タン、タン、タン…
要 流生
聞き慣れた声がして、顔を上げる。
奏木 色葉
要 流生
奏木 色葉
要 流生
奏木 色葉
要 流生
奏木 色葉
要 流生
奏木 色葉
ごめんね、流生。
僕の目が見えていたなら。
要 流生
奏木 色葉
要 流生
幼稚園の時に目が見えなくなって、何もわからなかった。
そんな時に音楽を見つけた。それを代表として飾るピアノは、僕の中で目が見えないながらも弾ける唯一無二の存在だった。
色も形も忘れたけど、音があるから弾けた。音符もその時初めて知った。それこそ形も知らないし、見えないから先生が口頭で教えてくれた。
練習していくうちに楽譜もキーの場所も、全て覚えた。
優勝だってしたし、トルフィーだって手に入れた。だけど、目が見えないと全国大会にはいけない。どれだけ弾けても表現力が欠けていると優勝は難しい。
それがわかっていたから、中学の時にピアノを辞めた。…でも、机を叩く癖が抜けなくて。
諦めようって思ったけど、無理だった。そんな時に膵臓癌が発覚して、今に至った。自分だからこそわかる。…もう時期僕は死んでしまう。
ああ、死ぬ前に晴れ舞台を聞いてみたかった。
奏木 色葉
要 流生
要 流生
色葉にも、来て欲しかった。
最初の頃は仲良くなんてなかったし、あんなに華奢でもなかった。少しふっくらした呑気な男の子、位にしか思ってなかったんだ。
色葉が転園して来た時、男の子だって知ってどれだけ落ち込んだだろうか。
それでも、ピアノを習ってると聞いて親近感が湧いて、話しかけてみた。そしたら凄く気が合って、時間なんて気にせずすぐ仲良くなれた。
いつの間にか好きになってた。それは、目が見えなくなった後でも。
いつか全国大会に出たら告白をって、そんな頭で考えてた。なのに、膵臓癌なんて…
色葉が安心して向こうに行けるように、私もトルフィーを取らなければ。
後、もうすぐで私の番…!
ブー!!
急に電話の着信音がなる。
要 流生
色葉のお母さん
私は辞退した。
色葉のお母さん
ああ、母さんの声が聞こえる。
ガラッ
要 流生
あれ、流生の声が聞こえる…?大会なのに、駆けつけてくれたんだ…
ごめん、ごめん。
来世は絶対に、病気には掛からないから…
そこで僕の意識は飛んだ。
神様
奏木 色葉
神様
奏木 色葉
ああ、そう言えば…
流生の大切な大会の日に、病気で…
奏木 色葉
奏木 色葉
神様
奏木 色葉
奏木 色葉
神様
神様
奏木 色葉
神様
奏木 色葉
神様
神様
奏木 色葉
神様
奏木 色葉
神様
神様
奏木 色葉
神様
スー、という音とともに、目の前が明るくなった気がした。
オルフェリア・ベルセルク
ソニア・ベルセルク
クルケット・ベルセルク
目の前の両親は涙ぐんでいた。
ああ、これが人。これが色。これが形。
僕は嬉しみを胸に、産声を上げた。