それはどこまでも優しく
温かい記憶だった.
◇
◇
今、僕の目の前で
一匹の老猫の寿命が
終わろうとしている.
桃白 陽太
桃白 陽太
僕はすみれの体に顔をうずめ
声を上げて泣いた.
頬を流れ落ちる涙が、すみれの
真っ白な毛に染み込んでいく.
僕のお母さんは僕が生まれてすぐに
交通事故で死んでしまった.
夕飯の支度をしている途中
味噌が切れていることに気づき
僕はお父さんに預けて
300m先のスーパーまで
駆けていった.
その帰り道、横断歩道に
スピードを落とさず
突っ込んできた車に
跳ねられてしまったのだ.
◇
僕が十歳になるまでは
お父さんが僕のために仕事を早く
切り上げて帰ってきてたけれど
十歳の誕生日を迎えてから
残業をするようになり帰りの時間が
徐々に遅くなっていった.
今では丸一日会えない日が
あったりもする.
◇
引っ込み思案で極端に口数が
少ない僕は、うまくクラスに馴染めず
放課後に遊んでくれるような友達は
おろか、一緒に休み時間を
過ごしてくれる友達すらいない.
◇
そんな僕とこの白い猫は
ずっと一緒にいてくれた.
この十三年間、苦しいとき
悲しいとき嬉しいときいつも
隣にいてくれたのはすみれだった.
すみれがいてくれたから
僕は孤独や寂しさに
押し潰されずに済んだ.
すみれは僕にとって何でも話せる
一番の親友であり
かけがえのない家族であり
また亡き母の代わりのような
存在でもある.
それなのに……
桃白 陽太
桃白 陽太
僕はすみれの体に顔をうずめたまま
小さな子供のように
わんわんと泣き続けた.
そうして涙を流しているうちに
泣き疲れ、いつの間にか
深い眠りに落ちていた.
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