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10 - すべてを愛せる、ように

♥

850

2024年06月25日

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夏休み目前の憎い期末テスト… が迫ってる。

yanくん

期末ヤバい…

runa

大丈夫?ってるなもそんな大丈夫じゃないけど…

runa

どこわからないの?

体育祭からバタついてて中間は散々だった。だから期末で挽回しないとなのに

yanくん

まずは範囲から…

runa

え、範囲!?そこから?

範囲すら把握しておらず草しか生えない。

yanくん

るな一緒に勉強しよう…ダメだオレ今期無理だ

runa

じゃあ今日の放課後一緒に勉強しようかぁ

るなちゃーん

runa

なあにー?

runa

あとでね

yanくん

るなに向かって手を上げた。

  

 

呼ばれて輪の中に入るるなの横顔を目で追う。

楽しそうだなぁ…

なんてことない休み時間の風景だ。 クラスの女子たちと楽しく喋っている。

yanくん

いつもなんとなく目で追ってしまう。

 

"ちゃんと好きっていいなさい!!"

のあさん言葉が頭に浮かんだ。

 

yanくん

(言うつもりだけど)

yanくん

(やっぱりタイミングとか…考えたほうがいいのかな。シチュエーションとか)

なんとなくそんな雰囲気になったら言えばいいかなって思ったけれど

hrくん

ゆあんくん見過ぎじゃない?

yanくん

え?

etちゃん

るなのこと見過ぎ。

yanくん

ええ!?

二人に指摘された恥ずかしくなった。 無意識に目で追うレベルって…やばくないか。

yanくん

オレそんなに見てた?

hrくん

むしろ見てない時がないくらい。

yanくん

いや、ぼんやり考え事してて…

etちゃん

あっ、ん?

不意にえとさんが変な声を出した。 るなが他のクラスの女子に呼ばれている。

それからとことこと、オレのとこへ近づいてきた。

runa

えと、ゆあんくん。

runa

あそこにいる女の子たちが呼んでるよ?

ドア付近にいる女子二人組を指さした。

yanくん

(知らない…)

誰だよ、しかもるなの方をちらちら見ながら何か話している。 あまりいい雰囲気ではない。 思いっきり不快感を表した。

…さっきクラスの女子たちと話していた時と比べればるなの様子がおかしかった。

yanくん

なんか言われた?

runa

ううん何にも…それより、いってあげて。

…何か言われたな。隠しきれないくせに。 オレと目線を合わせようとしなかった。

yanくん

…行ってくる。えとさん

るなのことが心配で えとさんに声をかけた。

etちゃん

当たり前だよっ

etちゃん

しばいてきてゆあんくん!!

えとさんもるなの様子を察して怒っている。

hrくん

ちょっとえとさん

hrくん

…穏便にね

穏便…でももうすでに心の中は穏やかじゃない。るなに何を言ったんだ。

席を立ち オレを呼んだ二人に近づいていった。

連れてこられたのは人気のない校舎裏。

yanくん

で、何話って。

女子二人組、なにやら肘を突きあっている。要件があるならさっさと言って欲しかった。

この子ね、ゆあんくんのことが好きなの。

だからさ、考えてくれない?

…やり方が好きじゃない。

yanくん

何を

この子のこと

そもそもなんで当の本人が一言も喋らないんだよ。

いつも一緒にいるるなちゃんにも言ったの

yanくん

…何を?

るなの名前が出て殺気だった。 何かしたら容赦しない

だって付き合っていないんでしょう?なら

他にもいるゆあんくんの好きな子のことも考えてよって

yanくん

…は?

いつも一緒にいて、全然ゆあんくん他のこと喋ってないでしょう?

気が利かなさ過ぎなんじゃない?あのこ。

----

ふたりとも、いつも一緒にいるから…なかなか話せなくて…

るなは

違うるなじゃない。 オレがそばにいたくて自然と隣にいたんだ。それをるなだけが悪者扱いされていることに腹が立った。

るなちゃんかわいいけどね、なんかヒロくんやえとさんたちからも姫扱いされてて癪に触るっていうかさぁ

ヒロくんは校内でもかなりの人気があるし、えとさんも一部ファンクラブがあるほど男女から好かれてるとは

小耳に挟んだことがあるけれど

ゆあんくんなにか弱みでも握られてるの?あの子に---

みんなるなが好きで周りにいるのに

るなだけが悪く言われるのは

 

yanくん

…おい

----

ひっ!

