
Eto
Yuan
Yuan
そう誤魔化したものの、明らかに声が空回りしているのは自分でも十分に分かっていた。
Tattsun
Yuan
Eto
Yuan
Yuan
Tattsun
お昼ご飯奢りだけは真面目に勘弁だ。 この2人見た目の割にめっちゃ…いや、フードファイター並に食べるんだよ!!
根こそぎ金を抜かれた自分の財布を想像し、鳥肌が立った。 何よりも、この2人の奢りは怖い。 だったらめんどいで有名な卒論とかいうものを書いた方がマシだ。
Yuan
集合時間3分前に俺たちは到着した。 じゃぱぱとなおきりさんは予定時間よりもっと前から、せっせと花壇の整備を進めてくれていたそうだ。 ((ありがたい。
Naokiri
Japapa
Yuan
Eto
Yuan
俺たちの大学は強制的に街の景観を良くする活動をさせられる。 ゴミ拾い・花壇や木の整備など環境系で別に、嫌ではない。 ただ、朝が早いのが嫌なだけで…
Japapa
Tattsun
Eto
Naokiri
Eto
Yuan
ここの花壇も随分雑草が生えたな、と時の流れを感じながら草取りに励んだ。 軍手を忘れると、手に草の匂いがついて気持ち悪くなるから、軍手は必須だ。
間違えて花を引っ張らないように、なるだけ慎重に雑草だけを根元から引き抜いた。
Yuan
秋でこの暑さとか…日本の気象はバグが多くないか? そう思って空を見上げると、秋特有のどこまでも続いていそうな高い、澄んだ空が広がっていた。
風もなく、穏やかな天候。 綿菓子のような雲たちは少しづつ進んでいる。 なんだか夢現になってきそうだ。 この日差しが無ければな!!!
Yuan
看護師
Mofu
Mofu
看護師
あれからというもの、看護師さん達に時間がある時はこうして、外に出ている。 僕を担当する先生は 『外の新鮮な空気を沢山吸って、お日様に当たるのはとてもいい事だよ』 と言っていた。
思っていたより外は綺麗だし人が沢山居て、なんだか普通に生活しているような気分になれる。
それに…
あの人を見かけるかもしれないから。
看護師
看護師
Mofu
看護師
Mofu
看護師さんは急ぎ足で院内へと戻って行った。 所々、抜けているところが自分の母親と重なって、親近感を覚える。
Mofu
こんな日はいつもより花壇が綺麗だろうな。看護師さんが戻ってくるまで花でも見てようかな。
1人で、車椅子で移動することなんてへっちゃらさ。 ハンドリムに手を掛け、前方へと回した。僕の力じゃ全然進まないけれど、自分だけで外を出歩いている。 それだけで楽しかった。
Mofu
花壇まであと少し、という所で誰かがいることに気がついた。 1人で草取りをしているようだ。
Mofu
その大きな背中が誰のものかわかった途端、己の心臓が高鳴り始めた。 咳き込んで苦しいときの動悸ではない。 初めての感覚だ。
花を見るふりして近づいてみようか。 そしたら、こちらに気づいて話し掛けてくれるかもしれない。 そう思ってまた進もうとした
が、
Mofu
少しの段差にタイヤが絡まって、大きく転倒してしまった。 あまりの勢いに車椅子から投げ出されてしまった。
どうしたものか…
Yuan
草取りが終わったらたっつん達か、えとさん達の手伝いにでも行こう。 そろそろ、1人は寂しくなってきたぞ。
まくった袖で額を拭い、再び雑草と向き合った。
うわあッッッ!!!
