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昼休み、俺は暖かな日差しを浴びながら机に突っ伏していた。
俺は妖怪が見える。 だから余計なものが見えないように、 こうやって毎日机とにらめっこしているというわけだ。
レイナ
こいつは幼馴染の鳥居レイナ。
ユウスケ
レイナ
レイナは俺のはねた髪をつんつんといじりだした。 ふてくされた顔が目に浮かぶ。
顔をあげてレイナのほうを見ると、 同時に「そいつ」も視界に入ってきた。 レイナにはやっぱり見えてないようだ。
ユウスケ
レイナ
ユウスケ
俺はレイナの艶やかな長い髪を触るふりをして、 レイナの肩に乗っていた一つ目玉の妖怪をつまみ上げた。
ユウスケ
レイナ
トイレに着くと突き当たりの窓を開け、 一つ目玉の妖怪を窓の淵に置いて一言告げた。
ユウスケ
俺の言葉を理解したのか、 そいつはこくんと頷いて窓の外に逃げていった。
レイナは俺に妖怪が見えていることを知らない。 だからこうしてさりげなく引き離すしかない。
俺の家系は代々陰陽師だったらしい。 ちなみに、俺の両親は全く妖怪が見えない。
教室に戻るとレイナが俺の席で机に突っ伏していた。
ユウスケ
俺がそう聞くと、レイナは顔を上げて笑顔で答えた。
レイナ
ユウスケ
レイナ
レイナは頬を膨らませて、だるそうに席を立った。 その時、一人の女子が俺たちに近づいてきた。
ミサキ
びしっと敬礼を決めて話しかけてきたのは、 同じクラスの明星ミサキだった。 妖怪研究部、通称『妖研』に所属するオタク女子だ。
ユウスケ
ミサキ
嫌な予感が的中した。 俺は慌ててレイナのほうを見た。
レイナ
無邪気な笑顔ではしゃぐレイナを見て俺は怒りが込み上げてきた。 同時に明星ミサキの悪意のない表情にも虫唾が走る。
ユウスケ
俺は明星ミサキの手を掴むと、 レイナを置き去りにしてそのまま教室を出た。
ミサキ
戸惑いを隠せない明星ミサキを無視して、 人気のないところまでひたすら歩いた。
人のいない校舎裏に着くと、 俺はため息をついて明星ミサキのほうを向いた。
ユウスケ
ミサキ
ユウスケ
明星ミサキはまだわからないといった顔をしている。
ミサキ
ユウスケ
俺は言うことだけ言って教室に戻ろうとした。 するとすかさず後ろから声が飛んできた。
ミサキ
真剣なのが声でわかる。 俺は仕方なく話を聞いてやることにした。
ユウスケ
ミサキ
最近十代の女性が忽然と消える、いわゆる神隠しが起きている。 それはすぐにニュースになり警察が必死に捜査を進めているが、 消えた女性は誰一人見つかっていない。
明星ミサキはこれを妖怪の仕業だとみているらしい。
ミサキ
ユウスケ
ミサキ
つまり、封印が解けて悪い狐が出てしまった、というわけだ。
ユウスケ
ミサキ
それはそうかもしれないが、狐は特に厄介だ。
ユウスケ
ミサキ
それが本当ならかなり可能性は高い。 だけど、狐が何のために女性を攫うのか。
ユウスケ
ミサキ
さすが『妖研』なだけはある。
ミサキ
言われてみれば、晴れているのに雨が降っていることが何度かあった。
ユウスケ
ミサキ
狐は六匹、攫われた女性は五人、あと一人か。
ユウスケ
ミサキ
明星ミサキはまた敬礼を決めて一人走っていった。
放課後、明星ミサキはすぐ俺に駆け寄ってきた。
ミサキ
なんでこんなにテンションが高いのかはわからない。
レイナ
ユウスケ
レイナはあからさまに拗ねている。 それに追い討ちをかけるように明星ミサキが口を開く。
ミサキ
その言葉に驚いて、レイナは完全にそっぽを向いてしまった。
レイナ
ユウスケ
レイナは俺の制止も聞かず走って行ってしまった。
ミサキ
はあ、女心はよくわからん。
俺とミサキは早速家で作戦会議をしていた。 するとレイナの母親から電話がかかってきた。
レイナ母
ユウスケ
レイナ母
レイナが学校を出たのは十六時半、今はもう十八時だ。 さすがに帰ってないとおかしい。
ユウスケ
俺は静かに電話を切ったが、内心は全く冷静ではなかった。
ユウスケ
ミサキ
ユウスケ
俺たちは自転車で神社に向かった。 途中から階段を使い、必死に駆け上がる。 神社に着くと青い火の玉が六つ浮いていた。
ユウスケ
俺が叫ぶと、火の玉が激しく燃え上がり狐が現れた。
妖狐
目の前を見ると本殿の扉が開いていた。 そこに人影が見える。
ユウスケ
ミサキ
ユウスケ
俺は女性たちをミサキに任せ、狐の像に向かって走り出した。
ユウスケ
狐の像は本殿入り口の左右に三体ずつ置いてある。 ミサキには言い忘れていたが、俺には心強い相棒がいる。
俺は右の三体に札を貼ると思いっきり叫んだ。
ユウスケ
神社の階段を駆け上がってきたのは俺の相棒、犬のコテツだ。 コテツは札を貼った狐の像の前で吠えている。
妖狐
妖狐の天敵は犬だ。 かつて俺の先祖も飼い犬を使って、 妖狐を退治していたらしい。
コテツが守っている間に俺は左の像に走った。 後ろから追いかけてくる狐を振り払って、 無事に札を貼り終えた。
妖狐
妖狐たちの姿は消え、神社は静寂に包まれた。 本殿の扉を開けると、 中央で川の字に寝そべっている女性たちの姿があった。
ミサキ
ユウスケ
レイナも気持ちよさそうに寝息を立てていた。 とにかく、無事で何よりだ。
ユウスケ
ミサキ
すぐに警察と救急車が到着し、この事件は早々に幕を閉じた。
三日後の朝、レイナは元気に俺の家を訪ねてきた。
レイナ
俺の手を引いて、ご機嫌に鼻歌まで歌って、本当に呑気なやつだ。
レイナ
ユウスケ
俺が頭を撫でると、レイナは照れくさそうにお礼を言った。
学校に着くと、俺の席にはミサキがいた。
ミサキ
レイナ
レイナは頬を膨らませて俺の顔をまじまじと見つめている。
ユウスケ
レイナ
レイナは急に怒って、自分の席に座ってしまった。
やっぱり女心はわからん。