オレのことを好きだという女子が悲鳴をあげた。

自分でもわかる、こめかみに青筋が立っているのを

yanくん

るなは何にも悪くない

yanくん

お前らの価値観と偏見にるなを当てはめるなよ…!!

あぁ、だから 俺はるなしか信じられない

だから必要以上に他の人とコミュニケーションを取ろうとしなかった。

なに、いきなり!!

yanくん

そもそもなぁ!!好きなら一人でぶつかってこいよ!!

yanくん

他人に言わせる告白なんて何一つ信じない!!

声を荒げる

はぁ!?なんなの逆ギレ!?

yanくん

るなに何を言ったか知ないけど…

yanくん

るなが傷つくようなら

yanくん

男だろうと女だろうと

yanくん

絶対に許さない…!!

 

ざり

一歩近づいた。 気迫がすごいのか、二人の顔は青ざめおののいている。

 

yanくん

オレらの"世界"に入ってくるな…!!

 

グッと睨んだ。

 

…チリ

チリチリ

空気が焦げる匂いがする。

今度やったらただじゃすまない。 上等だよ、いつでも受けてたってやる。

 

もう一歩近づこうとした、その時---

  

 

ur

何やってんの?

うりりん!

----

あっ…

ur

ほらほら予鈴なったから、急いで教室もどんなさい。

空気をぶち壊すかのようにオレたちの間に入ってきた養護教諭…"うり先生"

yanくん

----

…もういいよ、もどろう

う、うん

女子二人、怯え切った目をしていた。

しまった、やりすぎたか。 頭に血がのぼり言ったことを後悔した。

 

ur

おいコラ

yanくん

 

悪いなとは思うけど、この苛立ちを完全には抑えられなくて

キツイ目のまま先生を見る。 口を固く結び無言で抵抗した。

yanくん

…オレから話すことはないです。

yanくん

なので教室戻りま---

ur

こぉんの…馬鹿お前!!

yanくん

ぐわっ!!

背を向けた瞬間に後ろ襟足を掴まれた。

ur

一般人に向かって、しかも学校だぞ!?

ur

殺気立つんじゃねぇよ!!

 

掴まれたまま耳元大音量で説教された。

 

yanくん

だって!!

ur

だってもクソもない!!

 

ピシャリと言い放つ

あーやっぱこの人もこっちの世界の人なのかとぼんやり思った。

 

ur

ったく、なおきりさんは何を教育してきたんだ…

yanくん

なぁ!オレ戻る!!

ur

ダメだ!

ur

担当教科の先生には俺から言っとくから

ur

…話しがある。保健室こい!

yanくん

嫌だって!!話すことなんか何もない---

ur

だぁあ!!

ur

ごちゃごちゃうるさいっ!

 

ドス!

 

yanくん

…あ

…首の後ろに鈍痛を感じた。

手刀で突かれたらしい。 わかったのは、意識が遠のいていくなかだった。

 

 

 

yanくん

うっ…

首の後ろに痛みを感じながら だんだんと意識が覚醒していく。

yanくん

ってぇー…

体を起こし、周りを見渡した。

ur

…暴れるからだよ

先生がデスクから頬杖をついて じろりとこちらを見ている。

yanくん

…話ってなに。

仲良くする気もない。 ぶっきらぼうに質問した。

ur

お子様すぎる

いきなりふっかけられて腹が立った。

yanくん

…なっ!

ur

それ!

オレに向かってびしりと指をさした。

ur

頭に血が昇るの早すぎるだろ…

ur

特にるなのことは、なおさら。

yanくん

…っう

うり先生はデスクから立ち上がり オレに近づいた。

yanくん

るなのことを悪く言われるのだけは耐えられないし…

ur

あのな

ur

それ弱点ですって言ってるようなものだから。ちゃんと一呼吸おきなよ。

yanくん

?どういう…

ur

つまり

ur

若頭は『るなのことになると冷静な判断ができない』そういうことだ。

ur

思い出せよ、体育祭の時

ur

目的はお前だが、狙われたのはるなだった。

yanくん

…!!

ur

ここに来て、先生から事務職員、もちろん生徒の動きや背景を確認していたけど…

ur

…外からきた業者の一人、若頭のことを色々聞いてくるヤツがいたらしい

yanくん

…えっ
そんな奴いたの?

