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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

同僚

佐々木さん、先上がりますね。

う、うん。

時刻は午前1時をまわった。

時間外労働にも程がある。

いっそのこと退社しようとも思ったがこの年だ。

ここからまた新しい勤務先を見つけるので精一杯になるだろう。

後輩や他の同僚は定時で帰ってしまう人が多い。

仕事放棄して帰ろっかな。

そう思い立ち上がると脚に力が入らなくなった

え__

これが私の最後の夜だった。

何年も社畜として働き、上司に使えた。

本当につまらない人生だった。

___痛っ。

気がつくとそこは綺麗...ではない寝室。

私の物ではない。

もしかして転生した?

そう思い、横にあった鏡をみた。

鏡に映ったのは綺麗な女性。

やっぱりだ。

コンコン

扉がノックされた。

は、はい!

リリアス

お、おね、おねぇ様。お食事です。

ありがとう。

リリアス

...い、今何と?

え、ありがとうって。

たしか、リリアスちゃんだっけ。

...おねぇ様って言った?

クリーム色の髪。彼女は私の大好きな漫画の子で間違いないだろう。

おねぇ様と言ったのなら、私はエンゼリーテ。リリアスの姉でありライバル。

リリアス

おねぇ様が私に...ありがとうと?

ええ、こんな私に食事を持ってきてくれてありがとう。

この物語に登場するリリアスは主人公である。姉のエンゼリーテにいじめられる子だ。

姉は自分の髪色が気にいらず、綺麗な髪色の妹をいじめた。

そんな姉に転生してしまったようだ。

それと、今までごめんなさいね。

さ、私といるのが嫌でしょ?戻って良いわよ。

リリアス

は、はい...

リリアスは私の部屋...エンゼリーテの部屋を出ていった。

私は埃が被った机に向かう。

この世界は髪色が全て。

白に近ければ身分が上になる。

漆黒の髪色をしたエンゼリーテはかなり身分が下なのだろう。

食事だってまともに取れていないのでしょうね。

物語でエンゼリーテは序盤にしか出てこない。

そのあとはこの一族から私は消される筈だ。

黒は好きなんだけどなぁ。

さて、どうしたものか。

まずは掃除かな。

こんな埃だらけの場所にいたら体に悪いだろう。

とは言っても掃除するものがない。

窓は...開かない。

終わった。

ダン!

物凄い音とともにエンゼリーテの母が入って来た。

エンゼリーテ!

リリアスと話したの!?

え、えぇ。

リリアスが汚れたらどうするのよ!

それは...

話しかけないで頂戴!

いや、部屋に入ってきたのはリリアス本人なんだけどな。

後々分かることなのだが、私はこの母から産まれた子ではない。

父の愛人から産まれた子なのだ。

最終回が終わった後、公式サイトで発表された。

エンゼリーテは地味に人気があったから。

リリアス

お、お母様。

あら、リリアス。どうしたの?

リリアス

あ、あの...物凄い音がしたので。

リリアス、貴女はもうこの部屋に近づいてはなりませんよ。

汚れてしまう。

...。

そう言い放ち、母...リリアスの母は部屋を出ていった。

エンゼリーテの本当の母はどんな人なのか。それは最終回が終わっても知ることはなかった。

リリアスは最終回で隣国のジュティス陛下と結婚し、幸せになる。

そんなリリアスを応援しよう、そう誓った。

リリアス

お、おねぇ様

リリアス。

どうしたの?

近づいてはいけないと言われたばかりでしょ?

リリアスの顔が赤くなっていた。

熱でも出したのではないかと心配になった

大丈夫!?顔が赤いわよ!?

リリアス

えっ!?わっ...

この瞬間、私はなぜリリアスの顔が赤くなったのかが分かった。

照れているのだ。

ほら、お母様に見つかる前に戻りなさい。

リリアス

け、けど、こ、これ...

小さなリリアスの手の中にあったのは白い花のしおりだった。

リリアス

おねぇ様、本、好き。

リリアス

私のしおり、あげる。

えぇぇぇ!やだやだ、可愛い...

え、いいの?

リリアス

うん。

リリアス

だから、これから...

またリリアスの顔が赤くなる。

リリアス

優しくしてくれる?

そんな、優しくするに決まってるじゃない。

もちろん。

リリアスはエンゼリーテに愛されたかったのだろう。

可愛い子だ。さすが主人公。

大切にするわね。

リリアス

うん。明日も来る。

見つかったら怖いからもうこなくて良いけどね。

こんな妹、最高だ。

月が物凄く綺麗に見えた。

おやすみ、リリアス。

転生したら悪役王女でした。

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