一覧ページ

なみだのおと

第5話 - あめのおと

2020年11月03日

#恋愛

#三角関係

#兄妹

#高校生

#青春

#切ない

水玉璃

きっかけは何だったかわからない。

最初からそうだったわけじゃなく、俺だってそんなもの⋯⋯。

羽沢鳴

望月

望月涙

⋯⋯なに？

羽沢鳴

何で文化祭の準備しないわけ

望月涙

羽沢だっけ

羽沢鳴

前の席の名前くらい覚えろよ

望月涙

悪い、で、何だっけ

羽沢鳴

お前が放課後に真っ先に帰るからうちの班の仕事が滞ってるんだよ

望月涙

⋯⋯そう

羽沢鳴

⋯⋯そう、じゃなくてさ

望月涙

じゃあ持ち帰ってやるよ。
何を作ってるんだっけ

羽沢鳴

だから──

望月涙

なんだよ、
やることはやるよ

羽沢鳴

お前なあ！

望月涙

そういう奴だっているだろ、
迷惑かけたのは悪かった

望月涙

だから持ち帰ってやる
分配は任せる

望月涙

腹立つなら倍でもなんでもやる、
何が悪い？

羽沢鳴

⋯⋯

望月涙

⋯⋯何が悪い？

羽沢鳴

性格が悪い

望月涙

は──

羽沢鳴

用事があるなら仕方ない。
班のやつらもそう言ってる

羽沢鳴

体調が悪いのも仕方ない。
元気なやつが働けばいい

羽沢鳴

でも説明をしろ、
弁明をしろ

羽沢鳴

何で周りが何でもかんでも
察してやらなきゃいけない

羽沢鳴

何でそれが当たり前なんだ

羽沢鳴

お前が一言いえば済むんだ

望月涙

⋯⋯厳しいな

羽沢鳴

当たり前だ

羽沢鳴

次にお前と同じ班になる奴らはお前のこと許してくれるか分からないんだぞ

羽沢鳴

甘えんな

羽沢鳴

自分のためにも、
もっと言い訳しろよ

羽沢鳴

さては望月、
お前末っ子か？

望月涙

まあ末っ子だけど

羽沢鳴

やっぱりな

望月涙

なんでそんなに
突っかかってくるんだよ

羽沢鳴

お前と仲良くなりたいからに決まってるだろ

望月涙

は？

羽沢鳴

班のやつら皆、ていうかほぼ女子がだけど、お前とお近付きになりたいの

羽沢鳴

調子乗るなよ、
顔がいいからって

望月涙

⋯⋯

羽沢鳴

⋯⋯

望月涙

羽沢は可愛い顔だよ

羽沢鳴

⋯⋯喧嘩売ってんのか

望月涙

いや、ごめん、
理解が追いつかなくて

羽沢鳴

今日はどうすんだ？
文化祭の準備

望月涙

あー⋯⋯

きっかけは何だったかわからない。

望月涙

家の用事があるんだ、
明日でもいいかな

最初からそうだったわけじゃなく、俺だって⋯⋯。

羽沢鳴

分かった、
今日は任せといてな

俺だって、

こんな不毛な恋をしたかったわけじゃないんだ。

────

弓原凛

──くん、
おい、望月くん

望月涙

⋯⋯⋯⋯

弓原凛

もう放課後だぞ、
部活動も終わる時間だ

望月涙

弓原か⋯⋯

弓原凛

早く帰りなさい

望月涙

鳴を見なかった？
待ってたんだけど⋯⋯

弓原凛

羽沢くん？

弓原凛

聞いていないのか？

望月涙

なにを？

弓原凛

あー⋯⋯

弓原凛

彼は用事があるらしい。
もう帰ったんじゃないか？

望月涙

ふうん

弓原凛

君も早く帰れよ

望月涙

ああ、お疲れ様、
剣道部大将

弓原凛

大将っていうな、平部員だ

望月涙

雨か

昇降口には疎らに人がいる。部活が終わった連中だ。

雨が止むのを待っているのか、迎えを待っているのか。

望月涙

あ

その中に知っている顔を見つけた。声をかけようか迷う⋯⋯。

羽沢音

⋯⋯

望月涙

妹ちゃん

羽沢音

ぁ⋯⋯望月さん

望月涙

⋯⋯雨宿り？

羽沢音

はい

望月涙

部活終わり？

羽沢音

⋯⋯はい

望月涙

何部？

羽沢音

料理部です

望月涙

ああ、ぽいね。
なにを作ったの？

羽沢音

今日は⋯⋯何も。
献立をたてただけで

望月涙

そっか

羽沢音

来週は、マカロンを⋯⋯

望月涙

いいね、女の子らしくて

羽沢音

⋯⋯

望月涙

⋯⋯

羽沢音

⋯⋯

望月涙

あのさ──

羽沢音

は、ぃ

望月涙

──この前、

望月涙

この前、見ちゃったよね

羽沢音

⋯⋯

望月涙

ありがとう。
鳴に内緒にしてくれて

望月涙

嫌なもの見せて⋯⋯
ごめんね

羽沢音

⋯⋯

望月涙

男同志だし、
気持ち悪いよね

羽沢音

鳴は──

望月涙

鳴は知らないよ、何も

羽沢音

⋯⋯辛く、ないんですか？

────

望月涙

辛いよ

羽沢音

何、で

望月涙

何でだろうね、
友達になったきっかけは覚えてるんだけどなあ⋯⋯

羽沢音

⋯⋯

今日の彼女は無口だ。いつも以上に⋯⋯。

内緒にしてほしい、その願いに彼女は静かに頷いた。

でも──。普通に考えたら気まずいよね。気持ち悪いよね。

羽沢音

あの

望月涙

⋯⋯うん？

羽沢音

また遊びにきてください

望月涙

──いいの？

羽沢音

楽しかった、から、
また遊んでください⋯⋯

望月涙

⋯⋯行くよ

羽沢音

はい⋯⋯

望月涙

妹ちゃん

羽沢音

私！⋯⋯帰ります

望月涙

あ、うん

彼女は雨の中に足を踏み出した。

望月涙

あ──

望月涙

妹ちゃん！

羽沢音

⋯⋯

望月涙

俺の傘持っていって

羽沢音

え、傘、あったの？

望月涙

ごめん

望月涙

君と話がしたくて、
ないフリしてた

彼女の頬が、みるみる赤く染まる。

羽沢音

⋯⋯借ります

望月涙

どうぞ、
また遊びに行ったとき返して

羽沢音

返しませんっ

望月涙

え──⋯⋯

眉を潜めながら口を尖らせる。

その怒り方が、あの日の鳴に似ている気がした。

この作品はいかがでしたか？

0件

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう！

水玉璃

プロフィール

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい！がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。