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3件
裏通りのとある店の扉が開かれる
某
1人 胡散臭さの垣間見える張り付いた笑みを浮かべる 凡そ2〜30代程の男が頭をあげる
某
某が手短な棚より、1本のボルトを手に取り見せてくる
某
「♪〜」 聴き心地のいいベルの音が店内に響き渡った。
某
店主が踵を返し、店の奥へ続く陳列棚の中央を歩きはじめ あなたの方を振り向いて口を開いた。
某
「皆様是非とも心ゆくまでお寛ぎ下さい」
「追憶骨董店『某』」 「開店致します」
新京都 東宿区
まもなく昼時という時刻に際し、多くの通行人が雑踏ビル脇の歩道を行き交う。 熱い日差しの中、クールビズ姿のセールスマン二人が歩いていた。
加藤
そう口にしたのは、とある企業に務める営業次長。 売り上げ成績に富み 多くの難しい商談も形にしてきたやり手の人物だ。
加藤
吉村
乱暴に肩を担がれたのは若手社員。 少々圧の伴う声も相まって、その顔はややひきつっている そんな事もあり、傍から見て幸の薄さが一層際立っていた。
加藤
面白くなさそうな表情を浮かべた加藤。 その眉間に浅いシワが刻まれる…
加藤
某
某
その言葉に 加藤の機嫌が多少持ち直したのか 眉間のシワが薄れた
加藤
吉村
加藤
「仕事と家の往復を繰り返す毎日… 休みも休みで何かするでもなく… 気がつくと同じ繰り返しを 毎週繰り返している… 正直気力や活力なんてあってない… そんな俺に呆れたのか… 婚約中だった人は 将来が見えないという事で 先月別れを切り出され音信不通…」
元婚約者
「が彼女の最後の言葉だった… だからといって死にたいとは思わないけど… なんのために生きてるのか聞かれても 正直答えに困る」
「今の俺はそんな感じだ… そんな感じのまま… 息抜きにとか言って街中を連れ回される。 傍らで加藤さんの武勇伝を 聞かされながらだったので 正直誰の息抜きか分からなかった…」
「挙句、裏路地に入ったあたりで たまたま目に入った 古臭い見た目の店の中に半ば強引に 付き合わされた…」
半分、古臭い匂いを纏う店内。 中は様々な骨董品が所狭しと並んでおり デパート等に比べたら非常にゴチャゴチャとしている様相を呈していた
加藤
吉村
加藤
某
吉村
唐突に飛び出す胡散臭さを醸し出す、張り付いた笑みを浮かべる某に 加藤は若干引いている
某
加藤
某
某が、そのまま店の奥に通じる陳列棚の中央を歩いていく
吉村
加藤
吉村
加藤
吉村
加藤の言葉に威圧感を覚え… 吉村は怯えた表情を浮かべてそっぽを向いた
吉村
加藤
吉村
某
吉村
店の奥に進み、某は吉村と加藤を背中越しにしてあちこちを指さす
某
くるりと、二人の方を向き直した後、左手のガラスケースを指さした
某
加藤
吉村
某
指さされた先、二人が見ると… そこには旧世代の据え置きゲーム機と共に いくつかのソフトが陳列されていた
某
加藤
吉村
某
加藤
加藤の問いに、某の目元が一瞬反応する
某
気分好調という様子で加藤が満面の笑みになりながら吉村を一瞥しそのまま他の通路へ歩いていった。
加藤
吉村
吉村があたりの陳列棚を冴えない顔で眺める。 「煩わしい…」 目でそう訴えながら
吉村
「最後に自分が充実したと思った瞬間…」 心の中で問いかけるものの… 「何も思い出せない…」 そう思い浮かべて終わってしまう… そんな心境に対し、目線はどんどんと下を向いていく。 共に来るのは…
吉村
某
吉村
某
吉村
某
吉村
某
吉村
肩で息をしながら、某に怒鳴りつけるように吉村は吐き捨てた。
吉村
吉村の眉間にシワがよる。 その額にはあまりシワがよることが無いのか… 刻まれたものもそう深くはなかった。 しかし、頭に血が上っているせいなのか 声はどんどん大きくなっていっていた。
吉村
某に掴みかかる吉村、顔を赤くしながら 目元にはほんのりと涙が浮かんでいる… やるせない想いをぶつけかけるも 踏みとどまり、反対側の棚に寄りかかるようにしゃがみこんでしまう。 掌で目元を隠し、涙をこらえる弱々しい声を放ちながら…
吉村
某
吉村
顔を上げることも出来ず… ただその場で蹲りながら目線は脇に逸れた…
吉村
吉村
吉村の悲痛を伴う声に、某もまた 吉村と同じ目線の高さに合わせるべくしゃがみ。 その肩に手を置く。
某
吉村
泣き顔を浮かべながら目の前の店主の顔を見る。 そこには張り付いた笑みは無く 真剣に、そして温かみを感じる表情を浮かべていた
某
店主に誘われるがまま… 通路を進んでいくと 電化製品の棚通路が出てくる。
吉村
某
やがて、両脇に広がる電化製品は毛色を変えていった。
吉村
某
吉村
某
某が足を止めると棚を見つめ、1台のカメラを取り出す
