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主
主
主
数日後。
えとは任務のために人間界の町に降りていた。
街灯に照らされた夜道を歩いていると、やはり後ろから声が飛んでくる。
ゆあん
振り返らなくても、誰の声かはわかる。
黒髪に赤いメッシュ、赤い瞳の少年。——ゆあん。
えと
呆れ気味に問うと、ゆあんは胸を張って答えた。
ゆあん
子犬のようなその笑顔に、えとは思わずため息をついた。
けれど、不思議と心は軽くなる。
えと
そう言いつつも、えとは彼の歩幅に合わせて歩いていた。
その夜、二人は人間の営みを遠くから眺めた。
賑やかな屋台、笑い合う恋人、泣きながら手を握る親子。
えとは黙って見ていたが、ゆあんがふと笑う。
ゆあん
えと
そう言いながらも、えとはつい目を細めた。
人の営みはどこか眩しく、切なかった。
ゆあん
ゆあんが不意に名を呼ぶ。
ゆあん
えと
吐き出してしまった言葉に、自分でも驚いた。
誰にも語ったことのない本音だった。
ゆあんは黙って彼女を見つめ、それからにっこり笑った。
ゆあん
えと
そう返しながらも、胸の奥がふわりと温かくなるのを感じる。
夜の街を並んで歩く二人の影は、少しずつ重なり合うように伸びていった。