クレア
戦が終わり荒れ果てた町を
クレア
一人の騎士が歩く
クレア
彼女(彼)は誰より戦果を挙げた
クレア
誰より人を殺した
敵国の民
敵国の民はその姿恐れ
敵国の妖精
必死に命乞いをする
クレア
しかしその願いを彼女(彼)が
クレア
聞き入れることは決してない
クレア
女の亡骸が抱えた
無邪気に微笑む赤子
クレア
彼女(彼)は冷たい眼のまま
クレア
剣を振り上げた
クレア
「……誰も生かしておくわけにはいかないのよ。」
クレア
「…悪いわね」
クレア
女傑(英雄)の鎧は常に紅く
クレア
それはきっと浴びた返り血の色
クレア
誰かのための行いだとしても
クレア
それを「正義」と呼べるのか?
クレア
それから五年の月日が流れ
クレア
戦は今日も続く
クレア
騎士を仮住まいで待つのは
クリス
一人の可憐な少年(少女)
クレア
あの時彼(彼女)の服に縫われた
クレア
王家の紋に気づいた
クレア
手元に置いておけばいつか
クレア
人質くらいにはなる
クリス
「お帰り母(父)さん」
クレア
と微笑む
クレア
無邪気で愚かな息子(娘)
クレア
アンタ(お前)の親を殺したのはこの私(俺)だというのに
クレア
「親子の真似事ねぇ…」
クレア
「…はぁ…くだらないわ…」
クレア
女傑(英雄)の鎧は常に紅く
クレア
それはきっと彼女(彼)の野心と同じ色
クレア
誰かのための行いだとしても
クレア
それを「正義」と呼べるのか?
クレア
戦場には様々なものがはびこっている
クレア
勝利、敗北、憎しみ、怒り、絶望、時の運
クレア
そして裏切り…?
クレア
気が付けば騎士は
クレア
大勢の敵に囲まれていた
クレア
彼らがただの兵士でないことは
クレア
明らかだった
黒装束の老婆
「おとなしく息子(娘)を差し出せ」
クレア
と迫る黒装束の老婆
クレア
従えばおそらく
クレア
息子(娘)の命はないだろう
クレア
しかしそれは騎士(私)にとって
クレア
望むところだったはず
クレア
その為にこの子を今まで
クレア
飼っていたのだから
クレア
そうよ…何も迷う事なんかない…‼
クレア
なのに…ッ‼
クレア
どうして…ッ‼
クレア
私は…ッ‼
クレア
剣を持ち騎士を守るように
クレア
前に立った者がいた
クレア
震えてる小さな背中
クリス
それは幼いあの子だった
クレア
憐れな息子(娘)よ
クレア
アンタ(お前)が母(父)と慕う者は
クレア
今まさにアンタ(お前)を売ろうとしていたというのに
クレア
騎士は息子(娘)の頭を優しく撫でた後
クレア
殺し屋に向かって剣を抜いた……
クレア
「母親なんて柄じゃないわ…」
クレア
「誇れるような生き方もしてないけれど…」
クレア
「それでもいいと言ってくれるなら」
クレア
「私はアンタを守る鎧になってやるわ…」
クレア
「さあ、行きましょうか…‼」
クレア
女傑(英雄)の鎧は常に紅く
クレア
それはきっと浴びた夕焼けの色
クレア
血塗られた時代の中、手を繋いで
クレア
歩いていく騎士(女)と娘(息子)
クレア
戦場には正義も惡もない
クレア
贖罪の日はいつかやって来るだろう
クレア
やがて来るその時まで彼女(私)は
クレア
「母」でいようと決意した