テラーノベルの小説コンテスト第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

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その声に届くまで

第6話 - 6

106

2024年08月16日

#ウインドブレーカー

#WIND BREAKER

水飛　怜

桜

……おい蘇芳

蘇芳

どうしたの？桜くん

桜

これ、どういうことだよ

楡井

これ…朱羽さんとの連絡ですか？

蘇芳

俺もだよ

楡井

2人とも朱羽さんと連絡とってたんですね！

桜

そこじゃねぇここだよ

楡井

これって…！？

楡井

桜さんブロックされてるじゃないですか！？

楡井

何やらかしたんですか！

桐生

鈴と遊んだメンバー…というか、連絡先交換してたメンバーだね

桐生

みんなブロックされてるの

楡井

へ！？みんなですか！？

桐生

ほら

杉下

…

桜

お前もかよ

桜

ならあいつらもか？

杉下

梅宮さんだ

桜

いちいちうるせぇよ…

杉下

…多分梅宮さんは消えてない、と思う

蘇芳

まぁ確かに、幼馴染だしね

楡井

柊さんも消えてないかもですね

桜

一旦聞きに行くか？

キーーーーーーンッ

桜

！？うっさ…

杉下

黙れ

桜

理不尽すぎんだろ…

昨日遊んだメンバーはすぐに屋上〜！！！

バカ、声デカすぎて耳潰れるだろ！

至急〜！！！今すぐ〜！！

桜

…行くか

蘇芳

大体予想はつくけどね…

梅宮

お、来たか

桜

まさか、お前らもあいつにブロックされてんのか？

柊

ってことはお前達もか？

梅宮

朝起きたらブロックされててびっくりしたよ…

梅宮

杉下もブロックされてるのか？

杉下

はい

柊

でもなんで急に…

桐生

…親、とか？

桜

親？

桐生

昨日俺が駅で鈴と会った時だね

桐生

その時、お母さんと電話してたみたいなんだけどすごく焦ってたから

柊

…それ、電話の内容は聞き取れたか？

桐生

少しだけなら…

桐生

『昨日門限の話したばかりなのにもう破るなんて』…だったかな

梅宮

……

柊

梅宮

あぁ、間違いなさそうだな

桜

なんだよ

梅宮

親が消したんだろうってことだ

梅宮

多分昨日帰ってから怒られたんだろ

蘇芳

…

本当に、そうだろうか

本当に朱羽さんは母親に連絡先を消されたのか？

蘇芳

…いや、別の可能性もあり得る

柊

別の可能性？

蘇芳

例えば…

蘇芳

『朱羽さん自身の意思で消した』とか

桜

あいつ自身の意思で…？

梅宮

それはあり得ないだろ

蘇芳

いえ、ないとは言い切れません

蘇芳

もし仮に、朱羽さんが受けているものが虐待だとすれば

蘇芳

朱羽さんは親からの愛を求めているのかもしれません

蘇芳

虐待された子供が、それでも愛を求めてしまうというのはよくあることですし

桜

…おい梅宮

梅宮

なんだ？

桜

あいつの家、親がいない時間とかわかんねぇのか

梅宮

んー…

柊

…毎日朝から昼過ぎ、火曜と木曜は午後まで

梅宮

え？

柊

あいつの親がいない時間だ

梅宮

なんでそんなこと知ってんの…ストーカー？

柊

ちげぇよ

柊

昔、あいつに教えてもらった

柊

まさかあの時の会話がここで役立つなんてな

梅宮

そんじゃ、今日は午後までいないってわけだ

梅宮

よし！！家突入すんぞ！！

これ…止めても無理なやつだな

鈴蘭

…よし

これで今日やる予定だった分のテストは終わり…

鈴蘭

次は中間試験かな…

ピンポーン

鈴蘭

？

鈴蘭

はい…？

私が扉を開けた途端誰かに強く扉を掴まれた

桜

よぉ、朱羽

鈴蘭

は…っ…？

蘇芳

おはようございます、朱羽さん

