SCS-03
本当にいいんだね?
三郎
あぁ
三郎
もう決めた事だ
SCS-03
最後に会って行かなくていいのかい?
三郎
会わない
三郎
会ったらきっと決意が鈍る
SCS-03
まぁそう決めたのなら私は何も言わないさ
SCS-03
ほらこれ
三郎
うん?
SCS-03
餞別だよ
三郎
随分でけぇな
SCS-03
今までみたいに転々と少しの間何処かに滞在する事もないだろうからね
SCS-03
荷物は多いに越したことはないよ
三郎
そりゃそうだな
三郎
助かったぜ、えっちゃん
SCS-03
誰がえっちゃんだい!
三郎
それじゃ行くとするかね
三郎
心守の事頼んだぞ?
SCS-03
はいはい!さっさと行きな
三郎
あぁ
三郎
元気でな
SCS-03
達者でね
男はとんでもなく大きな荷物を 担いで去っていく
SCS-03
・・・
その背中が見えなくなった所で 女が呟いた
SCS-03
あの子が大事なのはあんただけじゃないんだよ
SCS-03
私がサポートするのはあんたと
SCS-03
そして、あの子もだ……
三郎
(母親殺したアンドロイドと)
三郎
(アンドロイドに母親を殺された娘)
三郎
(俺たちの関係はただそれだけなんだと思っていた)
三郎
(だけどゼロイチとの会話でそれだけじゃない事が分かった)
ゴソッ……
三郎
(祖先の侍をモデルに作られた俺と)
三郎
(その侍の子孫である心守)
三郎
(俺がそんなあの子に出来る事は……)
ゴソゴソッ……
三郎
(あの子自身が……そして、あの子の子孫が平和に暮らせる世界を作ること)
三郎
(だからその為に俺は……)
ゴソゴソゴソッ……
三郎
だあぁぁぁぁ!さっきから何だ!
三郎
あいつが渡してきた荷物からか?
荷物を地面に下ろして 中身を確認する
そこにはマントにくるまれた 大きな塊が入っていた
三郎
何だこれ?
三郎
熱感知防止のマント?
三郎
何でこんなもんが入って
男は乱暴にその塊を持ち上げる
???
むぐっ!
三郎
むぐ?
三郎
何だこれ?
???
く、苦しいよ
心守
父ちゃん!
三郎
心守!
三郎
お前何でこんな所に……
心守
何ではおいらの台詞だよ!
心守
えっちゃんから聞いたよ!
心守
おいらの為に一人で旅に出るって
三郎
それは……
心守
何でおいらに何の相談もなくそんなことを勝手に決めるのさ!
三郎
お前の為を思って……だな
心守
何がおいらの為になるかはおいらが決める!
心守
おいらにとって大事なのは
心守
大好きな父ちゃんと一緒にいる事だ
三郎
心守……
心守
だから父ちゃんが何かをするなら、おいらも一緒に頑張る!
小さな少女は瞳を うるうるさせながら男を見る
三郎
・・・
三郎
あぁーーー!分かったよ!
三郎
だけど、今まで以上に父ちゃんの言うこと聞くんだぞ?
心守
うん!分かった!
観念したように叫ぶ男に 少女は笑顔で返事をする
その姿は 本当の父娘のようだった……
・・・
心守
(父ちゃん……父ちゃんが母ちゃんを殺したなんて嘘だよね?)
心守
(あの悪い奴がおいらを騙そうとしてるだけだよね?)
心守
(もし父ちゃんが母ちゃんを殺してたなら、おいらは……)
・・・
三郎
(全てが終わって、心守が大きくなったら)
三郎
(俺がした事を心守に正直に伝えよう)
三郎
(その時は、心守からどんな罰でも受ける)
三郎
(例え心守に殺される事になったとしても……)
三郎
(だからその時までは、今のままで……)
1人の侍と1人の少女
1人のアンドロイドと1人の人間
1人の父親と1人の娘
そして……
1人のアンドロイドが 抱える秘密と
1人の少女が抱えた秘密
それらが合わさって 物語は動き始める
全てはアンドロイドと 人間の未来の為に
これはそんな
父娘の物語……
おしまい