テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
困惑している俺をよそに、レイは楽しげな様子で語りはじめた。
レイ
ユウ
レイ
俺はその馬鹿げた理由を聞いて思わず呆気にとられてしまう。そんな俺を見ると、彼はわざとらしく肩をすくめて落ち込んだ様子を見せた。
レイ
ユウ
レイ
レイは不貞腐れたようにそう言うが、いかんせん俺はレイという人間の存在すら知らなかったし、初対面のやつにどう思われてようが知ったこっちゃない。
しかし個性をバカにされたまま黙っているようでは男がすたる。俺はそれに対抗するように言葉を連ねた。
ユウ
レイ
ユウ
俺が責め立てるようにそう言うと、レイは「よくぞ聞いてくれました」とでも言わんばかりの企む笑みを浮かべてから小さく咳払いをする。
そして改まった表情で俺を見据えると、先程よりも抑揚が少ない、しかしよく通る落ち着いた声でこう言った。
レイ
ユウ
俺はそのふざけ散らかした回答に困惑の声をもらす。
そんな俺に対して、レイは俺をからかうように大きな笑い声をあげた。
レイ
ユウ
レイのあまりの自由さに、俺はただため息をつくことしかできない。
テスト勉強をさぼって、あろうことか立ち入り禁止の屋上に入って、その理由が七不思議の調査のため?
いやいや、冗談にもほどがある。しかし冗談を言っているようには見えない。なんなんだこいつは。
レイ
レイは何か思いついたのかそう呟くと、いきなり俺の方へ近づいてきて俺の手を引っ張った。
ユウ
レイ
ユウ
俺はそう言って無理やりレイの手を振り払うが、相手も負けじと今度は肩を組んできた。
レイ
ユウ
レイ
ユウ
俺は反射的に反論しようとするが、先のレイの言葉がどうにも的確に俺の心へと刺さってしまい、そのもどかしさに口を閉ざしてしまう。
確かにレイの言う通り、気になるのだ。七不思議のことも、そして、レイという存在のことも。
しかし本来、俺はそんな非科学的で非論理的な現象に興味を持つような質ではないし、そのうえ特定の一人の人間に特別心が惹かれてしまうなんてことも一切無かった。
そして将来にも、そのような好奇心を抱くことなど無いと思っていた。
されど今、俺はなぜかその心を感じている。
この目の前の男と、その男の言う《七不思議》という言葉に。
感じ慣れしいない感情に混乱してしまった俺は、
ユウ
やけになってレイの誘いを承諾していた。
するとレイはとても嬉しそうな──そして、どこか安心したような表情を浮かべて俺に顔を近づける。
レイ
ユウ
俺がてきとうにそう返事をしたとき、レイはまた俺の腕を掴んで強く引っ張った。
レイ
ユウ
反抗する俺を見て楽しんでいるのか、レイは満面の笑顔で叫ぶ。
レイ
時間が経ちすでに暗闇に染まった屋上中に、その声は散って吸い込まれ、跡形もなく消えてゆく。
しかしその一部は俺の耳から心に残って、しばらくの間反響しつづけた。
レイに連れられ屋上と階段を繋ぐ扉を通る。
出てすぐにある踊り場には砂とホコリの分厚いカーペットがかかっていて、俺が来るときに踏んだところにはくっきりと足跡が残されていた。
そこへもう一度新しく足跡をつけたタイミングで、俺はレイに問いかける。
ユウ
レイ
ユウ
俺が素朴な疑問をなげかけると、レイは少しの間固まった後にとても驚いたような顔で俺に詰め寄ってきた。
レイ
ユウ
俺の細かい指摘にレイは苦笑いを浮かべ、頭をかきながら言い訳を連ねる。
レイ
ユウ
レイ
レイは俺の怒りの言葉を遮るように話を続ける。
レイ
ユウ
俺は思わずレイのことを叱ろうとするが、寸前のところで咳払いをしてせき止める。
俺はこいつの父でも母でもない。つまり俺にはこいつを叱って教育をする義務など一切ないのだ。
それにこいつへの文句は屋上で十分に言ってやった。なら今の最優先事項はこいつを叱ることではなく、こいつの言う「調査」をいち早く終わらせて帰ること。
そう考えた俺は怒りをおさめ、レイに向き直り話題を本題に切り替える。
ユウ
レイ
レイはそう言って満足気に笑うと、左手を動かし自身の足元を指さした。
レイ
ユウ
俺はレイが指さしたところを見やる。
俺より少し先を歩んでいたレイは、俺のいる踊り場から少し階段をくだった辺りに立っている。
その足元──つまりそこには、階段があった。
それ以外には何もない。ただ少しホコリがつのっているだけだ。
ユウ
俺がそう呟くとレイは両手で俺を指さして、
レイ
と調子のいい声を上げた。
ユウ
レイ
俺の質問に対し、レイはバカにするような嘲笑を含みながら答える。
レイ
そう言って俺の肩をぽんと叩くと、俺に背を向けすっと息を吸い込み──
レイ
階段中に響き渡る大きな声で叫んだ。
ユウ
俺はレイを制止しようと慌てて階段を下りる。
しかし一段下がったところで、俺は歩みを止めてしまった。
俺とレイの間の階段。その地面がカゲロウのように歪みうごめいていたのだ。
するとその歪みの中心辺りに、こぶし大ほどの黒い塊が現れる。
その塊は渦を巻きながらどんどん大きくなっていき、直径60cmほどの円にまで成長した。
俺がただ呆然とその光景を見ていた、その瞬間。
ズボッ
という音と共に、円の中心から二本の手が突き出てきた。
その両手はガッチリと円のフチを掴むと、円の下から力むような声が聞こえてきて、
??