鈴蘭

な、んで…

梅宮

…

鈴蘭

…まさか、梅が教えたの

柊

俺だ

鈴蘭

っ…ごめんだけど、帰ってもらえるかな

鈴蘭

今日は勉強しなきゃだし…

蘇芳

この時間帯…学校に行ってるはずですよね？

鈴蘭

っ…！

桐生

本当だ〜

桐生

ここにいるはずないのになんでいるの？

楡井

もしかしてサボったんですか！？

梅宮

サボったんだとしたら

梅宮

鈴、悪い子だね

鈴蘭

っ…だから…！

鈴蘭

早く帰ってって！！

柊

帰るわけねぇだろ

柊

お前に何があったのか聞くまで帰るつもりはねぇよ

梅宮

鈴、ここまで来たんだから教えてくれるよね？

鈴蘭

…っ

？？

あら、お客さんかしら？

桜

…！！

杉下

は……？

鈴蘭

お母、さん…

母

鈴蘭、これは一体どういうことなの？

母

まさか貴方が呼んだの？

鈴蘭

ち、違う…！

鈴蘭

この人たちが…勝手に来た、だけ

母

…それは本当なの？

梅宮

はい

母

…ならもう帰ってもらえるかしら

母

この子は勉強をしなきゃならないの

母

貴方達と違ってね

鈴蘭

っ…ぁ…

なに、なんなの

私は何を焦ってるの

母

無理なら警察も呼ぶわよ

柊

すみません…

柊

ですが、少しだけ娘さんと話せませんか？

母

無理よ

母

何度も言っている通り、この子にはやることがあるの

桜

…お前のためか

母

は？

桜

お前のために、そいつがやらなきゃいけねぇのか？

母

…あんた、何言ってるの？

母

この子のこれからのために決まってるじゃない

母

この子は今一生懸命勉強して

母

将来は良い仕事に就いて

母

幸せに暮らすのよ！！

鈴蘭

…

嫌な汗が出てる

焦り、じゃない

これは何？

桜

だからそれが本当にそいつのためなのかって言ってんだよ！！

母

当然でしょ

母

この子だってそれを望んでるの

母

それに、私もお父さんもこの子を愛しているの

母

貴方達とは比べ物にならないくらい

母

…ねぇ、鈴蘭

母

貴方はこの先、どうしたい？

鈴蘭

え…？

母

どんな風に生きたいの？

鈴蘭

…っ

どんな風に？

何、どういうこと

私の考え？

わかんない、わかんないよそんなの

何を言えば正解なの

何を言えば褒めてもらえるの

何を言えば…

…ううん、違う

鈴蘭

…私は

笑え

愛想よく笑ってお母さんの望むことを言え

鈴蘭

私は、お母さんが喜んでくれるなら

鈴蘭

どんな道でも進むよ

蘇芳

…！

柊

っ…

楡井

え……っ

母

あら、本当？

母

嬉しいわ

母

貴方みたいな子が私の娘で良かったわ

鈴蘭

うん…ありがとう

桜

おい…朱羽！！

梅宮

桜、もういい

桜

っ、でも…！

梅宮

…帰ろう

蘇芳

…

そんな話が聞こえてきた時、蘇芳くんが黙って私の方に近づいてきた

鈴蘭

…な、なに…

そう言うと蘇芳くんの顔が目の前まで近づいてくる

蘇芳

───────

鈴蘭

…！

蘇芳

貴方には失望しましたよ

鈴蘭

…

桜

蘇芳…？

蘇芳

いや、なんでもないよ

蘇芳

…じゃあまた会えるといいですね

鈴蘭

こっちのセリフだよ

鈴蘭

じゃあね、蘇芳くん

蘇芳

はい、また

母

…さぁ、お昼ご飯にしましょ

鈴蘭

うん

お母さんの後に続きながら扉の向こうを見る

蘇芳くんと目が合ったのはきっと気のせいだろう

数時間後

母

じゃあ私は仕事に行ってくるわね

鈴蘭

あ、もうそんな時間だったんだ

鈴蘭

うん、わかった

母

じゃあ行ってきます

鈴蘭

行ってらっしゃい、お母さん

……バタン

鈴蘭

…

鈴蘭

…これか

ﾌﾟﾙﾙﾙﾙﾙ

蘇芳

あぁ、もう行ったんですね

鈴蘭

さっきね

鈴蘭

