誰もいない家の中で、おはようと小さな声で空虚な朝に挨拶を告げる。
僅かな光がこぼれるカーテンを開けると見えたのは澄んだな空でも輝く草花でもなく、花の柄がめいっぱい敷き詰められた磨りガラスだった。
その上に掛けられているキャラクターものの時計を見ると、時刻は正午を告げた所。
いつもの事なので気にせず、まだ仕事をしようとする電気毛布の電源を抜く。
足元を見るとまだ裸足だったので、朧気な意識で、がに股のように配置されたスリッパをやみくもに履いた。
シュッシュッという音をあげながらすり足で部屋の扉まで向かうが、たった二三歩だけなのにやけに頭痛が酷いのは昨日の夜パソコンとずっとにらめっこしていたからだろうと考察する。
部屋を出る前に振り返っていっそうすると、いつも見ている光が適度に差し込んだ床や机 ベッドの上に置かれたぬいぐるみは項垂れているようにも見えた。
部屋の扉を閉めて廊下を歩く
すると十二歩歩いた所で扉の取っ手が迎える
ヒタリと手を付けると、冷たいせいか先程までボヤボヤとしていた脳が少し起きた気がした。
扉を横にスライドすると、静かなリビングが現れた。
外から小さな子供達の和気あいあいとした声が家の中の私にまで聞こえてきて、まだ暗い部屋の中にいる事が危険かのように思える。
子供達の声に急かされるようにカーテンを開けると、夏に移り変わる最中の晴れた空がそこにはあった。
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