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鯖の塩焼き
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久世 雨音
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93
一方、その頃――。
世界の裂け目の最深部。
辺り一面は静まり返っていた。
地面は黒い結晶で覆われ、空は上下の感覚すら分からないほど歪んでいる。
ナチスはゆっくりと歩いていた。
六つの鍵を胸に抱えながら。
ナチス
一歩進むたび、足元から黒い光が広がる。
すると突然。
ズキッ。
ナチス
右手の黒い紋様が激しく光った。
今までにない痛みが腕を走る。
ナチス
膝をつきそうになるが、無理やり立ち上がる。
ナチス
ナチス
ーーーーーーーーーー
その時。
裂け目全体が低く唸る。
『契約者。』
『よく来た。』
ナチスは周囲を見回す。
ナチス
…何処にも姿はない。
聞こえるのは声だけ。
『必要ない。』
『お前は約束を果たしに来た。』
『それで十分だ。』
ナチスは苦笑した。
ナチス
『六つの鍵を捧げよ。』
『さすれば契約は完成する。』
ナチスは鍵を見つめる。
旅の途中。
みんなで守ってきた鍵。
アメリカが落としかけて慌てて拾ったこと。
日帝が丁寧に手入れしていたこと。
フランスが『きれいだね』と眺めていたこと。
イギリスが何度も数を確認していたこと。
ソ連が大事そうに運んでいたこと。
ロシア帝国とプロイセンが、ようやく安心したように笑っていたこと。
その全部が頭に浮かぶ。
ナチス
小さく笑う。
ナチス
その頃。
裂け目の入口。
アメリカ
フランス
アメリカ
プロイセン
ロシア帝国
日帝
イギリス
ソ連だけは静かだった。
ソ連
再び裂け目の奥。
ナチスは歩き続ける。
しかし。
体が重い。
右手の紋様は腕全体へ広がり始めていた。
ナチス
契約の声が響く。
『契約者よ。』
『迷いがみられるぞ。』
ナチス
『仲間が恋しいか。』
ナチスは少し笑う。
ナチス
『ならば戻れ。』
『契約は破棄される。』
『代わりに全員が契約を分け合うだけだ。』
ナチスは即座に首を振った。
ナチス
『迷わないのか。』
ナチス
ナチス
ナチス
少し笑う。
ナチス
ナチス
遠くを見つめる。
ナチス
ナチス
ナチス
ナチス
ナチス
ナチス
ナチス
ーーーーーーーーー
その瞬間。
黒い紋様が胸元まで広がる。
ナチス
激痛に耐えながらも立ち上がる。
『契約者。』
『お前は最後まで一人でいいのか?』
ナチスは苦笑する。
ナチス
『?』
ナチス
『ならば何故、ここにいる。』
ナチスは目を閉じる。
仲間の笑顔が浮かぶ。
ナチス
ナチス
ナチス
息を整える。
その時だった。
扉の向こうから低い振動が伝わってくる。
何か巨大なものが、ゆっくりと近づいている。
ナチスは鍵を握り直した。
ナチス
笑ってみせる。
しかし、その笑顔の裏では。
ナチス
ナチス
ナチス
そう願っていた。
だが、その願いとは裏腹に――
遠くから聞き慣れた声が響く。
アメリカ
ナチスの目が大きく見開かれる。
ナチス
思わず振り返る。
仲間たちが、裂け目の奥へ向かって走ってきていた。
ナチスは小さく舌打ちする。
ナチス
その声には怒りではなく、仲間を心配する焦りが滲んでいた。
コメント
1件
うわぁ…ナチスの覚悟が重すぎて泣ける😭「帰る場所があるから、帰れなくても後悔しない」って台詞、強すぎるよ…。鍵めぐるみんなの思い出も全部エモいし、仲間が追いかけてきて「何で来るんだよ」の焦りに愛が溢れてる…!早く続き読みたい、頑張れナチス!!