学校内でもヒロくんとえとさんがそばにいるから、何もないと思っていたけど。 そんな話は寝耳に水だ。

ur

特別講師?だったかな…それになりすましてたみたいだ。

yanくん

!?

確かにうちは外部から講師を招いて、講習を開いてる。 わかりやすくいえば、学校内で塾の授業を受けることができるシステムだ。

ur

さりげなく校内の情報を集めていた。
その時、るなのことを知ったらしい

ur

その講師の正体は情報屋だ。うちの組の保守派に流していたそうだ。

yanくん

そこまですんの…?

ur

そうだよ。
そこまでしてるんだよ。

ur

本気で桃虹組を…のあさんとゆあんくんを潰そうとしてる。

yanくん

そんな…

 

知らなかった。

もちろん道中は気をつけていたけれど まさか学校の中に入ってきて ここまで情報収集しているなんて

そんな手の込んだことをしてまで オレは狙われていたのか。

 

ur

大事なのは次だ。…るなが狙われたんだ。意味、わかるな?

yanくん

…っ

ur

天龍会の情報遮断は徹底している。るなが天龍会のボスの妹と知られているのはごく一部。

ur

ゆあんくんとこれだけ深く関わっている、るなだから…そこから情報が漏れる可能性は十分ある。

 

すなわち

天龍会でしっかり守られているるなが

オレの些細な行動で目をつけられて狙われる。そうしたらきっと芋ヅル式でるなと天龍会の関係がバレてしまう。

 

yanくん

yanくん

じゃあやっぱり

yanくん

るなのために離れないとダメなの?

難しいのかな。 普通の高校生活を楽しんで… そう送り出してくれたのあさん。

だけど普通の高校生のように… "普通"を望むのは。オレたちには無理なのかな。

ur

『距離を置く』
それができたら、一番ベストだな。

yanくん

…っ

ur

…でも、若頭の本音は?

yanくん

嫌だよ離れたくない。

無理だ

るなと離れたくない。

ur

なら守れ。

yanくん

守る…

ur

ずっと一緒にいられる方法は、若頭がるなを守り抜くことだよ。

ur

身を置いてる世界に、危険がたくさんあるから…そこから全部守ってあげろ。

yanくん

 

不思議だ。

反抗する気持ちは何にもない。 先生の言葉がスッと素直に心に入ってくる。

 

ur

もし

ur

同じ想いを打ち明けあったのなら、全力で守りきれ。

 

ur

…できるな?

yanくん

…もちろんだ!!

 

わかった。

 

いつ言おうとかどうしようとか

考えてる場合ではないこと 桃虹組の状況が思わしくないこと オレも危険な状態であること

…多分先生は

なおきりさんやたっつんに言われてオレに内情を教えたわけではない

あの二人は 頑なにオレに何も言わないから

こっそりと教えてくれたんだ。

 

ur

やるべきことは三つだ

ur

まずは強くなること。
若頭十分強いんだけど…力任せだから

ur

もう少し戦い方に種類があるといい。

オレはもう何も言わずに ただ黙って頷いた。

ur

そのニは、るなと話を…まぁこれはオレがとやかく言うことではないけど。

ur

その三は…もうちょっと青春しなよ。

yanくん

え、青春??

三番目にくるのは何かと身構えていたら…なんて?え?

ur

あんまり心開くなとか組からいわれてるんだろうけど…それじゃあ、ちょっと勿体無いわ

ur

もっと他の世界も見た方がいいよ

ur

高校三年なんて、いい時じゃん。

yanくん

…は

ur

もっと周りと絡んで遊んでこい

yanくん

それは…やっぱり卒業したら、そんなことできなくなるから、ってこと?

 

そしたら余計に寂しくないか。

楽しいことを思い出すのが辛くなるんじゃないかと、なんとなくるなたち意外とは距離をとっていた。

…そのほうが傷つかなくていいから

 

ur

違う、今が一番だからだよ!未来なんて考えないで、今を一番楽しむの!

ur

大丈夫だよ、若頭意外とみんなに好かれてるみたいよ?

yanくん

意外って…

確かになんだかんだと うちのクラスのみんなは優しい

ur

内情探りまくってるオレが言うんだから間違いないって

yanくん

…ありがとう

ur

素直だな

先生はにっこり笑って頷いた。

…笑顔、初めて見た気がする。

yanくん

なぁ

yanくん

一体何者なの?

