テラーノベルの小説コンテスト第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

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第1話 - あ

2023年12月11日

#スカッと

タナカトシキ

ナミコ

セリナさん、ちょっと

セリナ

はい？

ナミコ

あなた、また今日うちの家来た？

ナミコ

冷蔵庫の中、漁っていったでしょ？

ナミコ

勝手なことしないでくれる？

セリナ

今日、ケイスケさんが体調悪い、って聞いたので

セリナ

おかゆを作っていったんです

ナミコ

そんなの、必要ないわよ

セリナ

でも、連絡したら今は家に誰もいないから、お願い、って返信が来たんですよ

セリナ

お義母さん、家にいたんですか？

ナミコ

私はダンス教室に行ってたから、さっきまでいなかったわよ

ナミコ

でも、お昼前に帰ってこれたし、あなたに作ってもらわなくても大丈夫よ

セリナ

そうですか

セリナ

でも、ケイスケさんに頼まれたことなので、私が勝手にやったことではないです

セリナ

ケイスケさんも、今はそちらの家に住んでいますし...

セリナ

住んでいる人の許可を取ればいいですよね？

ナミコ

良いわけないでしょ

ナミコ

だって、キッチンは主に私が使うんだから

ナミコ

とにかく、勝手に食材とか使わないで

セリナ

え？食材のことですか？

セリナ

それなら、私使ってないですよ

セリナ

全部、自分で材料は買って、それでそちらに行ったので

ナミコ

調味料は？使ったの？

セリナ

まあ...塩としょうゆ、とかちょっとしたものです

ナミコ

だから、そういうのをやめてちょうだい、って言ってるのよ

セリナ

え？調味料ですよ？

セリナ

そんなに大量に使ってないですし、それでもダメなんですか？

ナミコ

当たり前でしょ

ナミコ

うちの家のものを使ったら、使用料を払ってちょうだい

セリナ

え？使用料、ですか？

ナミコ

そうよ

ナミコ

えっと、あとで醤油の値段調べて、だいたいの金額教えるわね

セリナ

いや...

セリナ

そんな調味料を大さじ１くらい使っただけで、なんでお金払わないといけないんですか？

ナミコ

あなただって、自分のコスメ用品とか人に貸したくないでしょ？

ナミコ

それと同じよ

セリナ

衛生的な面であんまり貸し借りはしないですけど...

セリナ

でも、貸すとしても使用料なんて取らないですよ？

セリナ

別にそこまでしなくても、いいんじゃないですか？

ナミコ

この家のことをどうするかは、私が決めることよね？

ナミコ

あなたがどうこう言っていいことじゃないと思うんだけど

セリナ

まあ、それはそうだとは思いますが...

ナミコ

じゃあ、納得してもらえたなら今度から、使用料ね

ナミコ

あと、ガス代、電気代も請求させてもらうから

セリナ

え！？それもですか！？

ナミコ

当然のことでしょ

ナミコ

こっちだって、そんなにお金に余裕があるわけじゃないの

ナミコ

少しくらい、助けてくれたっていいわよね？

セリナ

すごい長い間コンロを使うとか、そういう時はいいですけど...

セリナ

単におかゆを作っただけですし、別に簡単なものは取る必要ないんじゃないですか？

ナミコ

あなたが好き勝手に決めて良いことじゃないでしょ？

ナミコ

偉そうなこと、言わないでくれる？

セリナ

はい、すみません

ナミコ

じゃあ、そういうことでね

～1週間後～

ナミコ

セリナさん！

ナミコ

今、家に帰ってきたらコンロがすごい汚いことになってるんだけど！

セリナ

え？

ナミコ

あなた、今日また作り置きとか置いて行ったんでしょ？

セリナ

作り置きは持って行きましたが、コンロは使っていないですよ？

ナミコ

本当に！？

セリナ

はい、本当です

ナミコ

そしたら、ケイスケにも聞いてみるから

ナミコ

今度、家のコンロ汚くしたら、

ナミコ

隅々まで掃除しれちょうだいね

セリナ

私、毎回汚したらしっかり掃除していますよ？

ナミコ

そういう報告はいらないから

ナミコ

だまっておいて

セリナ

はい...分かりました

ナミコ

あのね、今うちの家に普通に出入りしてるみたいだけど、

ナミコ

私はそんなの許してないんだからね

セリナ

は？

セリナ

あの、そんなこと今頃言われても、困るんですけど

ナミコ

私は、だいぶ前から思っていたわよ

ナミコ

本当に、迷惑なんだから

セリナ

ナミコさんの家のものを使ったら、私はちゃんと掃除してきれいにしていますし、

セリナ

しっかり掃除していますよね？

セリナ

なんで、そんなに私に対して厳しいんですか？

ナミコ

そんなの、簡単なことよ

ナミコ

単に、あなたのことが気に入らないからだけど？

セリナ

へ？

セリナ

気に入らない？

ナミコ

そうよ

ナミコ

結婚する、って聞いた時から、絶対にケイスケには合わない、って思ってた

ナミコ

ケイスケには、もっと美人で肌が白くて、

ナミコ

おしとやかそうな人が似合うと思ったのに...