吉村
某
某
吉村
そう言いかけた瞬間… 某から差し出された一台をまじまじと見つめる
吉村
吉村
声に出すや、思わずカメラを勢いよく手に取り… 様々な角度から食い入るように見始める
吉村
吉村が何かに気づいたのを暖かく見守り、落ち着きを持ったゆっくりとした口調で、某が話し始める。
某
吉村
某
優しい笑を向けた某が、吉村の顔に目線を向けた
某
吉村
某を見る吉村の表情… それは大切な何かを思い出し、深い喜びを覚える物だった。 既に、生きているのか死んでいるのか分からなくなった抜け殻のような顔では無い
吉村
かつて売り払ってしまったカメラ、それを大事そうに抱え、目を瞑る吉村… 目を見開いて、某に食い掛かるように話し始める
吉村
吉村
吉村
某
某
某
吉村
考え込むと同時に閃いた顔で吉村が続ける
吉村
某
「おっと…その前に」
そう呟いたあと、某は両手を手前に添えて 姿勢を正す。 吉村を真っ直ぐに見つめて咳払いをした
某
吉村
「おぉ〜い…おーい!」
吉村
遠くから聞こえる声を耳にすると… 吉村の顔にまた怯えが生じて肩をすくめる
少し遅れて現れた声の主は 横柄な様子でズカズカと歩いてくる加藤。
加藤
二人が入店する際の張り付いた胡散臭い笑顔で加藤の方をむく
某
加藤
そうして、吉村の方を見るや 彼が手に取るカメラに目がいった
加藤
吉村
加藤
吉村
加藤
吉村
吉村と加藤の間、某が表情を変えずに割って入る
某
加藤
某
加藤
次の瞬間、加藤の周りの景色が急に真っ暗になり… 同時に、吉村と某が消え果てる。
加藤
『お客様の大切なお品物を奪わんとする行為…』
響いてきたのは某の声、ひたすら広がる暗闇の中 どこからともなく聞こえる
加藤
『当店において… 最も許されざる事を なさいましたね?』
加藤
『その高圧的態度察するに… アナタは日頃から お客様の自尊心や誇りを 奪い続けてきましたね?』
加藤
『盗人猛々しいとは この事!!!』
加藤
『アナタは 勝手に他者を弱いと決めつけ 目をつけた相手から搾取する事を良しとする そんな浅ましい輩とお見受けしました… 目に見えぬモノを奪われる苦しみ 思い知るといいでしょう』
御精算のお時間です
加藤
「今月の営業成績、トップは住下林業と契約したT君です」
加藤
加藤
『よぉし、さっさとこのボロっちい CROWS引き払っちまうぞ〜』
加藤
加藤
テレビ
加藤
加藤
医療用ベッドに縛りつけられ、辺りにはおぞましい解体道具や医療電子機器が立ち並ぶ
解体道具を持った死神
謎の吸引器を抱える化け物
形容しがたい〇✕を振り回す鬼
化け物の叫び声と聞き間違えるほどに恐ろしい機械音を鳴り響かせ、加藤の身体に得体の知れない道具が迫る!
加藤
そこは、骨董店の店内。 無傷の加藤が恐怖に襲われる顔のままブツブツと呟いている…
吉村
加藤
某
加藤
数週間後… 骨董店内の中、ピシッとした格好の 女性店員「橘」が 席に座っている店主の「某」に御立腹の様相で立つ
橘
某
橘
某
橘が怒りを浮かべ、テーブルを叩く
橘
某
橘
某
某が慌てふためきながら お代として受け取ったという写真を見せる
それは、アフリカ大陸が雄大さを誇る平原にて撮られた見事な一枚。 写真の裏手に「Yoshimura」というサインが付いていた
橘
某
橘
某
橘
某
橘
某
橘
某
橘
某
-あとがきー 追憶骨董店『某』如何でしたでしょうか? コチラは以前とあるアプリで脚本を手がけた際、計画途中にて公開中止となったものを再執筆したものとなります。 こちらの物語は、現代という生きづらさが多少なりある世の中… 大切な物をどこかに置き忘れてしまった方というのもいらっしゃる事を想いながら そういう方々の『大切』を取っといてくれる… そんなお店があればいいなという心の元執筆した作品です。 それと同時に、人の大切なものを粗末にしてしまう人には… 恐ろしい罰もどこかで受けちゃうぞ! というメッセージ等も含んでおります… きっと読んでくださった方々はそうでは無いと思います! あくまで予想ですけどね! キャラクター同士の掛け合いの面を第一として… 演者の方が楽しんでいただけるような台詞回しを大事に書き上げました。 その為、途中ツッコミどころなどの粗が目立つ点どうかご容赦いただけると💦 あとがき含めトータル8500文字以上… 非常に長い作品となりましたが 最後までお付き合い下さり 心より感謝申し上げます✨ いずれまた、別の作品にてお会いできれば! ご拝読、心よりよ感謝を。 城二城一
※使用写真 パブリックドメイン写真サイト「Pxhere」より Mohamed Hassan様撮影写真 URL:https://pxhere.com/ja/photo/1435399