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主
nmmn注意⚠️ キャラ崩壊注意⚠️ 誤字脱字注意⚠️ 警察官パロ⚠️ 黄様若干翠様に嫌われ⚠️ 敬称に違いあり⚠️ 暴力・暴言表現有り⚠️ パクリ禁止⚠️
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10,赦されなくても、生きていいのか
その夜、第六刑務州は異様に静かだった。
いつもなら聞こえる看守の足音も、鉄格子を叩く音もない。
代わりに、遠くの換気口から水の滴る音が、一定の間隔で響いていた。
独房の向かい、美琴は息を詰めていた。
――鉄の扉が開く音。
ゆっくりと、重い足取りが近づく。
二人の看守が現れ、腕に点滴針を刺されたままの少年を支えていた。
髪は乱れ、顔色は灰のように白い。
その姿を見て、美琴はすぐに分かった。
返事はなかった。
ただ、少しだけ視線が動いた。
かつての皮肉げな笑みは、今はどこにもない。
瞳の奥に、痛みと虚無が混ざっていた。
看守が鉄格子を開け、心雨を中へ押し込む。
通常なら乱暴に投げ入れるはずなのに、その手つきは妙に慎重だった。
亥留馬が無言で視線を逸らす。
隣の看守が囁くと、亥留馬は短く言い捨てた。
扉が閉じられる。
金属の響きが遠ざかると、再び静寂が戻った。
心雨は壁にもたれ、息を荒げていた。
汗が頬を伝い、冷たい床に落ちる。
美琴は迷った末、声を掛けた。
心雨はしばらく沈黙したあと、かすれた声で答えた。
苦笑とも嗚咽ともつかない声。
美琴は鉄格子に手を添えた。
心雨は小さく息を吐いた。
肩が震えている。
どこかで泣いているようにも見えた。
美琴は一歩近づき、静かに問う。
その問いに、心雨はしばらく黙っていた。
長い沈黙ののち、ゆっくりと顔を上げる。
瞳の奥には、光のない深海のような影が揺れていた。
その瞬間、空気が変わった。
独房の灯りが微かに揺れ、囁くような声が心雨の中に沈んでいく。
――俺の話を、聞いてよ。
こさめ、ずっと虐められてたんだ。
声が高いとか、顔が女みたいだとか、そんなくだらない理由で。
キモイ。
最初は笑って済ませてたけど、次第に、笑えなくなった。
頬に痛みが走る。
口内が、鉄の味でいっぱいになる。
口の端が切れて、痛い。
毎日のように体育館裏に呼ばれて、こうして殴られる。
そいつらの気が済むまで。
殴られた傷を隠すために、いつもマスクをしてた。
母さんは、庇ってくれなかった。
なにも、してくれなかった。
中学の頃、こさめを虐めてたのは、五人。
高校も一緒だった。
勉強できない俺が行けるような学校なんて限られてる。
だから、逃げられなかった。
パシリ。
財布係。
時々は、殴られ役。
気に入らないことがあると、机ごと倒された。
ガシャーーーン!!!!
“死ねよ”
——死ぬくらいなら、最初から生まれなきゃよかったのに、って思ってた。
でも、あの日、何かが切れたんだ。
バコン、と鈍い音がこめかみから感じた。
頭が震えて、意識が飛びそうになった。
ダラダラと血が溢れ出る。
元々白銀色の、昔母さんが綺麗な髪だと褒めてくれたそれは、汚い赤茶色に染まっていった。
その時。
ぶつん、と音がした。
鉄パイプを下ろしたその手を掴み、奪う。
自分の血が飛び散った鉄パイプを握って、そいつらの頭を殴り続けた。
痛い、痛いと、泣いて喚く。
この程度で泣きやがって。
俺は……俺は、ずっと……5年間、殴られ続けた。
ずっと我慢してた。
お前らに泣いて縋ったか?
こんなクズ、死んで当然だ。
殴って、殴って、殴って。
倒れても、息をしてても、止まっても。
ずっと、止まれなかった。
笑いながら、泣いてた。
“あぁ、やっと静かになった”って思ってた。
でも、気付いたら、五人、死んでた。
……先生が来た。
って叫んで。
でも、その人、今までずっと見て見ぬふりしてた人だったんだよ。
悪魔、か。
それで、もう、分かったんだ。
俺は、最初から、誰にも赦されないんだって。
逮捕される時、言われたんだ。
その時、心のどこかで安心した。
“あぁ、やっと終わるんだ”って。
でもね。
ここに連れてこられて、みこちゃんに出会って、話して。
そうしていくうちに
……分からなくなった。
誰からも赦されなくても、生きていいのかなって。
そんなこと、考える日が来るなんて思わなかった。
語り終えた心雨は、壁に背を預けて目を閉じた。
頬には乾きかけた涙の跡。
静寂の中で、美琴の息だけが小さく響いていた。
その言葉に、心雨はわずかに眉をひそめた。
心雨は笑った。
けれど、その笑いはどこか悲しかった。
鉄格子越しに、互いの影が伸びる。
その間を、光が細く割り込んでいた。
夜の明ける前の、最も静かな時間帯。
心雨はぽつりと呟いた。
美琴は拳を握った。
その瞬間、心雨の瞳がわずかに揺れた。
光が一点、灯ったように。
心の奥の、誰にも届かない暗闇の底に。
小さく笑って、目を閉じる。
やがて、心雨の寝息が聞こえた。
外の灯りが消える。
代わりに、東の空から白い朝光が差し込む。
確かに何かが変わり始めていた。
それは、絶望という名の檻の中で生まれた、ほんの小さな、希望の種のようなものだった。
10・了
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𝙉𝙚𝙭𝙩 ︎ ⇝♡110
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コメント
6件
先生がいちばん悪くない!? こんなん冤罪やん…