それよりも、なんでこんなことしてるの？

数時間前

鈴蘭

…な、なに…

蘇芳

お母さんが仕事に行ったら、ここに電話してください

そう言い蘇芳くんは私にメモ用紙を渡した

鈴蘭

…！

蘇芳

いや、こうでもしないと話できないなとは最初から考えていたので

鈴蘭

よく頭回るんだ

蘇芳

いえ、それほどでも

蘇芳

それよりも、本当にどうしたんですか

蘇芳

僕たちだけじゃなく、梅宮さん達の連絡先も消すなんて

鈴蘭

それは私の意思だよ

蘇芳

本当ですか？

鈴蘭

間違いなく

蘇芳

なら学校に行っていない理由は？

蘇芳

梅宮さん達から話を聞く限り、朱羽さんが学校をサボるような人とは思えないんですが

鈴蘭

ふふっ、随分と私を過大評価してくれるんだね

蘇芳

だって本当のことでしょう？

鈴蘭

まぁね

鈴蘭

別に、学校に行く必要が無くなっただけ

蘇芳

…そうですか

鈴蘭

ねぇ、それよりもさ

鈴蘭

本当はなんで私と電話しようとしたの？

蘇芳

…それはさっき言った通りですよ

鈴蘭

本当に？

鈴蘭

わざわざ電話にした意味は？

鈴蘭

私に「失望した」なんていったのは何故？

鈴蘭

それに君は今1人だよね？

鈴蘭

梅や登馬、特に桜くんになんかは言ってもいいはずだけど

蘇芳

…やっぱり頭いいんですね

鈴蘭

想像通りだった？

蘇芳

想像以上です

鈴蘭

ならよかったよ

蘇芳

でも、理由としては簡単ですよ

蘇芳

貴方に気を遣わせないため

鈴蘭

私に？

蘇芳

だって僕以外の前だったら笑うでしょう？

鈴蘭

…へぇ、よく見てるんだね

蘇芳

褒めてもらえて光栄ですよ

鈴蘭

君の目は何でも見抜いちゃいそうだからね

鈴蘭

もしかしたら気が抜けてたのかも

鈴蘭

君に隠しても無理そうだし

蘇芳

ははっ

蘇芳

そのおかげで僕は今こうして貴方と話せてます

蘇芳

そこで、一つ頼み事なんですが

鈴蘭

なに？

鈴蘭

会って話をして欲しい？

鈴蘭

それだけは無理だよ

蘇芳

いえ

蘇芳

貴方に毎日こうして電話してほしいんです

蘇芳

気が向いたらでいい

蘇芳

これはあくまでお願いですし

鈴蘭

それ、意味わかって言ってるよね

蘇芳

というと？

鈴蘭

君は私にそう言って

鈴蘭

必ずではないと言っているけれど

鈴蘭

私は毎日電話をかける

鈴蘭

そういう確証があるからわざとそう言ってるんだよね？

蘇芳

すごいですね、当たりです

鈴蘭

まぁ、多分少しなら毎日できるから

鈴蘭

するよ、電話

蘇芳

！

鈴蘭

あと、朱羽さん呼びと敬語は無しでね

蘇芳

え？

鈴蘭

毎日話する人に気遣われるのは少し気になるから

蘇芳

…わかった、鈴ちゃん

鈴蘭

ちゃん付けじゃなくてもいいのに

蘇芳

少し抵抗があるからね

鈴蘭

なんか意外かも

蘇芳

そうかな？俺は普通だと思うけど

鈴蘭

やっぱり一人称俺なんだ

蘇芳

目上の人と話す時は僕って言ってるだけだよ

蘇芳

桜くんや楡井くん達と話す時は俺って言ってるしね

鈴蘭

俺って言ってた方が親近感湧くね

蘇芳

だろうね

鈴蘭

もうそろそろ切るね

蘇芳

わかった

蘇芳

あまり無理しないようにね

鈴蘭

そっちこそ

蘇芳

俺は無理すること無いよ

蘇芳

本当に何かあったら1人で対処する前に頼ってね

鈴蘭

…うん、ありがとう

鈴蘭

じゃあ、おやすみ

蘇芳

うん、おやすみ

最初は何かと思ったけど

鈴蘭

少し…気が楽になるかも

その声に届くまで

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水飛　怜

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