ハル
瞳さん?

ハル
瞳さんじゃありませんか?

瞳
あら

瞳
あなた、ハルさんね?

瞳
ずいぶんお久しぶりじゃない

瞳
お元気?

ハル
私は相変わらずですけど…

ハル
フフフ

ハル
今日は特別元気なんです

瞳
あら!

瞳
それは良かったわ

瞳
何か良い事があったのかしら?

ハル
実は…

ハル
ウフフ…

ハル
そうだ!

ハル
瞳さん、少し お時間あります?

瞳
え?

瞳
えぇ

瞳
まぁ、少しなら…

瞳
どうかなさったの?

ハル
いいこと聞いちゃったんです

ハル
ウフフ

ハル
私、相変わらず彼氏ができなくて

ハル
周りにいるのは

ハル
くら〜い、じめ〜っとした
オカルトヲタクばかりだし…

ハル
まぁ、
ヲタクは私も同じですけどね…

ハル
ところが!

ハル
オカルト仲間から

ハル
最近密かにウワサになってる

ハル
超ー超超、超絶イケメンに

ハル
会えるスポットがあるって聞いたんです!!!

瞳
まあーー!

瞳
超超超絶、イケメンですって?

瞳
まあ〜〜‼︎

瞳
善は急げ!

瞳
ささ、行きましょ!

瞳
ここから近いのかしら?

ハル
ひ、瞳さーん ……

ハル
もう!

ハル
場所も知らずに行っちゃった…

ハル
待ってくださーい!!

しばらく歩いて、着いたところは
町堺に流れる川にかかる橋
川は、ごうごうと音を立てている
ハルはその橋の中心で立ち止まった
瞳
わりと近いのね!

ハル
そうなんです!
しかもここ、有名な心霊スポットでもあるんです!

ハル
えーっと… 確か、
川底に女性の霊が見えるとか…

瞳
イケメンと女性の霊ね…

瞳
クフフフ…

瞳
ところで、こんな場所に本当に
超絶イケメンが現れるの?

瞳
イケメンも霊も見当らないわ?

ハル
ええ…
確かに、誰も通りませんね?

瞳
ちょっと、ハルさん⁈

瞳
あなた

瞳
どーなってるの?

ハル
え?

瞳
ここまで来て、
まさか、まさか
イケメンに会えないなんてこと……

ハル
ちょ、ちょ!

ハル
瞳さん、目!真っ赤にして怒らないでくださいよぉ!

ハル
怖いなぁ

瞳
早く、イケメンを、出しなさい!!

ハル
ヒィィィィ!

ハル
迫ってこないで‼︎

ハル
ちゃんと手順があるんですっ!!

瞳
手順ですって?

ハル
そ、そ、そーですよ、

ハル
イケメンを呼び出す合図みたいな?

ハル
ちゃんと教わってきてますから

瞳
なら、さっさと始めてちょうだい

ハル
わ、わかりましたよ!

ハル
もー、怖いなぁ

ハル
っん! んん!!

ハル
それでは、はじめます…

そう言うとハルは
橋の手すりを恐る恐る乗り越えて
人ひとりやっと立てる橋のヘリに立ち
両腕を大きく広げ
大きく息を吸った
瞳
ゴクリッ

瞳
クフフフ…

ハル
すーーーーっっ…

ハル
あたしと!!

ハル
死んでーーーー‼︎‼︎

瞳
…… まっ!

瞳
クフ、クフフフフフフ…

瞳
なんだか、霧が出てきたわね…

瞳
グフ

瞳
うーん…
ハルさんの隣に
なにか見えるわ

霧とともに空気が湿ってくると
いつの間にか
ハルの隣に、ぼんやりとした人影が
あらわれだした
瞳
あ!

瞳
霧が、晴れていく…

瞳
ま!!

瞳
まああああ‼︎‼︎

ハル
は!

ハル
あなたは…

ハル
わ、わあぁ…

現れたのは
背の高い、色白の男
透き通るような美しい顔
潤んだ瞳でハルの目を覗きこんでいた
瞳
で!でた!!

瞳
でたでた!
でたわよっっ!!

瞳
まあァァァア‼︎‼︎
なんて、なんてイケメンなのかしら
スラっとして、シュッとして、ウルッとして、フワッといい香りが…
クンクン…
はぁぁぁァァァア……

瞳
この世のものとは、思えないわ…

瞳
グヘヘへへへ

ハル
あの、あの、

ハル

ハル
は、はい!