という声と共に、円からサッカーボールほどの赤黒い塊が俺の方目がけて飛び出した。
ユウ
俺は驚いて目を瞑り、そのままよろけて後ろに尻もちをついてしまう。
するとそんな俺の上に、泣き面に蜂とも言わんばかりになにか重たいものが勢いよくのしかかった。
ユウ
??
俺が痛む声を上げると、その重いなにかはアタフタとした様子で離れていく。
ユウ
俺はゆっくりと目を開ける。
すると目の前には、笑いを堪えようとしているレイと、その後ろに隠れるようにして立つ見知らぬ男がいた。
ユウ
レイ
俺が問いを言い出す前に、我慢しきれなかったレイが吹き出すように笑い声を上げる。
すると見知らぬ男がレイの腕を掴んで、ヤケクソになりながらブンブンと乱暴にそれを揺らす。
??
レイ
そのレイの言葉にハッとすると、見知らぬ男はレイからパッと手を離し恥ずかしがるようにバッとそっぽを向く。
よく見てみるとその男は、俺たちと同じ年くらいの見た目年齢で髪は紅蓮の色に染められている。
もしかするとさっき円から出てきた手や赤黒い塊は、こいつの手と頭だったのかもしれない。
そう思ってふと円の方を見てみると、そこはもういつも通りの階段があって、カゲロウのような揺らめきも黒い渦の円も見当たらなくなっていた。
俺がレイと男の方に目を向け直すと、レイは無理やり込み上げる笑いをおさめて話し始める。
レイ
そう言ってレイは男の方を指さす。
レイにイチと呼ばれたその男は、いきなり紹介をされて緊張したのか慌ててピッと姿勢を正した。
イチ
一番はそう言ってビシッと90度に礼をする。
こんなに様々な効果音が似合う男には初めて出会う。そう思うくらい彼の言動はハキハキとしていた。
そんなことを考えていると、一番は両腕をガシッと組んでからレイに向かって文句を言う。
イチ
ユウ
俺が困惑すると、レイはまた面白がるように笑ってから俺に説明する。
レイ
そして今度は一番の方を見やり、俺の紹介をはじめる。
レイ
イチ
その紹介で一番が俺のことをジロジロと見つめていたとき、レイは一番に問いかける。
レイ
イチ
一番と同じく俺までキョトンとしていると、レイはニヤリと笑って一番にだけ耳打ちをする。
その耳打ちを聞いた瞬間、一番はパァっと顔を明るくしてものすごいスピードで俺へと近づいてくる。
ユウ
俺が抵抗する間もなく、一番は俺の両手取り自身の両手でキュッと包みこむ。
そしてキラキラとした目線を俺に向けながら、
イチ
と呟いた。
ユウ
イチ
ユウ
俺は一番の手を振り払おうとするが、ガッチリと掴まれているためか全然ほどけない。
ユウ
レイ
ユウ
レイ
レイは相変わらずおちゃらけた態度で、俺と一番のやり取りを傍観している。
すると急に一番がハッとなにかに気がついてレイの方を振り返る。
イチ
レイ
レイはそう言うと、袖から右手を外に出しその場で指パッチンをする。
すると突然、レイの目の前に一冊の分厚い本とペンが現れて、レイはそれを軽々と手に取った。
レイ
ユウ
レイ
レイはそう言って本の表紙を俺に見せる。
そこには「七不思議調査記録49」と書かれていて、その本は全体的に薄汚れ傷つき古びている様子だった。
レイ
ユウ
レイ
レイはそう言いながら記録ページを最初からめくっていく。
そこには毎ページそこそこビッシリと文字が書き詰めてあって、レイがこれを全て書いたのかと思うと本当に衝撃だ。
ようやく白紙のページが来て、レイはそこでめくる手を止め指でペンを回しながらオレを見る。
レイ
イチ
レイがそう言うと、一番も慣れた様子で今日の出来事を語り始める。
イチ
それを聞いた俺は、そういえばと思って今日の出来事を思い出す。
ユウ
イチ
イチは感心したような眼差しで俺をキラキラと見つめる。
ここで蒼天中学の豆知識を教えるが、この学校は校則で、一年生は赤、二年生は緑、三年生は青のラインが入った上履きを履くことになっている。
だから俺とレイは緑色のを履いているし、一番も同じ緑を……
ユウ
俺が驚きのあまり呟くと、一番はキョトンとしてレイの方をみる。
イチ
レイ
イチ
一番は納得してポンと両手を叩く。
イチ
ユウ
俺が少し引き気味にそう答えたとき、レイは先程の内容を書き終えたのか調査記録の本を閉じ脇に抱える。
レイ
イチ
ユウ
俺が帰る報告をしようとすると、一番がこちらを振り返りキュルキュルとした目で俺を見つめてくる。
イチ
ユウ
俺は無理やりにでも帰ろうとするが、いきなりレイが俺の手を掴み強く引っ張る。
レイ
ユウ
俺はもう周りの目など気にせず大声で叫ぶ。
しかしそんな抵抗も虚しく、俺はレイと一番に無理やり連れていかれるのであった……
名前:世路 優(せろ ゆう)
一人称:俺
物静かで勉強熱心、だけども上から目線で生意気な中学二年生。
嘘をつくことが苦手でなんでも正直に口にしてしまう。その上口が巧みなせいで、無意識に相手を傷つけてしまうこともしばしば。
そのことを自覚しはじめてから、人付き合いを苦手を感じるようになった。