ur

オレ?オレはね…

 

ur

じゃぱぱさんとのあさんの一番の味方でありたい

ur

影ながら応援する者…かな

 

yanくん

…姉さんとじゃぱぱと知り合いなの?

ur

ガラガラ…

runa

あのう…

runa

ゆあんくん…

オレの荷物を抱えたるなが、遠慮がちにドアを開き顔を覗かせた。

yanくん

るな

るながまだ少しよそよそしい

runa

もう保健室から帰りなさいって、担任が言ってたよ。だから荷物…

runa

あの、私今日はやっぱり帰って---

yanくん

え!?ちょ、

ur

るな

オレが何か言うのを遮って 先生がるなに声をかけた。

ur

ゆあんくん家まで送りな

runa

でも…

ur

保健委員だろ?側についてやって。

ナイスアシスト先生。 じゃなきゃるながこのまま帰る勢いだった。

runa

わかりました、じゃあ…

yanくん

runa

ゆあんくん、家帰ろう

yanくん

…うん、かえろ

ほっとしたような顔をしてる。 さっき言われたこと、まだ気にしてるのかな…気にしてるんだろうな。

 

誤解が生まれないように すれ違いが起きないために

 

早くちゃんと伝えよう。

 

これからも 小さな幸せを積み重ねていけるように

 

yanくん

(…あ、せんせ)

保健室を出ようとした時 先生の方へ振り返る

先生も何か作業しててオレに背を向けていたらしい、でもタイミングよく お互い振り向いた時だった

ur

yanくん

…うわ

やわらかな目尻 口元は綺麗な弧を描く…

どんな表情でも、絵になる人っているんだな。男のオレでも、思わずにはいられなかった。

yanくん

…かっこよ

runa

yanくん

yanくん

(困ったな)

るなとの帰り道

お互い会話がない…

yanくん

(うーん)

さっきのこと、気にしなくていいよ なんて声をかけたら違うといわれそうだし。

かといってどうしたの、何かあったの 質問するのも何か違う。

runa

yanくん

(もううち見えてきちゃったじゃん)

でも

何か話さないと

  

 

runa

ゆあんくん

yanくん

!?どした!?

ずっと黙りこくったままだと思っていたるながオレの名前を呼んだ。

runa

るな、考えてたの

yanくん

んん?何を…

runa

るなは、ゆあんくんからすこし離れようかなって…

yanくん

…は?

yanくん

言われたこと気にしてるの?

思わず口調がキツくなってしまった。 あんなやつの言うこと鵜呑みにしなくていいのに。

runa

考えるきっかけにはなったかなぁ…

yanくん

きっかけって

runa

るな

runa

今まで言われてみればゆあんくんにべったりだったし…

yanくん

そんなの!

runa

気にするの!!

わっとるなが大きな声を出した。

runa

…ゆあんくんのこと好きな子、たくさんいるんだよ。

yanくん

るなには関係ないことじゃないの…

yanくん

それにそんなのオレにだって関係ないよ。

るな以外見ていないのに

runa

だってゆあんくんのことが好きなこの気持ち考えたら

runa

ずっとずっと
誰かがゆあんくんの隣いたの見たら…

runa

やだなって…

runa

付き合ってもないのに

runa

そこどいてって…近すぎるよとか…思うもん

yanくん

なぁ

yanくん

そんな気にすることじゃないってば---

runa

気にする!!だって

runa

るながあの子の立場ならおんなじこと思うから!!

runa

ゆあんくんから離れてって思うから!!そばにいないでって!!

runa

るなもその子と同じ気持ちだから!!痛いほど気持ちがよくわかる---

yanくん

…え

runa

っあ

 

まって

それは

つまり

 

  

runa

…ごめん、あたまぐちゃぐちゃ…

runa

…忘れて今の。
今日はもう帰る…

 

 

うちの玄関の前を るなが通過しようとする。

  

 

yanくん

ガチャガチャと乱暴に鍵を開け

 

 グッ

runa

え!?わっ!

るなの腕を思い切り掴み

runa

ちょっと、え!?

無言で

 

runa

…ねぇっ

runa

ゆあんくん!!

 

バタン…

 

無理矢理、中へと引き寄せ扉を閉めた。

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コメント

4

ユーザー

口角が戻りません☺️ 尊すぎます✨👍

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