ハル

ハル
そ、そういうわけでは…

瞳

瞳
ん?

瞳
ハルさんの声しか聞こえないけど?

瞳
何を話しているのかしら?

ハル
ええ!
わかりました。

瞳
ま!!
手なんかにぎっちゃって!!
何の話?

瞳
あの方の声が、ちっとも聞こえないわ?…

瞳

瞳
あら…

瞳
イケメンの素敵な香りが
強くなっていく…

瞳
っはぁぁぁぁ〜

瞳
いい香り…

瞳
あ、あら?

瞳
赤い……涙が……

瞳
…

瞳の目から赤い涙がこぼれた
次の瞬間
ハルは音もなく川へと落ちていった
瞳
…… あら?

瞳
ハルさん?

瞳
………

瞳
飛び降りちゃったのかしら?

瞳
あら??

瞳
イケメンもいないわ?

瞳
………

瞳
どーなってるわけ?

瞳
ちょっとおお

瞳
ハルさーーーーーーーん‼︎‼︎

瞳
どうしてーーーーーーーーーー??

瞳
ズルイじゃないのおおおお‼︎

瞳
私まだ、イケメン、近くで見てないのよおおおおおおーーーーーー!!

瞳の叫びは
川の流れの爆音にかき消された
ハルの姿も、男の姿も
どこにも見当たらない
瞳

瞳
仕方ないわ

瞳
やるしかないわね

瞳
…… よいしょ!

瞳
すーーーーーーっっ!

瞳
あたくしとーーー!!

瞳
死んでちょうだーーーーーーい‼︎‼︎

瞳

瞳
キタキタ…

瞳
グフ

瞳
グフフフフフフフ‼︎

瞳
スーーーーッッハーーーーーー!

瞳
あの方の香りが…

瞳
クフフフ… 霧がでてきたわ…

瞳
ああ!

瞳
見えたわ!

再び立ち込めた霧が晴れるとともに
青白い男が浮かび上がってきた
瞳
くうぅぅぅぅ…
なんて美しいのかしら

瞳
頭の中に声がひびいてくるわ

瞳
声まで美しいのね…

瞳
えぇ!えぇ!
わたくしがお呼びしましたの

瞳
え?

瞳
あなたと?

瞳
まあ…

瞳
そんな、ウルウルの瞳で

瞳
見つめられたら、あたくし…

男が瞳の手を握った時、
瞳の目から、
赤い涙がこぼれた
瞳
川の底に

瞳
たくさんの女達が見えるわ

瞳
……

瞳
ハルさんの姿も見えるわ

瞳
みなさん、とても
恨めしい顔で
あたくし達をみつめてる…

瞳
グヘッ、グヘッ

瞳
あなたと一緒に死んでいった
お嬢さん達なのね…

瞳
イヒひひひひひひひひひ!

瞳
クラクラしてきたわ…

瞳
あなた、わたくしと

瞳
ずっと一緒に

瞳
いてくださるの?…

瞳
そう、

瞳
それなら

瞳
あたくし、あなたを

瞳
離さないわよ…

瞳
いいでしょう?

瞳
ぐ

瞳
ググ

瞳
グヘッグヘッ

瞳
キーーーーーッキッキッ‼︎

瞳
キャア!
細いのね!

瞳
私の腕の中にすっぽり入るわ!!!

瞳
まずは、ここから
開放してあげなきゃね⁉︎

瞳
よいしょっ!

ギャーーーーー!!!
グギギギギ‼︎‼︎
ヒィィィィイイいいい‼︎‼︎
瞳
ハーーーッハッハッハッ‼︎‼︎

瞳
ふんッ!!

瞳
ああん!逃げないで!!

瞳
すぐにちぎってあげるから

瞳
ほらほら

瞳
あたくしと一緒にいたいんでしょ?

ギイやアァァァァァア‼︎
アァァァア
ア……
……
瞳
…… ふーーー

瞳
さ、とれた

瞳
行きましょう

瞳
あなたにべったりくっついていた
お嬢さん達の血で汚れてしまったわ

瞳
でも

瞳
血まみれのあなたも

瞳
すごく素敵よ

瞳
ずーっと

瞳
一緒よ

ズルズル……
ズルズル、ズルズル…
男は引きずられ
大量の血の跡を残し
瞳は夜の中へ消えていった