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…ねえ。

いくんならさ。

せめて、

ペンを持っていた手が止まる。

ペン先を顎の下に当てて、 虚空を見つめる。

「▒▒▒▒▒▒▒▒▒」

考える前に、 零れ落ちていた。

続きを書かなきゃ。

でも、もう書く気力は失せていた。

明け方に近い、深夜。

太陽の光が、 少しずつ見え始めている。

開け放った窓から、 風が入り込む。

ゆるやかに動く それは、 私の頬を撫でる。

髪が目にかかる。

手で避ける。

次第に鬱陶しくなって、 私は目を開けた。

白い世界が目に飛び込んでくる。

彼がいなくなってから、

いらない物を全て捨てた、 真っ白な部屋。

硬い床の上で、 寝返りを打つ。

何度、眠ったことだろう。

そして、何度起きたのか。

もう、わからなくなった。

今がいつなのか、さえも。

身体を起こした。

部屋の隅にある、 小さな机に向かう。

書きかけの手紙。

ペンを持った。

拝啓 ██ █様へ。

手紙なんてらしくないって 思ってるでしょ。

ただの自己満足だから。

あのね?

私、本当は気づいてる。

君がいったこと。

風のように、 ふっと消えてしまったこと。

だけど、今でもまだ 信じられなくて。

涙すら出てこなくて。

そんな自分が嫌になって。

だから考えたくなくて。

忘れてたんだ、けど。

時々、はっと我に返って。

突然思い出すの。

『いってきます』って あの言葉を最後に

君がいってしまったって。

ねえ、違うじゃん。

『行ってきます』なんでしょ。

なんで『ただいま』が まだ聞こえてこないのかな。

ずっと待ってるんだよ。

あぁ、それとも。

『いってきます』って、 もしかして。

『逝ってきます』だったの?

何回電話しても、 君は出てくれなくて。

██、って私のことを 呼んでくれる人がいなくて。

…わかってるよ。

もう、とっくに理解してるんだよ。

でも、まだ諦めきれなくて。

君にあいたいよ。

でも、君の元にいく 勇気はなくってさ。

弱虫のくせに、 ずるずる引きずって。

でも、君が悪いよね?

…ねえ。

いくんならさ。

せめて、

ペンを持っていた手が止まる。

ペン先を顎の下に当てて、 虚空を見つめる。

せめて、

 

…言ってほしかったな

考える前に、 零れ落ちていた。

続きを書かなきゃ。

でも、もう書く気力は失せていた。

外に出る。

丁寧に包んだ手紙を折って

小さな飛行機を作った。

届くわけないのに、

 

…馬鹿みたい

がむしゃらに飛ばす。

翼を広げた紙飛行機は、

ゆっくり宙を走ったあと

すうっと弧を描き、

どこかへ消えていった。

頬が濡れていた。

指で拭って舐めてみた。

塩辛かった。

雨なんて降ってないのに。

これが涙だって、 信じたくなかった。

部屋に戻って、窓を閉めた。

埃が舞って、 思わず噎(む)せた。

床に寝転んだ。

ひんやりとした 固い感触が、 半身を包む。

そこら辺に散らばった、 赤い花に手を伸ばす。

名前も知らない、 赤い造花。

ざらざらしていて、 柔らかかった。

横を向いて、瞳を閉じた。

真っ黒に襲われる。

また、幾度目か わからないけれど。

微睡みの中に誘われて

意識が

薄   れて いく。

少し冷えた朝のことだった。

いった

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