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コップはあの光景を忘れられずに、なぜか頭の中でずっと再生されてしまう。 コップは大人におぶられながら、大人が走っているときの強い振動をも忘れていた。
するといつの間にか見慣れたいつもの施設に着いていた。
中に入ると、
「え、あ、た、ただいま…」
コップは生まれて初めてのただいまを言った。
今まで外に出た事がなかったから。
扉の前には見慣れた大人達。 皆、涙や鼻水をだらだら垂らしている。
「コップ!!!良かった…無事に帰ってきて…」
大人におんぶされているコップに、ぐいっとくちゃくちゃな顔を近づける。
「もう勝手な事しないでよね…!!皆でコップの事探してたんだから!」
「うわあああ、コップうううう」
心配してくれる大人達が同時に一斉に話しかけている。
もちろん5歳児には全て聞き取れるはずもなく混乱している。
なんだかコップはひょろひょろと力が抜けて、
床に倒れてしまった。
重い瞼に必死に抵抗しながら大人達皆の顔を見た。
(あ…みんな…ごめんね…かってなこと…しちゃ…って…)
罪悪感や皆の不安な心が、小さな体にどっしり重くのしかかる。
気絶するように、コップは眠ってしまった。