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3XXX年
進んだ科学技術を 活かして造られた人工太陽や
重力設定装置、酸素保存装置で 他の惑星に移住できる時代
世界中で戦争や紛争が相次いだ上
それに伴った大規模な飢饉が発生
地球は かつての青と緑の美しさを失い
荒廃した赤褐色の大地が広がる... そんな惑星になっていた
そんな環境に耐えかねて 自らその命を絶つ貧しい者と
科学技術の結晶を用いて 他の惑星に移住する高貴な者
その2つに分かれる
──即ち、人類の減少
危機感を感じた政府は 地球という惑星を存続させる為
特定のプログラムを埋め込み 人類を機械の身体にして
永遠に生きさせよう、という計画 つまり
人類機械化
を発表した
優希
政府の重役達が集う広間に 拘束された少年が1人
優希
優希
優希
優希
優希
優希
苦々しく吐き出した言葉
しかし重役達はニヤリと笑った
優希
どさっ
床に投げ出された人物を見て 息が止まる
優希
潤いがあった肌も光の入った瞳も 何もかもが失われ
機械人間となった自分の彼女が
無造作にそこに転がされていた
優希
優希
叫んで駆け寄ろうとすれば
身体中に巻かれた鎖が邪魔をする
優希
ガチャガチャと鎖の音が鳴る
拘束された手足から血が滲むが 構わずに側に行こうと力を込める
優希
優希
視線を逸らさずそう叫べば 目の前の顔が醜く歪んだ
優希
かつて人類が移住し生態系が壊れ
今では少しの池と
その当時育てられていたと 思われる芋だけが
少し生えているだけの 無人の惑星
その惑星にもう一度 緑を甦らせることを条件に
鈴音を元に戻す約束を取り付けた
鈴音
重役達から渡された種は なんだかやけに固い
優希
温かさを失ったその手を そっと握った
水が足りないのか それとも栄養が少ないのか
種は一向に発芽しない
優希
鈴音
鈴音
優希
プログラムされた言葉しか 発せない鈴音は
見ていてとても苦しい
こんなの、AIの方が優れている
いや、そもそもAIの方を重要視し
人類を 地球に留まらせる事が目的か
鈴音
優希
鈴音
機械人間はなんでも食べられる その話は本当らしかった
優希
鈴音
優希
鈴音
優希
優希
鈴音
優希
プログラムされてないから 返してはくれないけれど
優希
優希
鈴音
いつかまた、2人で 言い合える日がくるから.....
最近、なぜか目眩が酷い
咳き込めば、うっすらと 血が混じるようになった
まだ芽は出ないみたいだ
優希
鈴音
返してはくれないけれど それでも
少し微笑みを返してくれた
私は 何もわからなかった
気が付けば、体温が無くて
触れてくれた優希の温度も 全然感じなくて
ああ、私は
機械になったんだ
って
私はわかっていた
この土地が毒されている事を
機械となった眼は 毒を見分けることが出来た
だから毒に侵された芋の 毒が多い部分を
私が食べるように努めた
鈴音
優希
鈴音
私だって返したかった
優希
言ってもらえた分 “愛してる”を返したかった
だけど プログラムされていない言葉は
どうしても言えなくて
鈴音
違う、違うの
そんな寂しそうに微笑まないで
鈴音
優希
血の気の失せた顔を覗き込む
毒の影響が こんなにまで出てしまっていた
優希
フラフラと 立ち上がりかけた優希を
そっと抱き締める
優希
鈴音
行かないで
逝かないで
優希がいなくなったら 私はどうしたらいいの?
想う のが心ならば、 機械人間になった私にも心はある
ただその想いを 口にすることが出来ないだけで...
優希
バランスを崩し 優希が私の上に倒れ込む
優希
優希
優希
優希
鈴音
そっと優希の身体を起こし 自身の膝にその頭を乗せる
優希
優希
優希
鈴音
そんなことない、と伝えたくて
顔を横に振った
優希
鈴音
上手く動かせない頬を上げて 精一杯の笑顔を
優希
優希
優希
優希
私だって、嬉しかった
何度も 愛してる と言ってくれた
機械になった私の側にいてくれた
優希
そっと伸ばされた温かな手が 優しく頬に触れる
あの時も
優希
ずっと、側にいてくれて
優希
優希
私を見捨てずにいてくれて
優希
ずっと...想いを私に
優希
・ ・ ・
浮かんでくるのは
優希がかけてくれた言葉
また2人で
幸せに暮らそう
そう言ってくれた
優希
優希
優希
プログラムされていない言葉
だから何?
言わなきゃ
優希は、いつも 何て言ってくれた?
鈴音
鈴音
頭の回路の奥で 火花が散っているような感覚
鈴音
鈴音
言い終えるのと、優希の手が 静かに頬から離れたのが
同時だった
ずっとずっと、 雨なんて降らなかったのに
他の場所には降ってないのに
優希の白い頬に 透明な雫が次々と落ちていく
鈴音
プログラムに逆らったからか
身体のいたるところから バチバチとショートする音が鳴った
そして
永く眠っていた種子は
大きな栄養を得て姿を現した
少年の身体を、 少女の養分を糧として
それは成長を始めた──
3XXX年
地球の政府が打ち出した 人類機械化は
強制的に進められ
地球に存在する人類は全て 機械となった
だが、 プログラムされた事しか行えない
ロボットに等しい人類は
衰退の一途を辿っている
そんな中
廃屋となった家の部屋で ある日、謎の電波を受信したTVが
何十年かぶりに映像を映した
────プツン────