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8月29日、花火大会

私が唯一1人で呼吸できる時間

私にはこの時間が世界一大切だ。

千佳

(まだ誰も見つけてないよね…今年も1人。安全だ。)

ここは私が9歳の時に見つけた花火が1番綺麗にみられる穴場。

今のところ私以外ここを見つけた人はいない。

千佳

(7時24分、花火そろそろかな)

屋台で買ってきた焼きそばを膝の上で開ける。

千佳

完璧

そう呟くと後ろから何が雑音が聞こえた。

千佳

(誰?猫?)

   

   

あ…

千佳

ぁ…

この時が来てしまった。

私の唯一の居場所がバレてしまった。

   

すみません…

千佳

いえ…

見るからにモテそうだし、こいつ絶対広める。そんな気がする。

今のところ連れはいなさそうだし、様子見てよう。

   

千佳

沈黙がうるさい。

千佳

(はやくどこかへ行って。私の居場所を奪わないで。なんでここにきてまで気まづい思いしなきゃならないの…)

   

   

あの…

千佳

え、はい

千佳

(この人私に話しかけてる?え?なんで??)

   

どうしてここにいたんですか…?

千佳

えーと、花火を見るために…です…

千佳

あなたこそなんで…

   

逃げて来たんです

千佳

え?

   

母親から

千佳

そうなんですか…

   

僕の家、親が離婚してて、母子家庭なんですけど

千佳

はい

千佳

(なんで私のこんな話を…?)

   

母に苦労かけるのが申し訳なくて、部活せず試験勉強とバイトを頑張ってしてたんですけど

千佳

はい

   

やっぱり僕は力不足で、テストの点数が下がってしまって

   

自分なりに頑張った分、母に指摘されると自分の頑張りが全て水の泡になったような、否定されたような気持ちになってしまって、全部自分が勝手にやった事なんで言い訳する権利なんてないし、甘えだけど

千佳

(この人、数分前に会った私に本気で心開いて話してるんだろうな…)

   

なんか悔しくて、逃げて来ました

千佳

それでここを見つけたんですか?

   

小さい頃父とここでよく見てました。花火大会なんて何年ぶりだろう。

千佳

それって何歳の時ですか!

   

え、たしか6歳くらいだったと思います

千佳

負けた…

   

人がいてびっくりしました

千佳

私もです。てっきり私が初めてかと。

千佳

失礼ですが年齢聞いてもいいですか?

   

16です

千佳

同い年…!どっちにしろ負けてる…

優希

あ、ちなみに優希って言います。なんか僕の話ばっかしてすみません。

千佳

いえ…!私は千佳っていいます!

千佳

じゃあ私の話も聞いてもらえますか?これでおあいこになりますよね。

優希

あ、もちろんです!

千佳

私、こんな所に寂しく1人で焼きそば持って花火見ようとしてますけど、意外と学校では人気者なんですよ?

優希

なんで1人なんだろう…って僕も思いました

千佳

ですよね笑

千佳

そこそこモテるし、友達に囲まれて何不自由しない生活送ってますけど、その分リスクがあるんです。

優希

リスク?

千佳

友達と言っても、悩みや好きな人の事を相談すると次の日にはクラス全体に広まってるし、

千佳

いきなり動画撮って勝手にストーリーあげるし、ちょっと口を滑らすと友達失うかもしれない

千佳

じゃあ友達やめればいいじゃんって話なんですけど、今の友達のせいでチャラそうっていう印象がついてるらしくて気が合いそうな子に声かけても少し避けたりするんです

この人が赤の他人の私にいきなり悩みを相談した理由、今ならわかるかも。

千佳

だから本音も言えないし、離れられない、常に人の顔色伺ってるから1人で息つける時間もない

千佳

だから私も逃げて来たんです

優希

2人とも逃げて来たんですね。

お互い知らないから話しやすい。

千佳

まあ、私は毎年逃げて来てるんですけどね笑

優希

あ、僕行った方がいいですか?

優希

1人の時間欲しいですよね

そう言って背中を向け、立ち去ろうとする彼に何故か名残惜しさを感じた。

千佳

行かないで!

優希

え?

千佳

なんか、一緒にいて欲しいです。今年はそういう気分です。

優希

じゃあ…います。ここに。

千佳

7時52分…花火遅れてますね。

優希

もう真っ暗なのでもうそろそろだと思います

そう2人で空を見上げた瞬間

優希

あ…!

ドカンと音を立てながら花火が打ち上がった

千佳

きれい…

なぜか今までより気持ちが 晴れていて、軽かった。1人が1番楽だったはずなのに。

優希

ちょうど来ましたね

千佳

私達を待ってたみたいですね笑

優希

2人のための花火みたいですね笑

千佳

(あ…)

彼の笑顔をみた瞬間彼を抱きしめていた。

千佳

(どうして…なんで…)

顔をぐっちゃぐちゃにしながら今まで耐えていた全ての感情が溢れ出す。

優希

さっきとは違って沈黙が なんだか心地よかった。

花火の音で嗚咽がかき消され、より2人だけの空間を作っていく。

彼の手が私の背中を撫でる時、彼も密かに涙を流している事に気が付いた。

千佳

ねえ

優希

なに?

千佳

来年もここで会おうよ

優希

うん

千佳

私、1人の時間ばっか欲しがってたけど

千佳

きっと本当は誰か本音で話せる相手が欲しかったんだ。

優希

うん、きっと僕も

そう言ってお互いにボロボロになった顔を見て、さらに泣いてしまうこの瞬間は。

人生で最高の瞬間だった。

次の年

千佳

やっぱ優希の言った通りだった

千佳

一時的に友達いなくなったしモテなくなったけど、やっぱ趣味の合う友達がいるって億倍幸せだわ〜

優希

僕も同じ時期あったからさ

優希

ていうか先に勉強できるって教えてくれない?

優希

勉強できないって相談したの思い出しただけで恥ずかしい

千佳

今年のテストはどうだったかね?

優希

苦手科目の数学89点でございます

千佳

誰のおかげ?

優希

千佳様

千佳

じゃあご褒美は?

優希

はいはい

私の唇に軽く触れる。

千佳

短い!

優希

花火見れなくなるならいいよ

千佳

それはやだ

千佳

でも優希も人の事言えないよ、私の学校に近いって教えてくれなかったじゃん。再会した時めちゃくちゃ恥ずかしかったんだから

優希

それはお互い様だろ

優希

それより僕は千佳が初めてキスしようとした時…

千佳

はいだめ!これ以上言ったらここから落とす!

優希

すみませんでした

千佳

えらいえらい

そう言ってさっきより長くキスをする

花火が始まるころに

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