そんな君が一番かわいい（R）

こさめが、いない。

※一応夜です。

いつも、出かける時は連絡、そして、20時までに帰ってこれそうになければまた連絡してくれって言ってる。

外出の連絡は来ている。コンビニ行ってくると、一言。 でも、家には誰もいない。遅れる連絡もない。

こさめは彼氏にベタベタと懐く性格ではない。 でも、俺との約束は破らない。

汗がぶわぁっと溢れ出す。嘘、どこ。

急いでスマホからGPSを確認する。

主、お前は帰れ？

幸い、近くの公園にいるようである。

そこで、一つの仮説が生まれる。 ……『ナンパ』『誘拐』と言われる物。

猛烈に嫌な予感がする。 俺は急いで家を飛び出した。

必死に叫ぶ。でも、誰も助けには来てくれない。

こさめは今、知らない男の人に絡まれている。 怖くて、強く言うと腕を掴んでいる力が強くなって、

とにかく反撃を意識する。 けれど、大柄な男性にこさめの力は叶わない。

怖い。とてつもなく怖い。 夜の公園、これから何が起きてもおかしくない。

こんな時に真っ先に頭に浮かんでしまうのは 優しく微笑みかけるこさめの大好きな人。

腕を掴む力がどんどん強くなる。

助けて。

男性の声が静かな夜によくとおる。

やだ。嫌だ嫌だ嫌だ。

助けて。……ねぇ、らんくん。

明らかに怒りが籠もった低音が響く。

目が潤んでよく見えないけれど、 それは、確かにこさめの大好きな彼だった。

らんくんが男の手を掴む。

急いでこさめの腕を離し、 自分の手を抑える男。

初めて、らんくんがこんなに怒った声を聞いた。 激怒している、こさめですら少し怖い。

遠くからサイレンの音が聞こえる。 きっともうそろそろ着くのだろう。

逃げようとする男の手を彼が強く掴む。

怒りで我を忘れているのかと思う程酷い、 でも冷静で蔑む目をしている。

まだ震えているピリピリと痛い腕を撫でる。

警察に男を引き渡し、無事家に帰ってこれた。

家についた途端正面から強く抱きしめられる。 そのままドアにもたれかかる体制になり、 互いに玄関床に座り込んでしまった。

安心したせいか、少し笑いが混じった声が出る。

らんくんも、本当は怖かったのだろう。 声が震えている。

抱き締める力が強すぎてちょっと痛い。 でも今は、その痛さが驚くほど心地よい。

その言葉が引き金になり、 こさめの視界はまた歪みだした。

この後、声が枯れるまで泣いた。 怖くて仕方なくて、大変だったけど。

この日のらんくんの温もりが、あまりにも優しくて、 暖かくて、やっぱり、大好きだなって自覚した。

きっと、一生忘れられないだろう。

愛してるよ。らんくん。

ここでは夜な夜な男の叫び声が聞こえたとかなんとか…