片思いする君に恋する私

目線を下に落とす

下駄はすっかり泥で汚れていて

足の間から皮が剥がれている

足からじわじわと痛みが伝わる

再び、前を向いて走り出す

全部、台無しだ

ｶﾀｶﾀｶﾀ

どこからか、下駄の音が聞こえる

えとさんの姿が徐々に見えてくる

髪の毛が少し乱れ、浴衣も着崩れしている

そして

怒ってるように歪んだ顔

そう言ってえとさんは

俺の肩に、もたれかかってきた

頭をうりうりと肩に擦りつけてくる

ゆあんくんが無事で

思わず目を逸らす

鼓動が早くなってる

2人で見ようよ

突然、えとさんが浴衣の裾を掴んできた

誘ってるんですけど…

えとさんが顔を真っ赤にしてこっちを見ている

耐えきれなくって、また目を逸らしてしまった

空にドン、ドンと次々に花火が上がる

花火の光に合わせて

えとさんの顔が明るく照らされる

えとさんが俺の方を見る

直後、えとさんと目が合う

と、思ったらすぐに目を逸らされた

正直、顔が赤く火照っているところとか

すぐに目逸らしてくるところとか

俺のことめっちゃ

意識してるんだなって

分かりやすいし

…それに

…すっげぇ綺麗

さっきの言葉

花火じゃなくて

えとさんに言ったんだよ

あまりにも綺麗だったから

…絶対

絶対言えないよな…