ヴァンパイア
僕がヴァンパイアになった日、それは今日と同じ雪のよく降る日だった
ヴァンパイア
施設に帰っても味方のいない僕は、帰宅途中にある公園のブランコに腰かけていた
ヴァンパイア
それが僕の日課だった
ヴァンパイア
雪の降る中、わざわざブランコで遊ぼうなんて思う人間はそうそういないから1人になれた
ヴァンパイア
その時間だけ、僕は自由を感じることが出来たんだ
ヴァンパイア
その時そいつは現れた
ヴァンパイア
中学の制服を着た奴が雪を被りながらブランコに1人腰掛けてる事に興味を示したのか僕に近づいてきた
ヴァンパイア
そいつの見た目は30後半ぐらいで、ひどく痩せたみすぼらしい姿だった
ヴァンパイア
ただ、その姿とは対照的に精力的な目をしていた
ヴァンパイア
いや、獲物を見つけた獣の様にギラついた目だった
ヴァンパイア
そいつは僕に聞いた
ヴァンパイア
友達はいないのかと
ヴァンパイア
僕はいないと言った
ヴァンパイア
そしたらそいつは嬉しそうに笑いながら僕の横のブランコに腰掛けた
ヴァンパイア
しばらく無言だった
ヴァンパイア
僕は奇妙な事に気づいた
ヴァンパイア
そいつの足跡がないのだ
ヴァンパイア
僕は少し怖くなった
ヴァンパイア
隣にいるコイツは何なんだろうと
ヴァンパイア
そいつはじっとこちらを見ている
ヴァンパイア
視線を感じる
ヴァンパイア
でも、怖くて確認出来ない
ヴァンパイア
そしたらそいつが言った
ヴァンパイア
お前は生きたいか?と
ヴァンパイア
僕は返答に困った
ヴァンパイア
生きたいかといえば生きたいし、死にたいかといえば死にたかったから
ヴァンパイア
そいつは続けた
ヴァンパイア
俺はもう死ぬと
ヴァンパイア
僕は意味が分からないので、何故死ぬのかと聞いた
ヴァンパイア
そいつはもう生きる事に飽きたからと言った
ヴァンパイア
そして続けて言った
ヴァンパイア
俺は日本最後のヴァンパイアだと