セリナ

そんな見た目で判断するようなこと、しないでくださいよ！

セリナ

たったそれだけの理由で、ケイスケさんとの結婚、あまりよく思わなかったんですか？

ナミコ

思ってただけなんだから、別にいいでしょ？

ナミコ

口に出して言ったわけじゃないじゃない

ナミコ

ケイスケの気持ちもあるし、尊重するために仕方なく２人の付き合いを認めたんじゃない

セリナ

仕方なく、って...

セリナ

そんな良く思われてない付き合いをしてたなんて...

セリナ

残念です

ナミコ

あっそ

ナミコ

まあ、私は今でもケイスケとあなたが別れる、ってなっても許可するけどね

ナミコ

今でも認めてないんだから

セリナ

そんなこと、今言われても...

セリナ

困るんですが

ナミコ

察しなさいよ、それくらい

セリナ

え？別れて、ってことですか？

ナミコ

別にそこまで言ってないでしょ

ナミコ

ちょっと、ケイスケに対して甘すぎる、って言ってるの

ナミコ

別に、そこまでお世話しなくても私がいるんだから

ナミコ

もう少し距離置いても良いと思うんだけど

セリナ

なんで、そんなこと言われないといけないんですか？

セリナ

私たち、夫婦なのに

ナミコ

でも、ケイスケは出張があるからこっちの家にいったん住むことを選んだじゃない

ナミコ

別に、あなたたちの家からでも行けたのに

セリナ

たった30分ですけど、ケイスケが実家からの方が近いから、

セリナ

少しの間、実家に移る、って行ったんですよ

セリナ

私たちの家からだと、高速を使って車で通うことになるので

セリナ

それよりも、下道で通える実家からの方が、お金の負担にもならないので

ナミコ

それは、表面的な理由じゃない？

ナミコ

あなたとの生活に疲れたのよ

セリナ

そんなこと、なんで分かるんですか？

セリナ

ケイスケは、そんなこと一言も言ってないです

ナミコ

だとしても、私には分かるの

ナミコ

ほんと、空気読めないんだから

ナミコ

ケントも、きっと実家で暮らしている方が快適よ

セリナ

ナミコさんがどう思うかは、勝手にしてください

セリナ

でも、私とケイスケさんの関係を悪く言うのは止めてほしいんです

ナミコ

別に、そんなつもりないわよ

ナミコ

ただ、少し距離置くことを勧めてるだけ

セリナ

何でですか？

セリナ

そんなこと、する必要あります？

ナミコ

私はね、本当に心から信頼してる人しか家に入れたくないの

セリナ

は？何で...

ナミコ

これで、私の本心は言わせてもらったわ

ナミコ

そういうことだから、これから家に来るのはなるべく控えてね

ナミコ

いい？

セリナ

そんな、すぐにはい、なんて言えるわけないじゃないですか...

ナミコ

まあ、あなたがなんと言おうと、関係ないから

～4日後の土曜日～

ナミコ

ケイスケ、今家にいる？

ナミコ

母さん、今から家に帰るんだけど、一緒にお昼ご飯でも食べに行かない？

ケイスケ

悪いけど、今は外出中だから、ごめん

ナミコ

じゃあ、母さんケイスケが帰ってくるまで待ってるわ

ケイスケ

俺、食べてくるからいいよ

ケイスケ

っていうか、母さんが外出中に家出て行く準備したから

ケイスケ

もう、実家には住まない

ナミコ

あらそう...

ナミコ

えっ！？

ナミコ

出て行く、って、何言ってるの！？

ケイスケ

だから、

ケイスケ

俺、もう実家から出て行くことにした

ナミコ

母さんのどこか気にいらなかったの？

ナミコ

母さん直せるように、努力するから戻ってきてよ

ケイスケ

もう、戻ることはないから気にしないで

ナミコ

あまりにも、急すぎるわよ...

ナミコ

なんで事前に報告してくれなかったの？

ナミコ

っていうか、実家から出てどこに行くつもり？

ケイスケ

どこって...

