私
目を開けると、 窓の景色は暗くなっていました
まだぼやける視界に入ってきた 薄暗い月灯りは心地よく 私の意識をはっきりとさせてくれます
意識がはっきりしていくと 自分の冷えた体温に気がいきました 布団をかけて寝てなかったみたいでした
お昼前には用事を済まして 家に帰り、外に出たままの服で 柔らかいベッドに飛び込んだ
そこで止まった記憶を思い出しました
起き上がって、 月灯りを浴びたくなった私は 窓に近づくのです
しんと静まった部屋に差し込む灯り。 ずっとそれに身を任せていると、 まるで陽光のように体を温めてくれる ような気がしました。
浴びながら、まだ冴えきらない 寝起きのまどろみを覚ましていきます
私
ずっとここに居られるな、 なんて思いながらも
外出の汚れと、 寝てる間の汗を落としたくなり、 私は脱衣所に向かう事にしました
私
目が慣れていなかったので 急に強い光を浴びて 視界が白一色に
私
湯気と共に出てくるシャワーは 身体の汚れを流すのと一緒に 自分が思っていたより冷えていたことを 教えてくれました
お湯の温度を下げる という考えが頭に浮かびました、 が、次第に体がお湯の温度に慣れて、 浴室を包む白い湯気と 肌に落ちる湯が体に馴染み 心地よくなっていくと
その考えはすっと流れて なくなっていくのです
私
少し体を温めて、ちょうどよくなった 温度の湯に浸かると、 ため息のような声が漏れました
肩まで浸かると 体の余計な力が抜けて、 ほぐれて溶けてしまいそうになります
静かな夜の静かな浴室では 自分の心臓の音もよく聞こえます
とくん とくん と、 穏やかな鼓動が、 自分の体温が上がるのを感じるにつれて 段々とそのテンポが 上がるのがわかりました
私
ふと、一つ疑問が生まれました
私
ベッドの毛布を漁り、 しばらくしてそれを見つけました が、何度画面を叩いても 明かりがつきません
電池が切れたようでした
コンセント壊れてるし…
外に出て買いに行くのは 気が進みませんでした 風呂上がりの、じわりと体の芯から 温まったこの感覚を保っていたかったので
私
念の為に1枚多く上着を羽織っても やはり夜はとても寒かった
肌が露出した部分は風が吹いて冷たい けれどもお風呂で温まった体は 静かに脈打つ
そんなちぐはぐさが なぜだか気持ち良く思えたんです
月明かり以外に 灯りはありませんでした 街灯もなく、 スマホも電池切れ
よく知る道のはずなのに、 どこか心細く、知らない街にきた そんな感覚になります
でも、それは気のせいではなかったのです
道を間違えたか、そこは よく知るコンビニへの 道ではなかったのです
そこは知らない道でした、 そこは知らない街でした。 ですがそれは何の変哲もない 家と電柱 つかない電灯のあるただの小道です
引き返そうかな、なんて思うと 後ろから強い風が吹いて、 私の背中を押しました 段々と私の体温が闇夜に奪われていく
途端にこのなんでもない住宅街の道が、 どこか異世界へ、 人では無い何かが住む世界へ 続いてるんじゃないか、そんな 考えが頭を埋めていく
少し立ち止まりました けど、何となくまた歩き始めます
しばらく歩いていると
「ぐううう…」
空腹感とともに、お腹から音が響きました
私
そう思いながら歩いていると、 何かが焼ける、芳ばしい匂いが するのに気が付きました
ふらふらとした足取りで 私はその匂いに引き寄せられるのでした
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!