Yuan
とんでもない音と、男の子の叫ぶような声を聞き、後ろを振り返った。
車椅子が倒れ男の子が、まるで投げ出されたように倒れ込んでいた。 立ち上がろうとしているようだが、地面に手を付いただけで体全体を起こすことは出来ていなかった。
Yuan
Yuan
本能的に『助けなきゃ』そう思い、男の子の元へと一目散に駆けつけた。
Yuan
Mofu
この子…
Mofu
そう言いながら、顔を上げた男の子。 それはもう、絵に描いたような綺麗な顔つきで、触れるのが勿体ないような気がしてほんの一瞬、手を伸ばすのを躊躇った。
看護師
Mofu
看護師
見惚れて何も出来ないでいた自分が急に情けないような気がしてきた。 慣れたように男の子を抱え、車椅子に乗せようとしていた。
Yuan
看護師
倒れた車椅子を起こし、男の子をそっと座らせた。 ほんの一瞬触れた体は折れてしまいそうなほど薄かった。
ガラスをはめ込んだみたいな、透き通った眼差しで俺を見て 『ありがとうございます』 、そう言った。
まさか、初めての会話がこんな始まり方だとは…
看護師
看護師
Mofu
看護師
Mofu
Mofu
年相応とは思えない丁寧な言葉遣い。 驚いただけなんて、大人に気を遣いすぎじゃないか? 俺だったら、あんな転び方したら痛くなくても喚き散らかしちゃうよ。
看護師
Mofu
Yuan
そう言うと少年は、ふっと笑みを浮かべた。 また、食らいつくように見つめてしまう。
Yuan
Yuan
Mofu
Mofu
Yuan
覚えていてくれた!! という感動が先走り、手を強く握ってしまった。 あ、とも思ったが振り払われたり、嫌な顔をされなかったので、離さないでおいた。
Yuan
Yuan
Mofu
Mofu
Yuan
Yuan
沈黙の予感がして、咄嗟に自己紹介をした。何の面白みのない自己紹介だったけど、それが今の限界だった。
Mofu
Mofu
Yuan
Mofu
Yuan
自分でも何を言いたいか、正直分からなかった。とにかく、なんでもいいから褒めたかった。 いつの間にか暑かった事も忘れていて、汗が引いていく涼しさだけが足跡を残していた。
それから、数分だけもふくんと話をした。
一人っ子で 心配性なお母さんがいて 病室は〇〇〇号室で 実は高校生だとか 色々教えてくれた 正直、中3ぐらいだと思ってた…
看護師
Mofu
Yuan
Mofu
Eto
Naokiri
Yuan
雑談に多く時間を取ってしまったが、自分の仕事はしっかりこなしてある。 花壇の花達も、心なしか先程より綺麗な気がする。
Eto
Yuan
Eto
Yuan
Naokiri
Eto
Yuan
Naokiri
Yuan
Naokiri
Eto
看護師
Mofu
看護師
看護師
Mofu
Mofu
Mofu
看護師
看護師
『ろまんちっく』か… よく、恋愛モノの小説とかドラマとかで聞く言葉だ。 なんとなく想像していたが、こういう事を指すのか…
恋愛なんか、僕には一生無縁だろうな。 恋愛をしたいと思う訳では無いが…人並み程度に、普通の人のように、 誰かを好いたりしてみたい。
きっと、そんな願いが叶う前に消えてしまうけれど。
Mofu
看護師
看護師
最後に、病院の患者以外の同年代と話したのはいつだろう。 小学校低学年の頃じゃないだろうか… 小学校も、殆ど行ってないけれど…
十数年生きてきて、病院の外に居たのは二,三年程だろう。 勉強も運動もろくにしたことが無い。 小学生の勉強程度しかできない。 コミュニケーションの取り方もここ数年でやっと分かってきたぐらいだ。
こんな人間が、外の世界で生きられるのだろうか。 治ってしまったら もう、居場所は無くなってしまうんじゃないだろうか。
看護師
看護師
Mofu
Mofu
看護師
看護師
看護師
Mofu
きっと… ずっと、独り。
そう、ずっと独り。
海風を知ることもなく。
ひとつの花の名前も覚えることもなく。
人に名前を呼ばれることも無く
黄昏時の儚さも 満月の眩しさも 新生児の肌の温もりも 何もかも知る前に。
独りで朽ちて行く。
叫びたいほどの孤独に溺れて。
朽ちて行く。
コメント
8件
う"わあああああッッッッッッ!!!!てと様の新作だああああ!!!😭😭😭しかもめちゃくちゃ好きな連載の続きが出るなんて…!!!✨✨ 見るの遅れてしまいました本当にすみません…。次は絶対すぐ見ます! あぁ…yamf尊い…😭😭ほんと今回のお話も最高すぎます!! 最近温度の変化がすごいので、てと様もお体に気をつけてくださいね!!
ずっと前の連載を作り直すの楽しい。 現在進行中の連載を書くのは、精神的に参ってくる…ネタが尽きがちです。 😢
それって私ですか?(勘違いだったら恥ずかしい)