ケイスケ

俺の本当の家は、セリナと一緒に住むことだ、って気づいたから

ナミコ

へ！？

ナミコ

あんな人と一緒にまた住むの！？

ケイスケ

なんでそんなこと言うんだよ

ケイスケ

俺、実家に住み始める前から、母さんがセリナに嫌がらせしてるなんて、

ケイスケ

気づいてなかった

ケイスケ

ほんと、最低な夫で申し訳ないよ

ナミコ

嫌がらせなんて...そんなことしたことないわよ

ケイスケ

セリナは我慢強いから、あんまり文句とか言わないんだ

ケイスケ

だから、気づけなかった俺が悪いと思ってる

ケイスケ

母さんが、セリナが作り置きしてくれた料理を捨ててたこと

ナミコ

えっ...なんでそのこと知ってるの？

ケイスケ

セリナから、冷蔵庫に置いて言ってくれた料理の感想聞かれて、気づいたんだよ

ケイスケ

おかしいな、ってね

ケイスケ

そんなの、俺見つけられなかったから

ケイスケ

ほんと、自分が情けない

ナミコ

だって...

ナミコ

セリナさんが作る料理、ってケイスケが好きな味の好みと全然違うじゃない

ナミコ

それよりも、母さんの料理の方が好きでしょ？

ケイスケ

そんなことないよ

ケイスケ

母さん、俺の好き嫌いばかり気にして、

ケイスケ

俺が体調悪い時は全然側にいてくれなかったじゃん

ケイスケ

作ってくれるものも、俺の好きなものは揃えてくれたけど自己満足

ケイスケ

そうだよね？

ナミコ

ごめんね...

ナミコ

母さん、そんな嫌な気持ちにさせていたなんて気づかなかった

ナミコ

今度から十分、気を付けるから

ケイスケ

別に、もう大丈夫

ケイスケ

気にしないでいいよ

ケイスケ

あと、母さん、

ケイスケ

セリナが料理しに家に来た時、ガス代とか請求してた、って本当なの？

ナミコ

えっ...それ、

ケイスケ

気になったから、俺からセリナに聞いたの

ケイスケ

実は俺たち、お互いに何にお金使ったか、

ケイスケ

毎月大まかにだけど、話し合ってるんだ

ケイスケ

これからの貯金のために

ナミコ

あら、そうなのね...

ケイスケ

それで、先月の使い道をセリナから聞いたら、

ケイスケ

母さんに払った光熱費とかガス代が5千円とか？

ナミコ

金額まで...

ケイスケ

セリナ、先月は3回くらいしか家に行ってないし、

ケイスケ

そこまで火も使ってないよね？

ケイスケ

そんなに金額するの？

ナミコ

あれ、母さん、計算間違えちゃったかしら...

ナミコ

ごめんなさいね

ケイスケ

計算間違えちゃったどころの金額じゃないんじゃない？

ケイスケ

実際の金額より多くとってるよね？

ケイスケ

なんでそんなことするの？

ナミコ

母さん、そんなことしてるつもりなかったわよ

ナミコ

間違えちゃったなら、ごめんなさい

ナミコ

今度から気を付けるわ

ケイスケ

もう、俺が実家に戻ることもないから、セリナがそっちに行くこともないでしょ

ケイスケ

気を付ける必要もないよ

ナミコ

そんなこと言わないで...

ケイスケ

俺、正直、母さんの過保護にはうんざりしてた

ケイスケ

だから、しばらく距離置きたいんだ

ナミコ

でも、母さんケイスケがいなくなったら寂しくなるわ

ケイスケ

別に少しの間、帰らないだけだし、

ケイスケ

それくらいよくない？

ケイスケ

それに、今はずっと寂しい思いしてきたセリナと一緒にいたいから

ケイスケ

いいでしょ？

ケイスケ

まさか、俺の意見まで否定するほど、頭固くないよね？

ナミコ

ケイスケの言いたいことは、分かったから...

ケイスケ

じゃあ、まずはセリナに今までのこと、謝ってよ

ケイスケ

そうしないと、俺最終的には母さんと縁切るから

ナミコ

えっ！？そこまで！？

ケイスケ

俺、本気だよ？

ケイスケ

じゃあ、あとは母さん次第だからね

～後日談～

セリナ

その後、ナミコさんの方から私たちの家に直接来てくれて、

セリナ

今までの私への嫌がらせをしたことを謝ってくれました

セリナ

また、私が払った光熱費のお金も返してくれて、すごく反省しているようでした

セリナ

これから少しずつ、関係は良くなっていくと思っています

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