主
ゆあんが天界に戻ったその日。
澄んだ光に包まれた大広間に、重々しい声が響いた。
上位天使
上位の天使——白い翼を広げた壮年の天使が、鋭い目で彼を見据えていた。
ゆあん
上位天使
ゆあんは唇を噛む。頭では理解していた。
天使と死神は正反対の存在。
だが心は、すでにえとの瞳を忘れられなくなっていた。
ゆあん
そう答えるしかなく、ゆあんは拳を握りしめた。
一方その頃。
冥界の暗がりに佇むえとの前にも、冷たい声が落ちていた。
古き死神
低く響く声の主は、彼女の上司にあたる古き死神だった。
えと
えとは淡々と返す。
だが視線の奥に揺れるものを見抜かれたのか、上司はさらに険しい顔をした。
古き死神
えと
言葉に従順さを込めながらも、胸の奥はざわついていた。
夜。
人間界の静かな海辺で、二人は再び顔を合わせる。
えと
先に口を開いたのはえとだった。
彼女の綺麗な瞳が、どこか影を帯びている。
ゆあん
ゆあんは苦笑しながら空を仰ぐ。
ゆあん
えとは胸を締めつけられる思いで彼を見た。
本当は、自分も同じだった。
彼と話す時間だけが、灰色の世界に色を灯す。
けれど——。
その感情は、決して許されないもの。
二人は沈黙の中で夜空を見上げる。
天界の星々と冥界の影。
その狭間に立つ二人の想いは、掟によって引き裂かれようとしていた。
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