舞姫side
今日は新しい方のバイト先の給料日。 時給高いと良いなぁ。私頑張ったから。 あーあ、早くお金貯めて逃げなきゃだなぁ。
店長
はい、今日は給料日ですよ。
名前を呼ぶから一人一人来てくださいね。
名前を呼ぶから一人一人来てくださいね。
店長
〇〇さん、□□さん、
△△さん、望月さん。
△△さん、望月さん。
望月舞姫
はい。
店長
貴方の働きっぷり、良かったわ。
これからも頑張ってちょうだいね。
これからも頑張ってちょうだいね。
望月舞姫
………はい!ありがとう御座います店長!
望月舞姫
でも、これ……。給料、
働いた分とあってないですよ。
働いた分とあってないですよ。
店長
あら?そうかしら?
望月舞姫
減給処分を受ける様な
振る舞いはしてない筈ですが。
振る舞いはしてない筈ですが。
店長
………望月さん、別室で話しましょうか。
別室で、かぁ……。 まぁーしと契約した時の事思い出すなぁ…。 あの時は何がなんだか分かんなくて、 心が苦くて苦くて仕方なかった。
望月舞姫
はい。分かりました。
店長
さて、それで?どうして
減給なんてされたと思う?
減給なんてされたと思う?
望月舞姫
全然分からないんですけど。
私何かしちゃいましたか?
私何かしちゃいましたか?
店長
………あのねぇ、望月さん。
此処は私の愛のお城なの。
此処は私の愛のお城なの。
望月舞姫
愛のお城、ですか。
店長
ここにいる従業員はみーんな!
私が「愛して」あげてるのよ!
私が「愛して」あげてるのよ!
望月舞姫
愛してあげてる、
店長
私はこのお城の女王なの。女王の
私が愛せない子はいらないのよ。
私が愛せない子はいらないのよ。
ドロドロと、苦い物が私の心を 蝕んで行く。やばい、このままじゃ 駄目になる。どうしよう。
望月舞姫
………店長、分かりました。
なら今日限りでここのバイトを
辞めさせて頂きます。
なら今日限りでここのバイトを
辞めさせて頂きます。
店長
そう……。じゃあ明日から来なくていいわ。
望月舞姫
はい。給料もいりません。
他のバイト探すんで。
他のバイト探すんで。
航side
浦田航
ありがとうございましたー。
次のお客様どうぞー。
次のお客様どうぞー。
望月舞姫
っ、せんぱい、!
浦田航
えりるん!?
なになに、どうした?
なになに、どうした?
望月舞姫
ちょっと、新しい方の
バイト先でトラブルあって。
バイト先でトラブルあって。
望月舞姫
辞めてきちゃいました。
走って来たのか、肩で息をしながら 呼吸を整えていたえりるんは、 顔を上げて引き攣った笑顔を浮かべた。
浦田航
Peopleだっけ?へー。
深くは聞かないけど……。
深くは聞かないけど……。
浦田航
出勤してくれたばっかで悪いけど、
疲れてるみたいだし、今日はもう休みな?
俺と志麻くんでも店全然回せるからさ。
疲れてるみたいだし、今日はもう休みな?
俺と志麻くんでも店全然回せるからさ。
望月舞姫
そう、ですか……。
ありがとう御座います先輩。
ありがとう御座います先輩。
浦田航
うん。あ、今日のバイト終わり
家寄っていい?久々に
坂田に会いたくなっちゃって。
家寄っていい?久々に
坂田に会いたくなっちゃって。
望月舞姫
あはは、はい!是非来てください!
浦田航
ん、じゃあまた後でね。
望月舞姫
はーい!
バイバイ、と薄ピンクのネイルが 施された手を振るえりるん。 彼女に手を振り返してから、接客に戻る。
浦田航
………大丈夫なのかな、
舞姫side
ガチャンッ
望月舞姫
ただいま~、さかたん?
せんちゃん?帰ったよ~?
せんちゃん?帰ったよ~?
折原清良
ん、おはようえりちゃん。
坂田明
おはよー!
望月舞姫
ふふ、二人ともおはよう。
お知らせなんだけど、バイト終わったら
今日うらたさんうちに来るみたい。
お知らせなんだけど、バイト終わったら
今日うらたさんうちに来るみたい。
坂田明
ほんまに!?
折原清良
志麻くんは?
望月舞姫
んー、分かんない。でも多分
一緒に来るんじゃないかな?
一緒に来るんじゃないかな?
望月舞姫
二人とも今日は何食べたの?
折原清良
白菜と豚バラのミルフィーユ鍋。
白菜余ってたから俺が作った!
白菜余ってたから俺が作った!
望月舞姫
そう!一里ちゃんには
何食べさせた?
何食べさせた?
折原清良
俺らが作ったのじゃ一里ちゃんの
口に合わなそうだったから、
坂田と一緒にハンバーグ作ったで!
口に合わなそうだったから、
坂田と一緒にハンバーグ作ったで!
望月舞姫
そう、ありがとうねせんちゃん。
坂田明
センラが作ったミルフィーユ鍋
美味しかった~。まだ残りあるから
えりるんも食べてみてほしい!
美味しかった~。まだ残りあるから
えりるんも食べてみてほしい!
望月舞姫
ふふっ、じゃあ頂こうかな。
良かった、この二人と話すだけでも 心の中のドロドロが溶けて 無くなっていく。あぁ、幸せだなぁ。
望月舞姫
私、一里ちゃんとお話してくるね。
望月舞姫
今日朝しか一里ちゃんと
話してないから……。
話してないから……。
折原清良
うん!いってらっしゃーい。
望月舞姫
鍵置いとくから、うらたさん
来たら玄関まで迎え行ってあげてね~。
来たら玄関まで迎え行ってあげてね~。
坂田明
はーい!
望月舞姫
一里ちゃーん?一里ちゃん?
槻川一里
えりちゃん…?えりちゃん!
おかえりなさいっ、えりちゃん……。
おかえりなさいっ、えりちゃん……。
望月舞姫
一里ちゃん?どうしたの?
槻川一里
あのね、あのね?頭が、
ぐりゅぐりゅってなって、
苦しくて、怖かったの…!
ぐりゅぐりゅってなって、
苦しくて、怖かったの…!
望月舞姫
一里ちゃん……?
槻川一里
うぅ、かなた、さん………
望月舞姫
っ、
どうしよう。一里ちゃんが 昔の記憶を思い出して来てる……? どうしよう、やばいやばいやばいやばい。 苦くて苦くて苦くて堪らない。
ピーンポーン♪
望月舞姫
っ、はーい。
望月舞姫
誰です……か、
相川真冬
あっ、舞姫ちゃん……!
夜凪遼
望月さん。家ん中、
入らせてもらって良いですか。
入らせてもらって良いですか。
望月舞姫
………………
やばい、どうしよう。 私と一里ちゃんの、甘くて幸せな、 ハッピーシュガーライフが終わる。